大田区の外郭団体を指定管理者に指定する理由、区外企業に指定する理由

「大田区民プラザ」「大田区民ホール」「大田文化の森」「大田区立熊谷恒子記念館」「大田区龍子記念館」「大田区区民センター」の指定管理者の指定について反対しました。

■指定管理者制度とは

 指定管理者制度とは、それまで地方公共団体やその外郭団体に限定していた公の施設の管理・運営を、株式会社をはじめと した営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させることができる(行政処分であり委託ではない)制度です。(小 泉内閣発足後の急速に進行した「公営組織の法人化・民営化」の一環。)

 その目的は、多様化する住民ニーズに、より効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の能力を活用しつつ、住民サービスの向上を図ることです。

ここで言う公の施設とは、住民の福祉を増進する目的を持って、住民の利用に供するために、地方公共団体が設ける施設を言います。

 大田区が2分の1以上出資する法人や社会福祉協議会などの団体にしか許されていなかった区の施設の管理について、民間 の参入が可能になり、民間の事業者、NPO法人、そして指定管理者は必ずしも法人格を取得していなくてもなれると定められていますので、ボランティア団体 なども含めた多様な主体が公の施設運営にかかわることができるようになりました。

■大田区の指定管理者制度導入と指定の状況

大田区では、平成16年4月1日から始まり、平成23年10月現在既に103施設に指定管理者制度を導入しています。 103施設の選定方法は、公募プロポーザル方式が58.公募によらず、指定管理者を選定する特命指定が45になりますが、特命指定のうち福祉施設を管理運 営する社会福祉法人が33.大田区の外郭団体が11、NPOが1となっています。

今回、議案に上程されている洗足区民センター以外の施設は公益財団法人大田区文化振興協会が特命で指定されています。

■大田区のアウトソーシング指針と外郭団体を特命指定する理由

昨年6月に出された大田区アウトソーシング指針には「事業の特殊性や区事業との連携が強く求められる場合などは、公益法人等の外郭団体に委託する場合もあります」とありますので、今回の指定は事業の特殊性・区事業との連携が強く求められるので特命指定されているということでしょうか。

平成20年の12月。今回議案に上っている5つの施設の指定管理者を文化振興協会に指定した際の討論で私は、

区民プラザから第109号議案、龍子記念館までの休養村とうぶを除く施設については、これまでと同様、文化振興協会が特命随意契約で指定されています。

公募せず指定した理由を、区は文化振興協会の設立目的が大田区の文化振興に寄与するためであるとしています。

ま た、これまで大田区の文化振興政策がなかったので、今後3年間をかけて大田区の文化振興についての方針を策定するとともに、これらの施設管理運営について 検討すると言いますが、それではこれまで何をしてきたのでしょうか。政権がかわってから既に1年半以上を経過しており、前政権での問題とは言えない状況に あります。

と、発言しています。

それから、3年が経過したわけですが、3年間検討しなかったのいうのでは、区民に再度文化振興協会を特命指定する説明がつきません。

■策定した文化振興プランと大田区外郭団体である文化振興協会の位置づけ

この間、大田区は、大田区地域文化振興プランに、文化振興施策における役割として「区民、地域の文化団体、企業」と「大田区」に並んで、「文化振興協会」の役割を明記しました。

しかし、文化振興プランに記されている6つ役割のうち3つ

①文化拠点施設の運営

②収支記念館などの保全

③コンサート展示企画は、大田区施設の管理運営を通じ行っている事業で、指定管理者として施設の管理運営を指定されていることが前提の役割になっています。指定管理者指定ありきの役割は問題ではないでしょうか。

■文化振興協会の運営実態とその課題

公益財団法人大田区文化振興協会の財政状況を点検しても、大田区の施設管理に関わる収入がほとんどで、自主事業と言っても、大田区の施設において展開されていて、区主催の事業との区別もつきにくく、結果として、事業性・採算性といった経済的視点に欠けています。

 文化振興と経済性は必ずしも両立できないものですが、それでは、文化振興プランに記されている6つの役割のうち残りの

④区民の自主的な地域文化活動を積極的に支援助成すること

⑤地域の文化芸術の育成・発信により、地域文化活動の活性化を図ること

⑥区民・地域文化団体・企業・学校など多様な地域文化活動の担い手をコーディネートするための専門人材を育成・確保すること

などについて、どれほど取り組めているかといえば、ほとんど取り組めていないのが現状です。

 区の施設を使用できる、公的背景の強い立場を活用すれば、さまざまな文化振興に取り組めるはずであり、なぜ取り組めていないのか疑問です。

■ビル管理と公共施設設置目的である事業運営はだれが行うべきか

 そのうえ、前回の討論でも指摘しましたが、

大田文化の森は、ビル管理を文化振興協会が行うとともに、施設の運営は区民で組織する運営協議会が行っています。建物の 管理、個別のビルメンテナンスはビル管理会社などに再委託しており、大事な事業運営はこの運営協議会が担っていると言っても過言ではありません。それでも 文化振興協会に指定していることの意義が不明瞭で、公募するべきです。

これは、区民プラザ、区民ホール、文化の森に限らない、全ての指定管理者制度を採用している施設に言えることです。

■地域コミュニティー施設と区民協働の考え方~施設設置目的達成と雇用の視点から~

たとえば、施設管理はビルメンテナンス会社などの専門家が、最小の経費で最大の効果=安全で、快適で、長持ちする管理を 行っていただければよくて、施設設置目的を達成するための機能は、文化の森の運営協議会のように、地域住民による公平・公正で透明性の確保された運営に任 せるという考え方もあっていいのではないでしょうか。

 冒頭で申し上げました通り、指定管理者は必ずしも法人格を取得していなくてもなれると定められているのです。それこぞが、区民が主役の区政であり、住民自治の基本であると考えます。

 そうした視点でいえば、今回の洗足区民センターなどは、極めて地域性の高い施設であり、コミュニティー醸成に区外の株式会社を関与させることに意義がどれほどあるでしょうか。

 区民の税金を原資とした運営費が区外に流出するより、地域住民が地域コミュニティー構築のために働いた分、地域住民に還元することに価値を見出すべきです。

このことは、今回の、洗足区民センターに限らない、大田区すべての事業における外部化の際のひとつの考え方として、事業それぞれに求められている内容やスキルは異なるものの、検討項目の一つとして認識すべきです。

似たような施設であるにも関わらず、その、手法が大きく異なる「こらぼ」「文化の森」「えせな」が良い事例です。

ビル管理は誰が行うか。施設目的は誰が行うか。そして、その費用・報酬を、区政にどう位置づけるかという問題を整理せず、整合性のないまま行われている現状は問題です。

文化振興協会の検討も行われず、文化振興協会への指定はあり得ません。また、指定管理者制度検討委員会において、洗足区 民センターについての検討がなされたにも関わらず、地域コミュニティー施設が安易に民間株式会社に指定管理されてしまうことにも問題があり、いずれも反対 しました。