就学援助費の支給を引き上げる条例案に「大田区が」賛成すべき理由
現在大田区が行っている就学援助費の支給について、
🔲 眼鏡を加え
🔲 基準を生活保護要保護基準の1.2から1.3に引き上げるとともに、
🔲 これら要綱で規定していたものを条例による規定に変えるための議員提出議案
に、以下の理由から賛成しましたが、反対多数で否決されました。
フェアな民主主義奈須りえです。
議員提出第6号議案「大田区就学援助費支給条例」に賛成の立場から討論いたします。
この条例は、現在大田区が行っている就学援助費の支給について、
① 援助の対象に視力補正のための眼鏡を加え
② 基準を生活保護要保護基準の1.2から1.3に引き上げるとともに、
③ これら要綱で規定していたものを条例による規定に変えるための条例です。
眼鏡についても、入学前検診や学校医の認定など、学習に必要な視力矯正であることが明らかな場合に支給することは子どもの学習環境に資する改善策であると考えます。
【地方分権で大きくなった大田区の社会保障への責任】
地方分権で社会保障の責任主体が基礎自治体になったことで、大田区の区民生活への公的支援の責任は、2000年の地方分権一括法施行以降大きくなっています。
【地方分権で、増税・増収で大田区の歳入は増加】
しかも、地方分権により大きくなった社会保障の責任などの権限移譲に対し、住民税一律10%に加え、東京23区では、都区財政調整制度による特別区交付金交付割合52%から55%へ引き上げなど、税源の移譲が行われ、区民のみなさまへご負担いただく税負担も大きくなっています。
特に、社会保障のバイブルともいわれている平成24年の厚生労働白書が指摘しているように、社会保障制度は産業資本主義社会が形成・発展する中で、工業化に伴う人々の労働者化によって、地縁や血縁がそれまで果たしてきた人々の生活を保障するという機能が限定的になったことによって必要になってきた」ものです。
それらの地縁とか血縁が担ってきた機能を行政が代替することによって、人々が経済活動に注力することができるようになったという意味で、社会保障というのは産業資本主義の社会、国民・国家の発展を支えてきたといった説明がされています。
【経済の中心東京23区は社会保障ニーズも大きい】
産業資本主義の日本で一番進んでいる東京都の23区は、最もその責任を大きく担わなければならない自治体で、地方分権で、さらにその役割が大きくなったと言っていいと思います。
しかも、ちょうど、地方分権一括法が成立するころから、公共サービスの担い手に株式会社という営利企業の参入が許されるようになります。規制緩和や行政改革の流れのなかで、民営化や民間委託と名付けられた公共サービスの営利目的化が行われてきたわけです。こうした法規制の緩和や公共サービスの営利目的化は、区民が生きていくうえで欠かせない社会保障の金銭的負担を大きくするなど、自己責任、自己努力の範囲を広げると同時に、公共サービスを民間が担うことによる公務労働の低賃金化、不安定化を招きました。こうした法規制の緩和は、公共サービス分野だけでなく雇用の法規制をなくすなど、公務労働だけでなく民間企業にもおよび、社会全体の雇用の不安定化、低賃金化につながっています。
【社会の変化で、社会保障ニーズはさらに増大】
地方分権で、国から大田区へ移された分、責任が大きくなっただけでなく、社会状況の変化により、社会保障で解決しなければならない問題がより大きくなったのです。
そうした意味で、こうした就学援助においても、社会状況の変化を踏まえた援助をしていかなければ、経済状況が子どもの将来に与える影響が大きいにもかかわらず、それを放置することになり、子どもの将来を限定的、固定的にしてしまうことになります。
にもかかわらず
【東京都の都民一人当たり福祉費:石原都知事就任時2位→辞任時最下位】
石原都知事の就任時1999年に都民一人当たりの福祉費が47 都道府県中2位だったのが2012年には47位の最下位になってしまいました。
【だから、大田区が社会保障の責任を果たさなければならない】
23区の場合、都区財政調整制度という基礎自治体の財源を都と区でわけるしくみで、2007年に地方交付税交付金割合を3%だけ23区側に多くしましたから、その分きちんと区民に責任をはたさなければなりません。
それだけで足りているかという問題意識とともに、少なくともこの間の社会状況の変化に伴う区民生活への影響を大田区が社会保障できちんと保障していかなければならないという意識が必要です。
そうした視点から、今回の基準の引き上げは、大田区として優先的に行わなければなりません。
そのうえで、今回、就学援助費の支給について、これまで要綱で行ってきたものを条例化することには大きな意義があります。
【区民の権利義務は条例で】
地方自治法第14条は「義務を課し又は権利を制限するには、法令に特別の定めのある場合を除くほか条例によらなければならない」と定めています。
権利義務にかかわる自治体のルールは議会の議決によらなければ作ることができないという意味でもあります。
しかし、現実には、まちづくりにおいて「開発指導要綱」などで対処してきた経緯もあり、大田区においてもこの就学援助費支給のための要綱はじめ数多くの要綱が存在しています。
「行政手続法」や「地方分権一括法」の制定により、要綱が議会の議決を必要とする条例になっていくと期待されましたが、進んでいないのが現状で、2008年今から9年前の予算委員会の質問をきっかけに要綱の一部がようやくHPに掲載されるようになったという経緯があります。
当時、大田区は、「要綱は各部局で制定し運用を管理していて総数を把握していない。」と答弁していて、各部任せの区民の目の届かないところで管理されているため、本来、要綱で対応すべきではないものが見過ごされたり、公平・公正な執行を妨げてはいないか、という指摘もさせていただいています。
そうした意味で、就学援助費のように、区民の生活や義務教育など基本的人権に直結する費用の支給は、条例で規定するとともに、区民に公開するのは、当然に行わなければならないことであり、賛成といたします。