「東京都の再開発の方針」と「一極集中」と「都市マス」と私たちが一生懸命働いても豊かにならない関係

再開発は、ある区画の容積率をアップして、増えた床面積から生まれた建物を売ったお金で建設費など負担して、地権者が無料で建物を建て替えられる仕組みです。

多くの場合、複数の地権者がいて、地権者間で合意形成をして、地権者は無料で建物を建て替えられ、事業協力者というデベロッパーは、土地を買わずに利益を得られます。

地権者は、土地に見合った価値分の区分所有権を無料で得ることが出来、タダで古くなった建物を建て替えられて良い仕組みのように見えますが、土地という固定資産の所有割合が減り(新たに住宅やオフィス部分を売却すると)、建物という減価償却する資産に変わってしまいます。
そのうえ、建て替え前は全ての地権者が接道を確保していましたが、ビルの中の一等地は限られていて、良い場所をもらえるとは限らず、しかも、居住用だと、新たに莫大な管理費などを負担しなければなりません。

一方、デべロッパーは、建設費補助、利子補給、減税・免税措置を受け、私から見るとリスクなく確実に莫大な事業利益を得られる仕組みです。
六本木ヒルズやミッドタウンやヒカリエ、丸ビル、新丸ビル、最近だと渋谷のスクランブルスクエアなど、東京に次々と超高層ビルが並ぶのは、このしくみを使っているからで、事業者の自己責任でお金を借りるなど自己責任で投資をしているわけではありません。中には、区画全部が一つの地権者の場合もあります。

いま、私たちが使わなければならない税金・制度は、再開発ではなく、個人事業主や中小企業がささえる地域内循環経済のためであり、再開発による投資利益に税金を使い、高層集合住宅でコミュニティを分断すべきでは無いと思います。

しかも、影響は国民だけでなく、国税も投入されますし、東京一極集中で相対的に地方が疲弊していきます。

速やかに事業者の利益のための再開発はやめるべきです。

この再開発の今後の方針が改定案されるというので、東京都の公聴会で意見を申し述べてきました。

都市マス同様、再開発の方針がの問題と私たちの暮らしにどうかかわるのかについて、ぜひ知ってください。

以下、再開発の方針への意見


 

「都市再開発の方針(原案)」について、、反対の立場から意見を申し述べさせていただきます。

都市再開発法は、その目的を「都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与すること」として定められている法律です。

23区はすべて、再開発が必要な市街地

この都市再開発法の施行令で、23区は、おおむね区部全域が「計画的な再開発が必要な市街地」として1号市街地に位置づけられています。

また、23区では「1号市街地のうち、特に再開発を促進すべき再開発促進地区」として、これまで、344 地区 14,385haが位置づけられていましたが、今回の「再開発の方針」では、316地区になっています。

多摩部では、1号市街地に指定されていない区域もあり、2号の再開発促進地区に指定されている地区も48地区と前回とかわりません。

23区で、再開発促進地区は、344地区から316地区に減っているものの、いかに、23区で集中的に再開発を行おうとしているかがわかります。

中でも23区の1/4近くが、再開発を促進すべき地域に指定

今回、あらためて、都市再開発法をみて、法律の成立が昭和44年であったこと、

再開発の目的が、「都市における土地の高度利用と都市機能の更新により公共の福祉に寄与すること」で、

23区全域が計画的な再開発が必要な市街地だということ、

また、23区の1/4近い面積が再開発促進地区指定されていたことに驚かされました。

 

昭和44年にできた法律で、密集している23区の都心部をさらに密集させる計画

都市における土地高度利用は、もう十分に行われているものだと思っていたのに、さらに高度利用するための法律を使い、方針を定めているからです。

 

防災が必要と言いながら密集させて危険な街をつくる

そして、この再開発で既に23区は人口密度で㎢あたり約1万5,000人と非常に過密な状況であるにもかかわらず、新しい住宅の供給をするために容積率を緩和し莫大な税金を投入して再開発を促進させさらに密集させようとしています。

都市マスで防災に取り組むとしながら、一方で高度化で都心部を密集させ、防災的に危険な街を作っています。

空き家に悩まされているのに、さらに空き家をつくる

空き家に悩まされているのに、都心に新たな住宅を作り、周辺からの転入で空き家の問題はさらに深刻になります。

矛盾したことを行っているのです。

人口減少でも周辺人口を転入させて無理やり一極集中

今回、同時に改定しようとしている「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)」では、環七より内側を中枢広域拠点域として集中するエリアを狭めて、人口が減ってきているのに、無理やり、23区域の更に少し内側で東京一極集中を続けようとしているように見えます。

一極集中で都民は利益を得ないのに、コロナ後も更に一極集中

一興集中でヒトモノカネを都心に集めても、集まった財源は再開発と都市マスで都市施設につかわれ、都市はいつも社会保障サービスが足りず都民に良いことはありません。コロナで三密を避ける、リモートワークで、自宅で仕事をする、自宅で学習をすると言われていますが、再開発の効果は、一人当たりの居住空間の増加でも、街の空間の増加でも、豊かな緑でもなく、

・民間の建築活動を再開発へ誘導させることで

・そのための早期の住民の合意形成を図ることで

・事業者が税制の優遇や、減税をうけ

・容積率割り増しの対象になり

・自治体は、用地買い付けの貸し付けが認められ、

これらは、どれも、再開発そのものが目的で、

制度による、再開発への経済的なインセンティブは見えますが、私たちが、どう働き、どう暮らし、それによって、どの程度の収入と時間的空間的ゆとりと、自然や人との触れ合いを確保した暮らしができて、都心部がどう良くなるのか、

