借り上げ型区民住宅条例廃止に考える、大田区が果たすべき良質な住宅の提供という役割

私たちは当然のことのように「お金が無ければ生きることができない社会」に生きています。

お金が無いと、食べられないし、着ることもできませんし、気持ち良い布団でぐっすり眠ることもできません。

特に、都市部は借りても、買っても、住宅が高いので、住宅問題は深刻です。

大田区が、区民住宅条例を改正して、借り上げ型区民住宅を廃止したことをうけ、考えたことをお話しします。

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住宅の数が十分あるから、公営住宅は新たに作らない、というのが大田区の考え方です。

ところが、大田区は、低所得者向けの区営住宅以外に、区民住宅という住宅の制度があります。

区民住宅は、バブル崩壊後にできた「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づき、大田区民住宅条例を作って運営している住宅で、中堅ファミリー層、区営住宅より高い所得層のための、優良な賃貸住宅と位置付けられています。

 

大田区では、低所得者層向けの住宅が足りないのに、区営住宅より高い所得層に向けて住宅を提供しているのです。

区民住宅には、2つの種類があります。

ひとつは、大田区が建設している、建設型区民住宅。もう一つが、区民が建てた住宅を大田区が借り上げて区民のみなさんに安く提供している借り上げ型区民住宅です。

先日、借り上げ型区民住宅を廃止しました。

それでも、区民住宅は残っています。

廃止したのは、借り上げ型区民住宅の運営方法が、必ずしも、区民の税金を使った運営としてふさわしいと言い難い部分があるからです。

借り上げ型区民住宅は、
民間がオーナーで、区が建設費の補助をして、民間が建設した賃貸住宅を20年間区民住宅として運営するしくみです。

区と民間が、20年間区民住宅として使うという協定を締結し、住宅の家賃は、入居している、いないにかかわらず、その9割以上を大田区が保証するという仕組みになっています。

建設時の協定書には、周辺相場との乖離が生じた場合、協議を行うとされていますが、周辺の家賃が下がっても、それに伴い家賃の改定をしにくいだけでなく、家賃を改定した場合には、その差額を大田区が負担する形になっていました。

こうした仕組みをみると、良質な住宅を提供するための制度というより、民間オーナーを守る制度のように見えます。

こうした状況もあり、20年の協定期間終結をもって協定の更新は行わないことになっていて、今回、この住宅で、借上型区民住宅はなくなることから、条例を廃止しました。
居住者への周知理解も得られていると説明を受けました。

一方で、区民住宅は、廃止せず、そのまま残っています。

大田区は、区内には賃貸用の共同住宅の空き家が約3万7750戸あると推定し、これらの住宅ストックを有効活用する観点から、既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅確保要配慮者の入居支援の充実を図ることが重要と考えているといっています。

そのため、高齢者向けの区営住宅やシルバーピアを増設する予定はないと言っていますが、こうして、建設型区民住宅を存続させ、住宅の質の向上のために住宅施策に責任を持ち続けることは、極めて重要だと思います。

これは、大田区が、良質な住宅への公的責任を持っていることの現れだからです。

数は足りているから、低所得者向け住宅を作らないと言っている大田区ですが、住宅には、様々な課題があります。

たとえば、最低居住面積と言って、一人当たりの居住面積は25㎡という基準があります。

国交省がこの基準に変えてから、大田区の統計をみると、一人当たりの最低居住面積水準未満の建物が減ってきているように見えます。

ところが、シェアハウスのような形態も増え、また、全国に先駆け民泊を始めたこともあり、一人当たり居住面積の小さな家に踏む方たちが増えていますが、こうした部分は数値にはでてきません。

これは、シェアハウスや民泊が、建築基準法上の共同住宅にあたらないからだそうです。

物価が上がり、所得は物価ほどに上がらず、生活を維持するために、住居費を削る人も増えています。

大田区には、廃止した借り上げ型区民住宅に投じてきた財源を使って、低所得者、高齢者、住宅困窮者などに加えて、良質な住宅を区内で提供できる環境を整えることを要望し、条例の廃止には賛成しました。

 

以下は、議案への討論です。

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フェアな民主主義奈須りえです。

第40号議案大田区民住宅条例の一部を改正する条例につきまして、賛成の立場から討論いたします。

区民住宅には建設型区民住宅と借り上げ型区民住宅がありますが、この議案は、区民住宅の中でも土地と建物は民間所有の借上型区民住宅を廃止するための議案です。区営住宅が低所得者向け住宅であるのに対し、区民住宅は、バブル崩壊後にできた建設型区民住宅、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づき、大田区民住宅条例によって運営されている中堅ファミリー世帯、区営住宅より高い所得者層のための優良な賃貸住宅です。

区民住宅は、民間がオーナーの場合、大田区が建設費補助を行い、民間が賃貸住宅を建設し、その賃貸住宅について、20年間区民住宅として使うという協定を締結しています。住宅の家賃は、入居している、いないにかかわらず、その9割以上を大田区が保証するという仕組みです。そのため、建設時の協定書には、周辺相場との乖離が生じた場合、協議を行うとされていますが、周辺の家賃が下がっても、それに伴い家賃の改定をしにくいだけでなく、家賃を改定した場合には、その差額を大田区が負担する形になっています。こうした状況もあり、20年の協定期間終結をもって協定の更新は行わないことになっていて、今回、この住宅で、借上型区民住宅はなくなります。居住者への周知理解も得られており、この廃止はしくみから妥当で賛成いたします。

一方、もう一つの建設型区民住宅は存続させます。建設型区民住宅というかたちで、住宅の質の向上のために責任を持ち続けることは極めて重要だと思います。

大田区は、区内には賃貸用の共同住宅の空き家が約3万7750戸あると推定し、これらの住宅ストックを有効活用する観点から、既存住宅の流通と空き家の利活用を促進し、住宅確保要配慮者の入居支援の充実を図ることが重要と考えているといっています。
そのため、高齢者向けの区営住宅やシルバーピアを増設する予定はないと言っていますが、こうして、建設型区民住宅を存続させ、住宅の質の向上のために住宅施策に責任を持ち続けることは極めて重要だと思います。

最近では、シェアハウスのような形態も増え、また、全国に先駆け民泊を始めたこともあり、住宅環境は悪くなってきているという印象を持ちますが、大田区の統計をみると、最低居住面積水準未満の建物が減っていることになっていて、住環境は逆に向上しているという実態と異なっていると思われる数値がでています。

これは、シェアハウスや民泊が、建築基準法上の共同住宅にあたらないからだそうです。

今後、大田区は、単にこの建築型区民住宅事業を行うのではなく、廃止した借り上げ型区民住宅に投じてきた財源を使って、

低所得者、高齢者、住宅困窮者などに、

狭くて安いのではなく、加えて良質な住宅を区内で提供できる環境を整えることを要望し、賛成といたします。