固定資産税は、なぜ下がらない? (特にマンションの建物評価など)固定資産税が高止まりと、過剰な公共投資、再開発などとの関係

マンションの固定資産税が「高い」という声をいただきます。毎月開催しているおしゃべり会でも、マンション、中でも建物の固定資産税が、高い、とおっしゃる方は少なくありません。

鉄骨などの造りが、木造家屋に比べ、建物の減価償却が進まないのだろうと思っていましたが、
下がらないと聞いて、改めて調べると、

それだけでなく、
公共事業などの投資が、固定資産税評価額を高止まりさせる原因になっているのが見えてきました。

 

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調べようと、まず、大田区の税金の担当課=課税課に聞きましたが、
大田区ではわからないといわれ、
総務省資産評価室と都税事務所にうかがいました。

通常、市町村の財源となる固定資産税ですが、東京23区では、固定資産税は東京都が徴税しています。

 

そのため、大田区では、わからなかったのです。

総務省に聞いたら、

まず、

最終的な残存価格は、同じ2割でしたが、

減価償却にあたる償却期間が、マンションと戸建て住宅で違っていました。

 

2割になるまでに
マンションは60年
戸建て住宅は20年でした

それだけゆっくりと評価額が減っていくので、
マンションの固定資産税は、なかなか、下がらないのです。

価値が減らないのは、良いことですが、
一方で、売却するのではなく、住み続ける者にとって、固定資産税負担が下がらないのは負担です。

 

しかも、
購入した金額から、1/60ずつ減っていくなら、
10年たてば、5/6になりますし、20年たてば、2/3になります。

 

 

しかも、
固定資産税の建物評価は、取得価格から減価償却されるのではなく、

再建築価格から計算するそうです。

 

固定資産税は、3年に一度、評価替えを行います。

その際に、評価に影響するものに

・再建築費=資材費、労務費など
・物価

などがあるそうです。

いま、国は、デフレ完全脱却政策で、とにかく物価を上げるために、公共事業等インフラ投資を増やしています。

インフラ投資が増えると
建築資材があがり、労務単価があがり、東京都工事設計単価表 があがって、固定資産税の建物評価に影響するのです。

固定資産税が安くならない一因に
増える公共投資が、あるわけです。

 

物価高騰の前から

大田区では、会議録を紐解きますと、平成26年ごろから、
インフレスライド条項、の適用が行われていますから、固定資産税の建物評価に影響してきた可能性があります。

 

特に、公共工事は、マンション同様の鉄筋コンクリート造りの非木造ですから
マンションの評価と関係していたと思われます。

 

大田区では、
2009年~2013年に、年平均61億円公共工事にかけていた費用が
2012年~2021年にかけて、約2倍の年平均120億円に増えました。

 

 

大田区の
インフレスライド適用平成26年(2014年)から始まりますが、
ちょうどそのころから、公共工事にかける費用がふえています。

公共工事と区民のみなさんが
マンションの固定資産税が高いと感じてきた感覚とが、符合しているのではないでしょうか。

 

たとえば、令和3年の固定資産税の評価替えで
大幅に固定資産税評価額があがっています。

 

そして、
今年令和6年の評価替えでさらに、上がっているのです。

 

これも、
大田区が、2022年から、公共工事に、年平均135億円かけると言っていたのが
2023年に、210億円に激増させていますから、

それによって、令和6年2024年に、固定資産税評価額が、大幅に上がった可能性が高いのです。

 

なぜなら、
公共工事が増えたのは、
大田区だけでなく、全国で起きていることで
それはなぜかと言えば、国のデフレ完全脱却政策に歩調をあわせているからです。

公共工事は、2009年までの年平均61億円が、いまや、年平均220億円。

10年まえの実績に比べ、3.55倍です。

 

しかも、平均だと3.55倍ですが、前倒しで2027年まで急増させているので、実際は、

2023年は247億円  10年前の61億円/年の 4.04倍
2024年は312億円  10年前の61億円/年の 5.11倍
2025年は311億円  10年前の61億円/年の 5.09倍
2026年は280億円  10年前の61億円/年の 4.59倍
2027年は273億円  10年前の61億円/年の 4.47倍

 

 

最終的に、評価額が、前年の評価を上回ることはないそうですが、増える公共投資が、マンションの固定資産税評価額を高止まりさせてきた可能性が高いのです。

 

例えば、都内や地方の中心部で行われている再開発は、民間の事業に見えますが、完全に公共ではないものの、仕組みの中で、建築コストを確保できる公的要素の非常に大きな事業です。

こうした再開発なども、固定資産税の評価を高止まりさせる要因となってきたわけです。