いま、大田区政に情報公開が必要な理由

最近になって政府は原発のリスク評価を6から7に引き上げました。
状況は大きく変わっていませんから、

公表のタイミングをはかっていたということでしょうか。
政府は、圧倒的に大量な情報をもっています。
そしてそれを、いつ、どのように、どの程度公開するか

客観的な指標はありません。
行政のさじ加減一つにゆだねられているのが

情報公開の現状と言ってよいのではないでしょうか。

 

情報公開は、民主主義政治の基本です。

 

部分的な情報は、私たちの判断を誤らせることもありますし、

場合によっては情報操作になりかねません。

また情報公開は、

不正の抑止力や曖昧さの廃除という効果も期待できます。

 

それでは、大田区における情報公開のありかたはどうでしょうか。

 

土地売買

残念ながら、大田区の情報公開の姿勢は、

まだまだ十分であるとは言えません。

私が議員として活動している中から見えてきた、

大田区における情報公開の課題について報告します。

 

大田区の土地売買の在り方については、

目的や価格などに問題があると考えていますが、

それは議会に上程されるときによくわかります。
大田区では、土地売買の議案に示されるのは、

その土地の「場所」と「価格」と「面積」そして「用途」だけです。

大田区では土地売買の際に税金を使って「不動産鑑定」を

行っていますが、鑑定結果報告書は非公開です。

 

東蒲田にある中古マンションを大田区があまりに高額に買った

ということで、近隣住民から訴訟を起こされました。

築30年程度の中古マンションで例えば1区画60㎡を4000万円というのは、

新築マンションが買えるほどの価格であり確かに高額です。

 

裁判の過程で、不動産鑑定報告書が公開されています。
提出された不動産鑑定書を

知り合いの不動産鑑定士に見ていただきましたが、

国土交通省の定める不動産鑑定評価基準に基づいていない、

高め高めの評価を行っていたことに大きな怒りを覚えています。

 

私たち区民は大田区政における情報を

いちいち裁判を起こさなければ入手することができないのでしょうか。

区民のみなさまから選挙で選ばれ、議案の正否を判断し、

区政執行のチェックをする責務を持つ区議会議員である私が

大田区に請求しても退出されない不動産鑑定報告書ですが、

訴訟によりようやく提供されるという

今の大田区の情報公開の姿勢はあまりにも異常です。

 

省エネ

 

計画停電以降、私たちは、出来得る限りの省エネに努めています。

それでは、大田区の省エネはどうなっているのでしょうか。

大田区は「エココオフィス」という区役所全体の二酸化炭素排出量を

少なくするための省エネ計画に取り組んでいます。

 

先日その最終年度にあたり、目標が達成されたと報告を受けました。

 

ところがその内容を細かくチェックしたところ、

大田区の公共施設を管理する「指定管理者制度」を採用している施設が

排出する二酸化炭素は、算入していないことが判明しました。
大田区では「図書館」「特別養護老人ホーム」「障害者施設」

「アプリコ、下丸子の区民プラザなどの多くの区民施設」に

指定管理者制度を採用しています。
これらの施設は計画期間中に「指定管理者制度」を採用し始めて

いますので施設で使われている電力総量が自動的に

“省エネされてしまった”ことになっているのです。

 

これは情報の切り取り方を変えた情報操作です。

許せないことですが、それでもまだ「省エネ」なら良いのかもしれません。

 

職員数と経営効率化
大田区では、毎年正規職員数を条例で定めています。

そして、その数が減ったことをもって、

区政の効率ががはかれていると広報しています。

 

しかし、私たち区民は大田区が民営化や民間委託を

行っていることを考えなければなりません。

 

大田区では、先ほどの指定管理者も含め、これまで公務員が

担ってきた様々な事業を民営化や民間委託により、

民間事業者に担っていただいています。

また、区に採用されるパートやアルバイトなどの非正規職員も

増えています。

60歳で定年退職した職員の一部は再雇用職員として

大田区で働いています。

しかし、これらの方たちは当然条例定数に含まれていませんので、

単に、大田区の正規職員の数が減ったからと言って、

大田区の経営が効率化されたと説明できるほど

区の仕事は単純ではなくなっているのです。

 

私は、条例提案の際大田区に大田区が行う公共サービスを

一体何人が担っているのかその全容をわかりやすく示すよう

区に求めていますが、大田区は、そうした経営分析が行えていません。

情報の一部分を切り取り、

区民に誤った理解を与えている良くない事例です。

 

民営化・民間委託で見えなくなったお金の流れ
民営化や民間委託は、サービス向上と経費削減効果を

狙ったものですが、果たしてその効果がどれほどあるのかを、

大田区は、具体的に数値で把握していません。
私は、こうした人員の問題一つを取り上げても、結果として

行政組織が肥大化しているだけで無いかと言う疑念を持っています。

 

民営化や民間委託によりその事業だけを比較すれば

経費削減かもしれませんが、事業者選定や事業者評価、

管理など、大田区内部に残る業務も少なくありません。

 

また、民営化や民間委託は、大田区の財政さえ見えなくしています。

 

例えば、先ほどの指定管理者制度の中に

利用料金制度というしくみがあります。
公共施設の管理に加え、そこで発生する利用料金の徴収まで

その事業者に行わせ、その収入を事業者の収入にして良いと言う

ちょっと複雑な仕組みです。
大田区では特別養護老人ホームや障害者施設の一部に

この利用料金制を採用しています。

この制度を採用すると、お金の流れが

大田区の予算書からまったく削除されてしまいます。

議会のチェックが及びにくいところに行ってしまうのです。

 

複雑になっている公共サービスの可視化が課題

 

大田区が持っている情報は

基本的には区民の財産であると私は考えています

一部の個人情報などを除き、全て公開されるべきです。

 

大田区で行っていることは、複雑にそして見えにくくなっています。

しかし、現在の大田区は、それを分かりやすく、

区民に示そうと言う姿勢に欠けています。

それどころか、出さずにすませたり、その一部分を切り取り

誤った理解に誘導しようとしたりするなど、

問題を表面化させようとしないための隠ぺいを行っていると

言いたくなることが少なくないのです。

 

こうした大田区の姿勢には大きな問題がありますが、本来、

情報を公開させるために機能すべき大田区議会が、

情報公開に消極的であることも問題です。

 

単なる結果の情報だけではなく、

決定した根拠も示せる意思決定過程の情報公開と説明責任が

今の大田区には必要です。

公務員だけで大田区のサービスが執行されていた時代ではありません。

制度が複雑になっているなか、区の持つ情報を公開し、

区政の実態を区民に分かりやすく示す姿勢もまた

重要になってきています。