【動画】自治体がデジタル通貨を発行する本質的な問題について

令和3年(2021年)第1回大田区議会臨時会自治体がデジタル通貨を発行する本質的な問題について

 

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以下は発言の原稿と私のコメントです

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プレミアム付き商品券は、たとえば大田区だと、500円券×12枚組を5,000円で販売し、1,000円分お得な商品券を商店街で使ってもらうことで、商店街を振興させるのが目的だと説明されてきました。

 

大田区ホームページ:【区民・在勤・在学の方向け】大田区商店街プレミアム付地域商品券について (city.ota.tokyo.jp)

ところが、当初の発行から、その目的や手法、効果を見ていると、実は少しづつ変化しています。
先日の臨時会の補正予算で計上されたプレミアム付き商品券では、初めてデジタルマネーになりました。
その目的も商店街振興ではなく経済対策です。

私は、極めて大きな変化であり、見過ごすことができませんでしたが、自治体が発行する地域限定通貨とはいったい何で、そのことにより、どんな変化があるかも説明されませんでした。

しかも、スーパーシティでは、ボランティアポイントなど、地域限定で流通する通貨に言及していますから、地域包括ケアなど共助の仕組みの決済に、法定通貨ではなく、地域限定通貨を使うことも考えられます。
そうなれば、働く対価を共助でボランティアと位置付けられて、最低賃金さえ得ることができないだけでなく、地域内のしかも、決められた店舗でしか使えない可能性もでてきます。

最近では、少しずつ、お金の仕組みに関心を持っている方も増えてきていますから、この新たな地域限定デジタルマネーとその課題について一緒に考えていただきたいと思います。

以下は、私の反対討論です。


 

中でも問題を感じるのが、プレミアム付き地域商品券事業6億5千万円です。

 

変化してきたプレミアム付き商品券

委員会審査で、(プレミアム付商品券について、)毎回手法が違うという指摘もあったように、当初のプレミアム付き地域商品券とは形が変わってきています。

 

プレミアム付き商品券の当初の目的

大田区で最初にプレミアム付き商品券が発行されたのは、2009年4月。当時の産業経済課長がその目的を

個人消費の拡大

商店街の活性化

商業の活性化

と明確に示しています。

変化する、発行の目的、使える店舗、販売場所、

これは、2008年のリーマンショックによる消費の落ち込みを受けての発行でそれが何回か続きます。

その後、
目的 東日本大震災の被災地支援、復興支援という名目で発行され、
   商店街活性化から、商業振興という風に言葉が変わり、
使える店舗も、商店街の個人商店だけでなく、駅ビル大型店、コンビニなどでも使えるようになり、
販売する場所も、商店街の事務所だけでなく、郵便局という金融機関が加わります。

利用される店舗の変化に見る「失われた商店街振興目的」

第一回のプレミアム付き商品券は、商店街で大体80%、駅ビル14%、医師会、理容組合、セブンイレブン等々3。5%利用されていましたが、その後の報告で、商店街で使われる割合が、56%と落ち込むなど、商店街で使われていないことを問題視する指摘はありましたが、今回の委員会説明で、商店街以外の店舗について排除が難しいと答弁している通り、商店街支援の目的は、薄れています。

発行する商店街も早い段階から全体の1/3に留まる

発行する商店街も、今回もそうですが、早い段階から全体の1/3程度で、全ての商店街の店舗が恩恵を受けている事業でもありません。

果たせなくなっている商店街振興、地域内循環経済

こうした経緯をみても、また、大店法の改正などにより大型店が商店街に入り込み、個人商店が激減しているなどからも、プレミアム付き商品券が、地域内循環経済を守る役割はとうに果たせなくなっていることは、明らかだと思います。

 

今回の委員会説明も、区内経済の消費喚起が目的で、商店街振興という目的はそもそも失われています。

失われた大義、商品券発行そのものが目的に

そのうえ、低所得者、子育て世帯向けのプレミアム付商品券の発行を実施、プレミアの設定も商店街にまかせるなど、経済とか、福祉というより、プレミアム付商品券発行そのものが目的のようになっています。

08826828f03d6c1f6d1b59ffdce63d8f.pdf (nasurie.com)

プレミアム付き商品券
発行総額の大半はデジタル、発行は電子決済事業者や金融機関を想定

しかも、今回のプレミアム付商品券発行総額5億5千万円のうち、デジタルが4億5千万、紙が1億円とデジタルがほとんどで、委託事業者には、電子決済事業者や金融機関を想定していることが明らかになりました。

商品券の発行主体も、紙は各商店街が、デジタル商品券は大田区が発行主体と違います。

商店街の商品券は大田区単費で行われますが、デジタル商品券は、補助率3╱4と東京都の大きな補助がついていて、積極的に発行しようという姿勢が見えます。

なぜなのかを考えたのですが、

法定外通貨が自治体内を流通

商店街振興のために始まったプレミアム付き商品券ですが、今回、金融機関などに委託するなど、結果として、地域における決済のしくみに、法定通貨以外の通貨を流通させる効果があるとみることができます。

国家戦略特区スーパーシティでは当初から法定外通貨流通を想定

国は国家戦略特区のスーパーシティで、地域で流通可能な通貨のようなもので共助の労働力の対価支払いをボランティアポイントなどと呼んで、想定しています。

今回のこのプレミア付商品券を流通させることは、スーパーシティーで国が想定しているボランティアポイントと関係するのではないでしょうか。

公民連携、包括連携協定、スーパーシティなどを組み合わせれば、行政、企業、個人情報を使った地域包括ケアなどを住民ボランティアが担い、その共助の対価を行政と企業が発行するボランティアポイントのようなもので支払うことが可能になります。

ビットコインなど通貨とは何か、法定通貨とは何か、と言った、これまで当たり前だったことが当たり前でない時代に入ろうとしています。

プレミア付商品券の本来の目的である商店街振興の目的は既に失われています。ここで電子決済事業者や金融機関と連携することによりプレミア付商品券に取り組むことは、地域通貨発行の土壌をつくることになりはしないでしょうか。商店街振興のもとで進んできたプレミア付商品券が、運用により区民へ与える影響の検証も無く進められようとしていることに警鐘をなし、反対といたします。