生活重視政策をするからと始めた地方分権、区民生活重視どころか権限使って企業利益最優先の大田区政
生活重視政策と言われてきた地方分権ですが、大田区は生活重視の政策へ転換できているでしょうか。
私は、逆に生活軽視、投資家利益優先の政治に変わってしまったと感じています。
大田区に地方分権の成果について財政的視点、政策成果など質問しましたが、大田区は明確に答弁できませんでした。箱物、イベント、費用対効果の悪い社会保障政策、、、地方分権は逆に格差を拡大しています。
フェアな民主主義 奈須りえです。
地方分権は、1993年の国会決議、それに続く全国市長会、全国市議会議長会など地方六団体が1994年に出した「地方分権の推進に関する意見書」により大きく進むことになります。
あらためて、どのような想いで、私たち区民や区長や議会が地方分権を進めてきたかを確認したいと思います。
国内では、経済成長が所得水準の向上をもたらしたものの、多くの国民は、それを実感できず、真の豊かさを求めようとしている。このため、成長優先の政策から生活重視の政策への転換が行われつつある。生活重視となれば、生活に身近な地方公共団体の果たす役割への期待が高まるのは当然であろう。さらに、中央集権的な行政の結果、首都圏への一極集中、地方における過疎化、地域経済の空洞化などの課題が生じており、このためにも 、地方公共団体が、迅速・機敏に、きめ細かに、しかも自立的・総合的に行動し、生活の向上と魅力ある地域づくりに邁進できるような権能と条件を備えてゆくべきである。
今こそ、地方公共団体は、地方自治が住民の権利と責任において主体的に形成されるべきという基本的観点に立って、その責務を果たすために、より足腰を強めて「自立する」ことが肝要である。
我々が「地方自治の充実」を期して、地方における事務権限の抜本的強化、財政自主権の確立などを内容とする「地方分権」を強く求めているのは、正にこのような考え方に立つからである。
いま、大田区は、民営化や民間委託を続け、地方分権の流れの中で始まった国家戦略特区に区長自ら手を上げ積極的に取り組んでいます。
今日は、この間の地方分権や民営化の効果・影響についての検証をしたいと思います。
① そこでうかがいます。
地方分権を国民が支持することになった「生活重視政策」への転換はできましたか検証はできていますか。区民にどのようなメリットがあったか、評価してください。
大田区議会は、安全と区民の快適な住環境が確保されないなら空港は撤去すると決議し、羽田空港は沖合に移転しています。
ところが、新飛行ルート案は豊かな経済のためで、到底区民の生活を重視しているとは言えませんが、国の事業だからと、大田区は主体的に動きません。
どこが地方分権、どこが生活重視でしょうか。
先日は中学生の肩に落ちました。飛行経路から3キロ外れて落ちていますから、空港に近い大田区のリスクは一番大きいのです。相次ぐ落下物、や騒音など、区民は陳情で繰り返し警告しています。大田区長、大田区議会はその責任の大きさを自覚すべきです。
国家戦略特区は地方分権だからと始まりました。大田区など区域を限定して、法令の適用を除外し、外国投資家が利益を上げるための経済政策です。効果が無いと証明できない限り、一年後には全国一律の規制緩和が行われるのが原則です。
区長自ら、区民の生活環境を守ってきた旅館業法を区内で守らなくて良い、と事業者利益を優先した結果、特区民泊と民泊新法で区民生活に大きな混乱を招いています。
どこが生活重視政策なのでしょうか。
地方分権推進委員会の委員を務めた西尾勝氏は
「分権を進めてほしいという点では共通であったものの、政界・財界が望んだことは、行政改革の一手段としての分権だったということである。小泉改革において、典型的に現れたように、「官から民へ」、そして「国から地方へ」というのが行革の柱で、地方分権改革は、この行革の一環として位置づけられたものでしかなかったのである。」
と指摘しています。
羽田空港の飛行ルート変更も国家戦略特区も、地方分権の目指した生活重視の実感がないどころか、逆に企業の投資利益・配当のための区政に変わったと感じます。
さて、地方分権で民営化や民間委託が進みました。中でも、保育が自治事務に代わり、大田区の責任で保育事業を行うようになると、大田区は、民間委託や民営化など、保育分野に社会福祉法人や営利事業者を参入させるようになり、国庫補助が出るので、待機児は民間事業者で解消してきました。
それでは、大田区の言うようにコストが下がり、サービスは向上したのでしょうか。
西尾勝氏の指摘した通り、民間にお仕事を上げるため、新規参入分野を開放したと言うことだったのではないでしょうか。
② そこで、うかがいます。
民営化でコストが下がり、サービスが向上すると言ってきましたが、民営化のコストはさがりサービスは向上したでしょうか。民営化で市場にまかせて安くて最善のサービスになりましたか。
直営で行う場合とのメリットと課題についてお答えください。
●民営化しても、コスト削減されたかどうかの検証も行われていなくて
●いまだに待機児も解消されていません。
それでも、あえて民営化する必要があるでしょうか。
しかも、大田区がよく言う、スピード感をもって整備出来る、というメリットですが、民間でスピード感をもって整備した結果が、園庭の無い保育園であり、閑静な住宅地に建設された保育園です。
スピード感を持った結果、保育環境が悪化し、周辺住民の生活環境を侵害し、それでも投資家は確実に儲かると言う、投資家目線の待機児対策でよいのでしょうか。
厚生労働省老健局長・社会援護局長をつとめた国際医療福祉大学大学院教授の中村修一氏は、社会保障は自動的に決まるのではなく、人間が決めることであると言っています。
民営化しても、保育事業者には、行った事業に応じ、人件費基準額に基づいた公定価格が支払われていて、競争によるサービス向上や価格の低下は起きないのです。
