医療資源の乏しい国に推奨されているWHOのコロナ対策が、世界に誇る日本の医療のフリーアクセス・国民皆保険制度を壊す心配

この記事は、昨年11月2日に投稿していたのですが、これに類する意見を全国保健所長会が、感染症法改正案への意見として「厚生科学審議会(感染症部会)」に提出していましたので、合わせて、掲載いたします。

 

  1. 新型コロナウイルス感染症を法律上、「新型インフルエンザウイルス等感染症」に位置付
    けることで、病原性・感染性の高い、かなり恐怖を抱かせる疾患であるという概念が、一般
    市民の方々のみならず医療従事者にも誤解を蔓延らせる懸念がある。「特別な病気」とした
    イメージが広がり、診療拒否や受診控えや、地域医療体制のバランスを崩すことになりかね
    ない。

 

厚生科学審議会 (感染症部会)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

感染症法改正(案)についての意見 

be8392d929870cd132a23284503d0895.pdf (nasurie.com)

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コロナ対策について、様々点から点検していますが、ちょっと心配なことに気づきました。

ぜひ、医療関係者のご意見も伺いたいと思います。

いま、日本で行っている「ソーシャルディスタンス」という考え方ですが、WHOは、「難民や避難民のためのパンデミック・インフルエンザに対する備えと緩和」の中、医療資源の乏しい地域に推奨しているのです。

WHOの文書「Pandemic influenza prevention and mitigation in low resource communities 」をご覧ください。

 

三密を避け、人と人とが離れたほうが良いという考え方で、いま、日本のコロナ対策が進んでいますが、この間、まちの診療所の経営が厳しくなってきていると聞いています。

こうしたことが続くと、世界が誇るべき医療のフリーアクセスと国民皆保険を実現している日本の医療制度が壊れ、医療のアクセスは、格段に、壊滅的に悪化するのではないかと心配しています。

日本のように、医療資源が豊富で、医療保険制度も整っている国は、重症化したときの体制を整えることが重要なのではないでしょうか。

今のような毎日が続けば、医療機関の経営への影響だけでなく、日本の医療保険体制にも影響するのではないかと心配です。

最悪、アメリカをはじめとした民間医療関係会社(医薬、保険、株式会社病院、、)などが、そこに参入してくる心配もあります。

 

Pandemic influenza prevention and mitigation
               
in low resource communities

 

https://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/low_resource_measures/en/

 

世界保健機関(WHO)

 

低リソース・コミュニティー(医療資源の乏しいコミュニティ)におけるパンデミック・インフルエンザの予防と緩和

 

以下はWHO(世界保健機関)の文書、「難民や避難民のためのパンデミック・インフルエンザに対する備えと緩和:人道支援組織用のWHOガイドライン 2008年第2版」から抜粋した要約ガイダンス。

 

基本方針

1 個人やコミュニティーによる公衆衛生対策、すなわちソーシャルディスタンス、咳エチケット、手洗い、室内の換気などは、パンデミック・インフルエンザによる疾患(罹患)を減らす、または遅らせるための現時点で最も適切な対策である。

 

2 症状が軽度の場合、患者は自宅で、指定された介護者による支持療法の提供を受け、症状が悪化、または危険な兆候が現れた時のみ、医療機関にかかる。患者は咳エチケット、衛生対策を徹底した上で、健常者から分離されるべきである。

 

3 医療環境においては、死亡および更なる罹患を減らすための最も有効な対策に労力を集中させるため、トリアージのシステム、患者の分離、暴露の危険に準じた抗ウイルス薬と個人防護具(PPE)使用の優先順位、および患者の管理を整備する必要がある。

 

1 個人およびコミュニティーのための主な予防対策

 

ソーシャルディスタンス(他人との距離を少なくとも腕1本ぶん空ける、人との会合を最小限にとどめる)、咳エチケット(咳およびクシャミの時、口や鼻を覆う)、手洗い、室内の換気は、最も有効な公衆衛生対策であると考えられ、これらを強く推奨する。