都市づくりのグランドデザインでも未来の東京戦略ビジョンでも都市マスでも、美しい言葉は並びますが、一向に見えてきません。

事業者という投資家の利益のために、都民の税金が使われ、財産が奪われ、社会保障が減る再開発

再開発で、ひたすら、街を更地にして、建物は建替えられますが、暮らしていた人は働き住み続けることができず、莫大な税金を投入して、事業者は利益を得ても、都民全体の暮らしの底上げにはなりません。

一体誰のための再開発でしょう。

都民の視点で見れば、

1、       再開発や区画整理事業には莫大な税金が使われるので、暮らしを支える住民福祉に財源をまわせなくなります。

2、       地権者にとっては、一見無料で建物を立て替えられるので、良い話に見えますが、土地の容積率を上げてその一部と建物を等価交換しているだけなので、土地の権利という財産権が失われ、土地という固定資産が、建物という償却資産にかわってしまいます。

区画整理事業は、土地の価値が上がると言う理屈で土地の面積を減歩しますからやはり資産が減ります。

地域によっては、戸建てと集合住宅との権利変換も始まっているときいています。

 

3、       一方で、事業者は、市街地再開発でも、区画整理事業でも、土地を購入するなどのリスクをとらずに、再開発事業なら保留床、区画整理事業なら保留地、を売却することで、建物の建築費や土地の整備などの事業費に充て利益を確保することができます。

4、       そのうえ、調査設計計画費、土地整備費、共同施設整備費など、再開発ビルの整備に要する費用の補助を受けられ、総合特区や国家戦略特区のしくみを使って利子補給や減税措置を受けられる事業もあります。

5、       再開発の場合、一般に困難な用地の確保は、行政が都市マスや再開発の方針で線引きして決めてくれますし、住民との合意形成もコンサルが入り、補助金まで出て行政が仲立ちしますから、事業者は極めて低いリスクで高い収益を上げることが出来ると思います。

 

そもそも、企業利益のために再開発法ができた疑い

そこでもう一度再開発法ができた昭和44年1969年という時期を考えると、1955年頃から1973年頃までと言われている高度経済成長期も終盤に近づいてきていた時だということがわかります。

再開発法そのものが、行政という公のまちづくりから、企業にまちづくりで利益をあげさせる仕組みへの転換のための法整備だったのではないかという事です。これは、海外の開発のしくみと比べると、日本の再開発が、事業者利益を優先していることからもわかります。記号利益のために憲法が保障する財産権を侵害して良いでしょうか。

海外に比べ、事業者優遇の日本の開発

日本の再開発では、子育て世代の人口が一気に増え、保育園や小学校の需要が急激に増えることがあります。日本の再開発が、事業者に道路や公園や保育園や学校など、必要な都市施設の整備を義務づけていないからです。

今回の都市再開発でも、公共施設は公共が行うと書き込まれていますが、たとえば、オランダのまちづくりは、区画を決めると、事業者にプランを出させてコンペを行い、決まった事業者は、開発した住宅を売却し、その売り上げで道路や公園や学校や保育園の整備まで行っていました。住民に買ってもらえる「値段と質」を確保したまちづくりを事業者のリスクで行うのがオランダ式のまちづくりでした。

日本のこの再開発のように、行政が手取り足取り、合意形成にまで関与し、そのうえ、補助金で建設費から金利リスクまで負担する事業のどこが民間活力の活用でしょうか。

すでに、住宅の数も足りている中で、行われている再開発や区画整理事業は、地権者や行政の土地の権利を借りて、事業者に莫大な利益をもたらす事業者のための事業になっていて時代のニーズに逆行した事業者利益のための事業です。

事業者に有利な利益確保の仕組みが、スーパーシティの合意形成省略で投資家の思うがままに

その合意形成さえ時間がかかり非効率的だとして、国家戦略特区のしくみでは、合意形成が簡素化されていますし、国家戦略特区を改正して可能になったスーパーシティでは、内閣総理大臣が事業を認定すると、国会や地方議会の議決を待たず、官僚のチェックもすり抜けて、提案した事業者に行政情報を見ることを許すなど、さらに意思決定が簡素化しています。

税金はいくら使った?効果はどれだけあった?検証もしない(できない?)再開発

しかも、今回の公聴会に際し、2014年に策定した都市再開発の方針の結果、どれだけの税金を使い、どういった効果があったのか、示していただきたくて、東京都に確認しましたが、東京都は、そういった検証はしていないと答えました。国も、国家戦略特区で、再開発に対する減税や利子補給などの優遇措置があるため、同様い問い合わせましたが、わからないと言っています。

そんなことが、本当にあるのでしょうか。

これだけ莫大な税金を投入しながら、その効果も検証せず、私たちの税金は、東京都の税金に限らず、国、区市町村含め、ひたすら、事業者の利益のために使われているのです。

国や東京都のコロナの対策の誤りで、いま、中小企業や商店、診療所はじめ個人事業主といった日本の中流と呼ばれるどちらかと言えば高額所得者層が廃業の危機にさらされていますから、今後税収も大幅に減るのではないかと心配です。このまま再開発を続ければ、莫大な税負担で増税も免れないと思います。

いま、私たちが使わなければならない税金は、再開発ではなく、こうした個人事業主や中小企業がささえる地域内循環経済のためであり、再開発による投資利益に税金を使い、高層集合住宅でコミュニティを分断すべきでは無いと思います。

速やかに事業者の利益のための再開発はやめるべきです。