伊豆高原学園PFI事業に反対した理由:実質経費15億円/15年⇒17億1000万円/15年に増

大田区の小学生が校外学習で行く伊豆高原の施設が老朽化したため、建て替えることになっています。
大田区は民間の資金を活用したOFI事業を採用するとともに、その管理運営について、指定管理者制度の利用料金制を採用するとして、今回の議会において議決を求めてきました。

私は、民間活力導入には、必ずしも反対ではありませんが、その活用の仕方において次のような問題があると考え反対しました。

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第79号議案「大田区伊豆高原学園改築・運営等の事業契約について」と第80号議案「大田区伊豆高原学園の指定管理者の指定について」反対の立場から討論いたします。

イギリスの新自由主義を踏襲する形で、日本の場合には、小さな政府というかけごえで始まった「民営化」「民間委託」ですが、時代の変化に伴う福祉ニーズに対応しきれず格差は拡大する一方、財政規模は膨らむばかりで、「小さな政府」どころか行政機能は肥大化しています。

高齢化や経済悪化による生活保護が財政悪化の要因として決め打ちされていますが、その前になすべきは、民営化や民間委託による効果の検証です。
経費削減効果がいったいいくらなのか。民営化や民間委託により何人分の公務員の仕事が民間にシフトされたのか。一向に検証されず、漫然と民営化や民間委託は「良し」として導入され続けています。

しかし、民間活力導入は、単なる流行りでも、見せかけの経費削減のためでもなく、区民サービス向上と経費削減による、「最小の経費で、最大の効果」という地方自治法自治法に歌われている自治体の本旨を達成するため行わるべきものです。

補正予算で指摘させていただいていますが、24年度予算2,264億円は対前年比1.9%減達成と宣伝されていますが、予算編成直後の議会で増額されてしまうのですから、区民へのアピールのための予算減にすぎなかったということの表れです。

しかも、指定管理者制度の利用料金制という、区民からは見えないかたちで、予算規模を「圧縮」するテクニックを使い、予算規模を少なく見せているというのが、今の大田区の財政です。

◆官民リスク分担の不均衡◆

 ~民がリスクを負わず、メリットばかりの契約~


今回の二つの議案により、大田区が行おうとしていることは、大田区伊豆高原学園の改築と運営について、

①PFIのBTO方式により、民間の資金を使って建物を建てさせること

②完成したら、即座に買い戻すこと。

③その後、15年間、建物建設した民間事業者に管理運営させること。


④管理運営に当たっては、指定管理者制度と利用料金制を採用することで、その徴収した料金を民間事業者の収入とさせること。

の4点です。

議案質疑の際に取り上げましたが、民間活力導入の根本には、官のサービス提供の硬直化という大きな命題があります。
そして、民間活力導入によりその硬直化の要因である。
①「雇用の継続性、あるいは、不安定性が無いこと」
②「売上が保証されていること」
③「権限を持っていること」
をリスク分担ことによって解消することこそが、民間活力導入が成功するか否かのポイントではないでしょうか。

そのためになすべきことをしているでしょうか。

例えば、①の雇用の継続性や事業の不安定性については、一定期間ごとに事業者の見直しを行うことにより、互いに緊張感が生まれます。
一方で、施設の状況、たとえば、福祉施設など人と人とのかかわりが密な施設など、その施設の状況に応じ、契約見直しの際に評価項目の中に盛り込むことで、雇用の安定性確保と、サービス評価のバランスをとることも可能です。

②売上の保証については、指定管理料の水準が適正であるかが大きなポイントです。

◆大田区のより必要性の高い他施設(特に福祉施設)と整合性のとれない初の長期契約◆

今回の事業は、二次的目的である『区民利用』だけが利用料金で、施設の本来の目的である『学校利用部分』は、15年間もの長期にわたり指定理料として確定的な収入が担保されています。
区内指定管理において指定期間の長期確定した指定管理料の確保された指定がどこにあったでしょうか。

ただでさえ、大田区における、ほとんどの契約において、料金見直しが契約通り速やかに行われていないことを考えれば、当初の料金設定が適正であることを検 証するためにも、契約の軌道にのる3年から5年後に料金設定見直しを盛り込むなどの工夫も必要です。しかも15年というちょうきですから、その後も時代変 化に応じた料金見直しは、双方のリスク回避のためにも必要なことであると考えます。

はたしてこの事業は指定管理者である必然性がどれほどあったでしょうか。

PFI事業のスキームの中で、15年間にわたる管理運営を行っていたいただくことの方が、双方の適正なそして、緊張感をもったリスク分担につながるのではないでしょうか。

◆実質契約金額52億超◆

 

~利用料金制を採用することにより契約金額を12億小さく見せているだけ~

今回のスキームにおける指定管理者制度の採用は、利用料金制を採用した結果、契約金額の圧縮につながっています。

見かけ上の契約金額は、40億3,502万ですが、利用料金で見込まれている収入は11億9,188万円。利用料金制を採用しなければ、契約金額は、52億2690万円にも上ります。

◆民間活力導入により経費は削減できたのか◆

大田区は、公募の際区が提示した42億869万より契約金額で5億7千万安くなったと区民にとってのメリットを強調していますが、それでは、事業者収入全体で見た場合、この事業の収益性はどうなっているのでしょうか。

たとえば、これまでの学校利用における経費は年間で1億円超。15年にしますと15億円程度ということになります。今回の議案で示されている学校利用の15年間の指定管理料は12億6000万円で3億円程度の経費削減になります。

◆「区民利用」に経費を転嫁し見掛け上の「学校利用」費用を少なく見せている◆

 ~校外学習実質経費は旧15億/15年→新17億1000万/15年に増

ところが大田区は、自主事業である区民利用の経費として15年間で4億5000万円も負担しています。指定管理者はそこからの収入として11億9,188万円も見込んでいますので、十分自主事業である区民利用で賄える金額です。
区民利用と経費を分けているため、学校利用で3億円の経費削減となりますが、あくまで二次的な活用であり、区民利用に経費を転嫁することは適当ではありません。そう考えれば、学校利用の費用は17億1000万円にものぼります。
4億5000万円の経費を区民利用として計上することは適当だったのでしょうか。

こうした費用を並べると、自主事業を認め収益を得る機会を与えているにも関わらず、大田区として、伊豆高原学園の経営にはメリットがなく、逆に前より費用負担が大きくなっているように見えないでしょうか。

①PFI事業契約スキームにおけるリスク分担が適当ではないこと。
②指定管理者制度における利用料金制・契約期間など大田区他施設の事業スキームとの整合性がとれていないこと。
③民間活力導入が、費用削減になっていないこと

以上をもって反対といたします。