 

コミュニティー内でパンデミック・インフルエンザの感染が広がった場合は、エビデンスとこれまでの事例から見て、患者の隔離や、濃厚接触者の行動制限の方策は、(既に感染拡大初期にコミュニティー内で患者らが発見された後に実行してもonce the first patients have already been detected in a community)効果がない可能性がある上、限られた医療リソースの有効な使い方とはならず、社会的な混乱を引き起こす。

患者は可能な限り、(適切な自宅でのケアの仕方を、あらかじめ指導されている)指定された介護者によるケアを自宅で受け、医療崩壊を招かないよう、症状が悪化、または危険な兆候が現れた時以外は、医療機関を訪れないことを推奨される(下記のガイダンスノート参照)。支持療法として必要なのは床上安静、水分補給、解熱剤、処方された場合は抗生物質、それに十分な栄養など。

 

WHOはマスクについては、感染している可能性がある人々にさらされる頻度、および近距離での接触などのリスクに基づいて使用することを推奨する。医療およびその他のエッセンシャル・スタッフによるマスクの使用、それに自宅療養の推奨については、下記の2と3で説明する。人が大勢いる場でのマスクの常時使用は許容されるべきだが、疾病の予防に多大な影響を及ぼすことは期待できない。

 

2 患者の管理

 

  • 患者管理の目的は、支援ヘルスケアを提供することで死者を減らし、感染を最小限に抑えること。
  • パンデミックの最中はリソースが限られていることを考慮に入れ、利用できる診療のキャパシティーの影響を最大限に生かすため、治療に当たっては患者をトリアージする必要がある。
  • 必要不可欠な診療は継続し、不急で、必要不可欠とはいえない診療は、一時的に中止とする。
  • 患者は、ほとんどの場合、医療機関もしくは自宅のどちらかの環境で管理される。

 

医療機関における患者の管理

 

  • 入院の基準は空きベッド数によって変わるかもしれないが、治療によって症状が改善されるであろう重症患者のためにベッドを確保しておくこと。
  • 外来に来た軽症患者については、入院しない場合は、可能ならば介護者、できれば家族の誰かが自宅でケアするのが望ましい。
  • 医療機関は、支持療法を伴う治療の需要が非常に高くなることを見込んで、それに応じた計画を立てること。現時点での見積もりでは、医療機関は、病気になった患者の最大10%が入院治療を必要とすることを見込んでおくべきである。すなわち人口が1万人の場合、2~3カ月の間、インフルエンザだけで500から600人、または1日約6~10人が入院治療を必要とすることを意味する。これらの数字は、見込み数を計算するための平均値である。パンデミックの最中、週ごとの患者数は一定しないであろうことに留意すること。患者数は週ごとに増加し、パンデミックの真ん中(4週から8週)でピークに達し、その後、減っていく。
  •  

やるべきこと:

  • 外来および入院病棟の両方で、呼吸器症状の患者と、他の症状の患者を分ける。
  • 病床の確保と退院の基準決定(診療のキャパシティーにより変わる可能性あり)。
  • 症例管理の手順を決めておく。
  • 転院が可能な場合、その手順を決めておく(移動の間、感染を適切にコントロールすることを含む)。
  • パンデミック・インフルエンザの疑いで入院した患者は、他の患者とは別個の呼吸器科病棟に分離する。
  • スペースが限られている場合、入院病棟内のベッドの間隔をできる限り離し、それぞれの患者の頭の位置を互い違いにする。
  • 外来と入院エリアの換気の徹底。
  • 標準的および飛沫予防策の厳守。
  • 暴露のリスクに準じて個人防護具を使用。

 

低リソース環境での入院患者の治療は下記を含む:

  • 点滴または経口補水液による脱水症の治療。
  • 鼻カニューレよりは、(可能なら)酸素マスクによる酸素補充療法。
  • 二次的細菌感染用の(経口または非経口)抗生物質。
  • 痛みと発熱用の、アスピリンを含まない解熱剤。
  • 必要に応じて栄養補給。