これは、全部、人間が決めていることです。
そこで問題なのが、民営事業者の保育士の賃金が低くなっていることで、大きな社会問題にもなっています。
人件費基準額相当の賃金を支払っていない事業者があると言うことです。
コストが安くなったか検証できず、現場労働者に十分な賃金が支払われないにもかかわらず、民間事業者に委託することのメリットはどこにあるでしょうか。
「社位階的セーフティーネット」や「所得再分配」と共に、リスク分散は社会保障の重要な機能です。私は、今の社会のリスクは、雇用を失うことや低賃金になることだと考えています。
③そこでうかがいます。区政課題におけるもっとも大きな区民生活におけるリスクは何だと思いますか。
日本の社会保障政策は、高齢者への年金や医療と働けなくなった方への生活保護が中心で、「元気だけれど働けない」「元気だけれど低賃金」の人たちをいまの社会保障では救うことができません。
大田区として何ができるかというヒントを求め、今年の7月末に韓国ソウル市に行って、特区と労働施策を調査してきました。
以下、細かい数字は地方自治総研の上林陽治研究員のレポートから引用しています。
韓国と日本の施策は、
🔲国家戦略特区と経済特別区
🔲民営化、🔲地方分権など施策が同じで、
🔲岩盤規制と規制の大岩など使う言葉まで似ていました。
背景に、韓国は韓米FTA、日本は日米FTAという貿易の自由化があり、その影響で公共サービスの営利企業への開放やそのために規制をなくしているということです。
そうした韓国でも、労働の非正規化が加速していて、2004年に37.0%とピークに達し、ソウル市では、直接間接雇用の非正規労働者の正規化事業に取り組み、成果をあげています。
しかも、ソウル市は業務委託から直接雇用にすることで、全体経費を5%削減するとともに人件費は16%アップしています。
公務員制度や最低賃金の定め方など違いがあり、そのまま採用することはできませんが、注目すべきは、委託費に含まれる事業者の利益=株主配当が大幅に削減されたため、人件費をあげ、全体経費を下げることが出来たと言っていることです。
ソウル市の受託事業者は、人件費というコストを下げてもうけていた ということです。
ソウル市は公務労働だけでなく、人間らしい生活を保障する生活賃金制度を民間分野にも広げようとしています。2017年の韓国全土の法定最賃が6470ウオンに対し、ソウル市の生活賃金は1.27倍の8197ウオン。
こうした取り組みは周辺自治体にも広がっていて、国の施策にも影響し、それが民間企業にも広がり、正規採用を増やす企業も増えています。
日本でも、非正規労働者は4割と言われていて、韓国以上に深刻な状況です。
④そこでうかがいます。
大田区も、民間委託や民営化で進んだ低賃金化・雇用の不安定化を改善するため、直営に戻す、非正規を正規にする・無期契約への転換をはかるなどソウル市の事例を参考に雇用を安定させるべきではないでしょうか。できないとするとどこに課題がありますか。
大田区の委託や民営化、指定管理者などの数字の合計を平成27年28年度決算から拾い集めると、おおよそで、564億円という数字がでました。ソウル市では、この5%の経費削減ができたと言うことですから、仮に同じ人件費割合だとすると人件費で16%55億円増やせるのに、約28億円コストダウンできることになります。
私たちは、給料が高いのに、働かなくて、感じの悪い公務員より、民間が良いと民営化してきましたが、結果として、低賃金労働、不安定雇用を増やしてしまいました。
もちろん、優れた事業者もいて、全ての事業者に、今日の問題があてはまるわけではないと思います。
しかし、結果として、私たちは、子どもたちの世代の雇用を民営化で大幅に失ってしまいました。
うかがいますが、
⑤これを放置してよいのでしょうか。
大田区は、民営化による財政へのメリットさえ示すことができないどころか、昨日も、指定管理者制度の利用料金を教えてほしいと言いましたが、昨年は電話ですぐ教えいただけたのに、今年は情報開示請求せよと言います。
地方分権で民営化したら、情報が遠くなっただけでなく、行政が事業者と一体になって、事業者のあらが議会で露呈しないように守っているように見ます。
これが地方分権の実態でしょうか。
厚生労働省の格差の解消を示す指標となっているジニ係数の調査をみると、高齢者世帯・母子世帯・その他の世帯のなかで、最も社会保障給付の恩恵をうけていないのが母子世帯です。
貧困の調査で有名な安倍あやさんも調査員になっている「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」は、専業主婦世帯が裕福層と貧困層の二極化していて貧困層でありながら「保育の手だてがない」ことで働けない母親が全体の半数以上を占めていることから、保育園の拡充などで専業主婦世帯の貧困率を引き下げることが可能であると言っています。
そこでうかがいます。
⑥格差の拡大が問題になっていますが、大田区としてすべきは何だと考えますか。
●地方分権だからと引き上げた特別区民税や特別区交付金は、優先課題である保育に使われず、土地購入、インフラ整備、イベントなど、優先順位の低いこと、本来民間が自己資金で行わなければならない分野に投入されてきましたが、保育の拡充こそが都市部の基礎自治体が行うべき最優先課題です。
⑦もういちど繰り返し、質問します。地方分権で、「生活重視政策」への転換はできましたか。地方分権どころか、中央主権、いえ、企業主権になってはいませんか。
●しかも、地方分権で、営利企業が社会保障を提供した結果、税金が株主配当や内部留保、土地など利益や資産に流れ、同時に低賃金労働者を産み出したため、税金を使えばさらに低賃金労働者を産み出すと言う悪循環に陥っています。
その結果が格差の拡大であり、貧困化です。格差の拡大を解消するためには、もう一度、行政の基本に立ち返ることを求め質問を終わります。