官制ワーキングプアの合法化【会計年度任用職員】
低賃金で手当などの規定のない非常勤職員規定を整備し、専門性を持つ特別職をつくり、退職手当・期末手当を給付する会計年度任用職員を創設するための条例改正が行われました。
【会計年度任用職員制度で、期末手当・退職手当など支給でも、
平均給与は110万円程度】
この条例改正により、現在の非常勤職員の中には、年間2.6か月の期末手当を得られ、退職手当を支給されるようになる職員がうまれ、総額でみれば、年間で8~9億円、うち期末手当で約7億円という人件費が増加になります。その部分では、処遇も改善されますので評価されるものです。
しかし、公務員の平均給与が約700万円であるのにたいし、会計年度任用職員は、様々な職種や働き方があるものの、平均で、試算で110万円ですから、期末手当や退職手当が支給されるようになるとは言うものの、依然低い水準で、生活を維持できる状況にない働き方の方が大半です。
【会計年度任用職員制度、正規以外は3200人と変わらず】
大田区は、現在、正規職員4200人で、正規以外は3200人。うち非常勤2300人、臨時職員900人ですが、会計年度任用職員採用後には、正規職員は4200人とかわらず、3200人のうちわけが、特別職600人、会計年度任用職員2500~2600人と、非常勤と臨時職員が会計年度職員と特別職に移行した形です。
【公務員間の差別の合法化
・官制ワーキングプアの合法化】
正規以外に3200人もの不安定、低賃金労働に支えられた仕事が大田区行政に存在することになりますが、会計年度職員と正規職員との差は、1年以内という任期の範囲に過ぎず、会計年度任用職員という制度の創出は低賃金労働、不安定雇用を法的に固定化したことになります。公務員間の賃金差別を合法化することになります。これを、ジャーナリストで和光大学名誉教授の竹信三恵子さんは、官制ワーキングプアの合法化と呼んでいますが、まさにその通りだと思います。
【会計年度任用職員制度、5年で雇止め、無期雇用もかなわず】
しかも、任期の範囲は1年以内で、民間であれば、常勤雇用になる5年になるまで連続勤務を可能としながら、5年以上勤務させせず、新たに試験を受けさせるためそこで雇用させないこともできるなど、悪質と言わざるを得ません。こうした公務労働の在り方が、民間の低賃金労働を招き、請負や、派遣など不安定雇用は改善されません。
江東区は無期雇用としたそうです。国の作った仕組みとは言え、改善できるところは最善をつくすべきです。
【正規との違いは任期(1年以内)だけの会計年度職員】
大田区は、公務員を減らし、その分営利企業に公務労働分野を開放してきましたが、その割合が大きくなればなるほど、行政・議会の統制統治がきかなくなり、結果として営利企業がみんなの税金や財産をコントロールし、食い物にすることにつながります。民主主義の上に市場経済がのっかり、主権者が国民ではなく株主に移行してきているのです。
全くいないとは言いませんが、短い時間だけ働きたい人もいるからと発言する委員や答弁する大田区は、認識不足と言わざるを得ませんし、働きたければ公務員試験を受ければよいといいますが、公務員の数が減っているので試験をうければいいというものではありません。民営化に賛成し、正規職員を減らし、雇用の絶対量を減らすことを認めてきた当事者意識に欠けていると言わざるを得ません。
【限りなく増える低賃金労働(会計年度任用職員)の心配】
大田区は、質問にこたえ、正規職員と会計年度任用職員の違いを人気の範囲だけでなく、基準を明確にすると答弁しましたが、ここを怠れば、限りなくこの会計年度任用職員は増えていくでしょう。
短時間雇用、低賃金労働を働く方たちの自己責任化し、政策を議論し立案するなら、請け負い、派遣、非正規雇用に悩む区民は、大田区政に失望するでしょう。
私たち議会は、大田区政という公務をどうするかを担っているのであり、民間企業のように、売り上げから人件費などのコストを差し引いて残る利益を最大化するわけではありません。無駄は排除すべきですが、公務員制度をどうするかは、私たちのこどもや将来の世代が、どう働き生きる社会を作るのかという視点で安定した雇用を創出することも私たちの重要な政策課題です。近視眼的な雇用改善の、目先のコスト削減だけでない公務員改革をもとめ、反対といたします。