 

注:HIV感染者の場合、日和見肺炎なのか、パンデミック・インフルエンザによる二次性肺炎なのかを区別するのは難しい場合がある。

 

抗ウイルス薬は、患者の治療に使われた場合、排出されるウイルスの持続時間と病気の重症度を軽減し、予防のために使われた場合、病気を防ぐ可能性がある。数に限りがある場合は国の基準に従い、優先順位を決めて使用すべきである。

 

抗ウイルス薬使用の一般的な優先順位は下記のとおり:

  • 感染した医療関係者、およびエッセンシャル・スタッフの治療。
  • コミュニティー内の感染者の治療。
  • 無防備な状態で、暴露のリスクが高いエッセンシャル・スタッフに対する、暴露後の予防。
  • 暴露のリスクが高いことが予想される、必要不可欠なスタッフのための暴露前の予防。

自宅における患者の管理

  • パンデミックの最中は、医療機関を訪れる患者の多くが、自宅療養を余儀なくされる。医療機関における人々のコントロール、および患者とその介護者の不安に対処するため、信頼できるコミュニティーのリーダーを、あらかじめ任命しておく必要がある。
  • 深刻な症状やインフルエンザの兆候を示していない病人は(健康に関する公共メッセージを通して)自宅にとどまることを奨励され、咳エチケット(咳やクシャミの時は口や鼻を布などで覆う、または袖で覆う)に手洗いを実行し、他人との濃厚接触(約1メートル以内)をできる限り避ける。
  • 難民や避難民が滞在する混み合った環境では、病人の自宅療養は実行が難しい場合がある。(Home confinement of ill people in crowded refugee/IDP settings may not be practicable.)しかし他者との接触をできる限り避けることが奨励される。
  • 家庭内での病人の適切な管理は、暴露の可能性を減らすため、1人の介護者によって行われることが望ましい。
  • 患者と介護者は、患者が感染している間は、入手可能であれば使い捨てのマスクを着用する。マスクの数が限られている場合、自宅では介護者よりも患者がマスクを着用することが重要である。マスクを一日中、着用する必要はなく、介護者やその他の者との濃厚接触(約1メートル以内)が予想される時のみ着用すればよい。分泌物で濡れたマスクは、安全に廃棄すること。マスクが入手できない時は、口と鼻をスカーフできっちり覆う、または再利用可能な布マスクを使用するのでもよい。濡れた場合は取り替えて、石鹸と水で洗う。
  • マスクが十分にある場合、患者と濃厚接触する時は、介護者も口と鼻を覆うためにマスクを使うこと。
  • 介護者は患者と接触した後、必ず手を洗うこと。
  • 介護者に対して、解熱剤(小児がアセチルサリチル酸を服用するのは避ける)の使用、経口輸液、栄養、床上安静について、一般的なサポートとアドバイスを与える。
  • 処方された場合は、インフルエンザの細菌性合併症のために(必要なら)抗生物質を使用することついて、指示を提供する。
  • 悪化した場合、(キャパシティーがあるなら)更なるケアが指示される(例:重症疾患や脱水の症状がある場合。下記のガイダンスノート参照)。
  • 回復した患者は、もはや感染力がなく、免疫がついたと考えてよい(通常は発病してから2~3週間後)。
  • 適切な咳エチケットと手洗いは、家庭内の全員の実行が奨励される。
  • 窓を開けたままにして、部屋やテントの換気をする。
  • 家庭内にある物を定期的に石鹸と水、または消毒薬できれいにする。

 

 

ガイダンスノート

どんな時に医療機関にかかるか

 

  • インフルエンザ患者の大半は、上に述べた簡単な支持療法を用いて、自宅でケアすることができる。
  • しかしながら、もし悪化あるいは深刻な症状が現れた時は、医療機関にかかることが必要となる場合がある。
  • 深刻な症状とは、弱る/立てなくなる、嗜眠、意識不明、けいれん、呼吸困難、息切れ、液体が飲めなくなる、脱水症状、高熱などを指す。
  • 地域ごとの事情に従った指示が提供されることが重要。

