大田区議会第二回定例会質問【がれき総量大幅減少に伴う広域処理量見直しにおける大田区の判断について
大田区議会第二回定例会において、「がれき総量大幅減少に伴う広域処理量見直しにおける大田区の判断について」質問しました。
答弁は、正確を記すため、議事録ができてからご報告いたします。
大田・生活者ネットワーク奈須りえです。
災害廃棄物処理の問題は、当初の、受け入れについて、特に放射能の問題から不安視する声を「NIBY」として復興との対立軸とする図式から徐々に論調が変わり始めました。
5月21日の新潟県泉田知事の環境省への再質問で、これまで私が明らかにしてきた論点がほぼ出そろった感があります。
なぜ広域処理をしなければならないのかという理由は、「絆」や「支えあい」といった漠然とした必要性だけでは不十分で、明確な必要性を環境省が用意しなければならなくなっています。
こうした論調の変化に歩調を合わせるように、宮城県、岩手県の災害廃棄物総量の見直しとそれに伴う広域処理量の見直しが公表されました。
その結果、宮城・岩手県の広域処理量は400万tから250万トンに4割減りました。岩手県だけでみると増えていま すが、これは、佐竹知事が「土などが主で、広域処理は難しい」と話しているため便宜上広域処理に含めているだけでその分を考慮すれば、広域分は当初の7割 減となります。
そこで、がれき総量の見直し後の広域処理について区長のお考えをうかがいたいと思います。
広域処理分は可燃物が大半を占めますので、可燃物について取り上げます。
お手もとの資料も参考にしてください。
見直し後の宮城県の焼却処理量は203.4万t。仙台市がそのうち10万tを引き受けることになりましたので、193.4万tを現地どこまで処理できるのかがポイントになります。
現在、宮城県には、26基の仮設焼却炉が建設されていて、7月にはすべて稼働します。そ の処理能力は、180万tになります。ところが、この計算は、年間稼働日数が300日。193.4万tを処理するには、現在の年間300日稼働を320日 にすればよいということです。たとえば今回宮城県の可燃物を10万t受け入れることにした仙台市の稼働日数は340日です。仙台市並みに稼働させればさら に現地処理量を増やせます。
ところが、今回、出された焼却量は県内処理の稼働日数を300日から275日に減らしています。再生利用量も490トンから332万トンに約160万トンと極端に減らし、広域処理をねん出しているのが今回の見直しです。
岩手県分も同様です。また、最終処分場も宮城県内で確保できます。私のHPやお手元の資料も参考にしてください。
これらの検証から、東京まで持ってこなくても、現地で処理できることは明らかで、広域処 理は輸送コストの無駄を招くだけです。先日試験焼却を行い市民との間で大混乱を招いた北九州市の試験焼却の輸送コストは、1tあたり17万円を超えると言 われています。この状況で受け入れを続ければ、地方自治の原則「最小の費用で最大の効果」から大きく外れます。
そこでうかがいます。
こうした、処理量の変化に伴いがれき広域処理の必要性が無くなった今後もがれき受けいれを区長として決定し、受け入れるのでしょうか。
がれきの広域処理はすでに不要になっているのですから、その旨を環境省、東京都、23区一部事務組合、環境整備公社、宮城県、宮古市、女川町、石巻市など関係機関に示し区長として広域処理をやめるべきであると発言すべきと考えますがいかがでしょうか。
一方で、今回の処理について、これほどに議論が持ち上がり、その後問題点が指摘されてきた大きな理由のひとつが、基礎的自治体の自治事務である清掃事務に国の関与を認めた特措法の存在でしょう。
しかし、丹念に点検すること、この広域処理が、特措法を根拠にしているのでは無いことがわかります。被災自治体から宮城県・岩手県への清掃事務の委託は地方自治法252条14項の規定を根拠に双方で議決を行っています。
東京都では都知事が受け入れると発言したものの被災地の自治事務を受託することについての議会の関与は一切ありません。唯一あったのは、都議会での東京都環境整備公社への貸付金の補正予算の議決だけです。
都知事の英断と言われていますが、これまで説明されてきたがれき受け入れスキームの中の東京都の役割は、法的拘束力の無い協定書による「協力」であり、法的裏付けは、全くありません。
埋め立て処分場は持っているものの、焼却施設も破砕施設も分別施設も無い東京都が、他公共団体である一組だのみ、民間事業者だのみで了承も得られない中で受け入れを宣言すること自体、地方自治制度上あってはならない無責任な発言です。
であるにも関わらず東京都は、処理委託を受けた民間事業者である公社のために、民間事業 者選定という「事務」を行ったり、公社から再委託された一組のために、説明会を開催するという「事務」を行ったり、排出元である女川町まで職員を派遣して 受け入れに関わる調整という「事務」などを法的根拠無く行っていることになります。
しかも、一組は、民間事業者から受託していますが、公共団体という位置づけから、民間の仕事の受託はありえず、仮に必要だったとしても規約に関わる重大事項であり、一管理者の決断で決められるものではありません。
一組の議決が必要か否かの質問に、大田区は清掃一組に確認した「一組の条例に無いから」という回答を答弁としましたが、条例が規定していなければ自治法に従うのが当然です。
私は、今回の東京で行っている広域処理に伴う被災地がれき受け入れは法令に抵触している可能性が極めて高いと考えています。
議決とは、単なる手続きではなく、税金の使い道の正当性を主権者がチェックする手段です。議決をせずに受け入れていることが、本来、市民の代表が行うべきチェックをすり抜ける結果になっているとは言えないでしょうか。
区長は、大田区内の産廃事業者の受け入れを岩手県からの通知文を受けることで了承しています。また、区長会の一員として、一組の意思決定に大きく関与しています。
大田区は、地方自治法、廃棄物処理法など関連法全てを点検し、法令に従ていることを確認した上で通知文受け入れ、一組焼却了承をしているのでしょうか。
ここにきて、女川町の廃棄物は宮城県が受託したのではなく東京都に直接委託しているというこれまでの説明と全く異なった解釈を出し始めているようです。きちんとした法的根拠に基づいたスキームの説明もできず、法令遵守と言えるでしょうか。
大田区の法令解釈への認識についておこたえください。