入札の傍聴ができない大田区
落札率とは、予定価格に対する落札額の割合を言いますが、大田区の落札率が高いことが兼ねてより指摘されています。
例えば、第四回定例会において議案提出された 5件の契約における落札率は、98.05%、83.77%、94.71%、88.8%、98.99%でした。
この、落札率が極めて高い場合には、談合を疑えと言われています。
大田・生活者ネットワークは、現在の大田区の入札のしくみにおいては、談合の有無についての確証が持てないことから、およそ95%を目安として、それより高い落札率の契約について、賛成も反対もせず、全て退席としています。
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さて、この入札ですが、大田区では、区役所の9階の入札室で行っています。
他自治体の議員から入札を傍聴したと聞き、私も、傍聴を経理管財課に申し入れたところ、傍聴は想定していないと言われました。詳しく、聞いたところ、
大田区では現在電子入札を導入しており、電子入札については、ネット上での入札となるため、傍聴は事実上不可能。JV(複数事業者が共同して入札申し込みをする)案件のみ入札室における入札をしているが、現在は、傍聴を想定しておらず傍聴できない。
ということでした。
たとえば、平成12年に制定された入札適正化法は、
○公共工事の入札・契約について、下記の事項を守り適正化するよう定めています。
・入札・契約の過程、内容の透明性の確保
・入札・契約参加者の公正な競争の促進
・不正行為の排除の徹底
・公共工事の適正な施工の確保
また、平成20年の通知文において、入札及び契約に関する情報の一層の公表の推進として、
・インターネットの活用などを積極的に図りながら、指名競争入札における指名基準の策定・公表
・第三者機関等の活用による入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性及び公平性の確保の推進
などについて、重ねて適正な入札のためのしくみの構築について自治体に呼び掛けています。
自治体における談合がなくなっていない、あるいは、こうした仕組みを確保しなければ、談合が行われてしまう可能性があるということでしょう。
そうした状況において、入札現場の傍聴が不可能であるという大田区の現状は、入札そのものの適正化に対する取り組みが遅れているということにつながりはしないでしょうか。
経理管財課には、傍聴の検討を依頼するとともに、入札日についての情報提供をお願いしました。
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以下、現状における入札や契約の課題についてその一部にふれます。
■区民の視点に立っていないわかりにくい公表方法
大田区は、HPにおいて、入札適正化法による透明性の確保に努め、一応、公表をしていますが、大田区のHPをご覧になるとわかると思いますが、非常にわかりにくい公表のしかたです。
入札・契約を希望する事業者が、情報を入手するには良いのかもしれませんが、区民が入札・契約状況を知る視点で見れば、非常に不親切です。
事業者の方へというバナーから入札情報のサイトに入る ということが、入札適正化という視点に立ってないことを象徴しています。
http://www.city.ota.tokyo.jp/jigyousha/index.html
■専門用語がさらに内容をわかりにくくしています
しかも、使用されている用語から具体的な入札状況を知ることはほぼ不可能でしょう。
たとえば、先ほどの事業者のサイトから
事業者の方へ→契約情報→工事→<a href=”http://www.city.ota.tokyo.jp/jigyousha/keiyaku/kouji/koujinyuusatukekka.files/koujikekka-23-11.pdf “>工事入札結果</a>
を見ると、制限付き一般競争入札と指名競争入札という言葉が出てきます。
制限付きとは、「事業者のランクを指定」したうえで、大田区の場合、「区内」に限定していますので、入札案件ごとに、どの事業者に応募資格があるかはすぐにわかります。
指名競争入札は、区から声のかかった業者間での入札です。
結果として、大田区の多くの入札や契約が、顔の見える関係の中で行われていることがわかります。電子入札にしても、入札室で入札を行っても、談合を完全に排除していることとイコールではないのです。
■自治体における入札や契約の際の「区内」限定の意義
私は、「区内」をすべて否定するつもりはありませんが、「区内」に限定するのは、区内産業の育成であり、区内経済、雇用への波及効果を評価することであるととらえています。
・区内産業育成の視点から
公共事業という「レベルの高い」事業を受注することで競争力をつけ、より大きな案件を受注できる力をつけていただくということです。
しかし、現在のしくみは、顔の見える関係での競争になり、囲い込みが保護になってしまう危険性が否定できません。
TPPなどという話も出てきていますが、その是非はともかく、将来的に海外の土木や建設工事を受注できるだけの力を持たなければ、止めることのできない「グローバル化」には対応できないでしょう。
・区内経済、雇用への波及効果
については、緊急経済対策の視点で報告しています。
http://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/dfa0d8d2f50f82ea83936e0bfdd56732
また、随意契約についても、その理由が不明瞭で拡大解釈される恐れがあります。
■随意契約の理由の適正化
たとえば、随意契約という欄をみると高額な契約も随意契約で行われていることがわかります。
http://www.city.ota.tokyo.jp/jigyousha/keiyaku/kouji/zuiikeiyaku.files/23-11.pdf
自治法で随意契約を認めているのは下記の様な時ですが、そのほとんどが2号と5号であることがわかります。
ところが、入札に適さないとしながら、随意契約の報告には、なぜ入札に適さないのかという理由は示されません。
専門的知識を要する契約において、都区的事業者だけがその技術や製品を持っているため入札に適さないとしているのであれば、それを公表することが重要です。
WEB上に公表すれば、多くの目にさらされることになり、入札に適さない理由が、確かであるかどうかの確認にもなります。
※ 自治令第167条の2第1項
第2号:契約の性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき
第5号:緊急の必要により競争入札に付することができないとき
第6号:競争入札に付することが不利と認められるとき
第7号:時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき
入札の傍聴不可という大田区の現状は、区民に入札や契約が適正であることの確保のためのしくみの構築が不十分であるということを示しているのではないでしょうか。