 

3 スタッフの保護

 

医療環境における感染の機会を減らすためには、標準的な予防策(血液及び体液に直接、無防備なまま暴露することを避けるための基本的な手段)および飛沫予防策(呼吸器症状のある患者に接近する時、医療用マスクを着用)を徹底することが不可欠である。抗生物質、個人用防護具、抗ウイルス薬、(入手できるなら)ワクチンの調達(および備蓄)を、それらの使用基準および優先順位と共に検討する。

 

 優先されるのは患者と直接、臨床的に接触する者、および感染の可能性がある人々との濃厚接触が予想される、エッセンシャルな機能を維持することが求められるスタッフなど。

 

 感染源のコントロール(例:病人など)は、感染の機会を防ぐために必要不可欠である。患者は咳やクシャミの時はティッシュや布、または袖で口や鼻を覆い、頻繁に手を洗うことを常に奨励される。

 

マスク

 

暴露の危険が最も高い人たちを保護するためは、マスクの使用が最優先の手段となるべきである。マスクは特に気候が暑い時は、その着用が不快になる可能性があるので、常に着用する必要はない。マスクを優先的に着用すべきなのは、病気の患者と濃厚接触(約1メートル以内)する医療関係者、介護者、その他のエッセンシャル・スタッフ。

 

 

抗生物質と抗ウイルス薬

 

抗生物質:全スタッフ、およびその同居人の少なくとも5~10%分の、二次的細菌性肺炎を治療するのに十分な抗生物質の備蓄が検討されるべきである。

抗ウイルス薬:医療機関は、それが可能で量が確保できるなら、病気のスタッフの治療、およびエッセンシャル・スタッフの暴露後予防を提供するのに十分なオセルタミビルを備蓄しておくべきである。

 

自己管理

 

医療スタッフは毎日2回、体温を測ること。発熱したら報告し、自宅で療養する。具合が悪くなった時は、自宅において介護者によって、抗ウイルス薬による治療と、他の患者たちと同じく支持療法が提供されるべきである。

Pandemic influenza prevention and mitigation
               
in low resource communities

 

https://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/low_resource_measures/en/

三密を避け、人と人とが離れたほうが良いという考え方で、いま、日本のコロナ対策が進んでいますが、この間、まちの診療所の経営が厳しくなってきていると聞いています。

こうしたことが続くと、世界が誇るべき医療のフリーアクセスと国民皆保険を実現している日本の医療制度が壊れ、医療のアクセスは、格段に、壊滅的に悪化するのではないかと心配しています。

日本のように、医療資源が豊富で、医療保険制度も整っている国は、重症化したときの体制を整えることが重要なのではないでしょうか。

今のような毎日が続けば、医療機関の経営への影響だけでなく、日本の医療保険体制にも影響するのではないかと心配です。

最悪、アメリカをはじめとした民間医療関係会社(医薬、保険、株式会社病院、、)などが、そこに参入してくる心配もあります。

 

 

Pandemic influenza prevention and mitigation in low resource communities

Summary guidance derived from “Pandemic influenza preparedness and mitigation in refugee and displaced populations: WHO guidelines for humanitarian agencies

 

Authors:
WHO

Publication details

Publication date: 2 May 2009

 

 

Key principles

Public health measures taken by individuals and communities, such as social distancing, respiratory etiquette, hand hygiene, and household ventilation, are at present the most feasible measures available to reduce or delay disease (morbidity) caused by pandemic influenza.

In the case of mild illness, patients should be provided with supportive care at home by a designated caregiver and only referred to health care facilities if they deteriorate or develop danger signs. Separation of sick from well individuals, with rigorous respiratory etiquette and hygiene measures should be practised.

In health-care settings, a system of triage, patient separation, prioritization of use of antiviral medicines and personal protective equipment (PPE) according to risk of exposure, and patient management should be in place to focus efforts on the most effective interventions to reduce mortality and any further morbidity.