今日も私たちの身の回りで起きている建物解体で、アスベストを飛散させないために
リスクコミュニケーションという言葉があります。
互いの疑問を解決するための十分な情報交換をすることが、リスク回避において重要であるという風に理解しています。
アスベスト除去工事や解体、建築におけるお知らせ看板の設置も、本来、法令で設置が義務付けられているのは、安全性や生活環境のためで、法律で決められている「設置」すれよい、というものでは無いと思います。
残念ながら、最近の工事では、この趣旨を理解していない事業者が増えていて、法律に書かれている以上のことはしないと言われた、という声も耳にします。
大田区が、特にアスベスト除去工事において事業者に甘いという風評?からからかもしれませんが、最近は違ってきていますし、経済利益最優先の日本の仕組みが、巡り巡って行政と事業者との力関係を変えつつあるという側面もあると思います。
誰もが知っているような企業が、お金を払ってくれる顧客には良い顔をするのに、顧客の依頼で利益を上げるためにかかる余計な手間やお金などは、できるだけ省こうと言う姿勢が見えたりすると、非常にがっかりします。
今日は、大田区の閑静な住宅街で行われている解体工事でも、アスベスト対策に疑問がある事例について。
アスベストの使われている建物は、意外と多くて、飛散性アスベストは使われていなくても屋根やボードには、成型版というアスベストが塗り込まれている建材が使用されていることがあります。
飛散性アスベストは、密閉して負圧にして、外にアスベストが飛散しないよう、厳重な除去工事が必要ですが、成型版と呼ばれるレベル3のアスベストも、実は、古くなればボロボロと欠けて飛散したり、壊して割れて飛散してしまうことがあります。
そのため、水などで十分ぬらしてから、手で壊すのが原則です。
アスベストの使われている建物だと、最初に、アスベストを除去してから、解体に入ります。
最近では、重機でガラガラと壊してしまう現場をご覧になるように、周辺を簡易なシートで被ったら、一気に壊す解体現場が増えています。
アスベストを除去しないまま壊すと、粉塵と一緒にアスベストも飛散させてしまうことになります。
アスベストの使用されている建物解体の問題は、
アスベストが使われている建物が多く、十分な除去をせず壊れていることがあるが知らない方が多い、ことから始まります。
しかも、アスベスト除去は手間をかけることになりますから、お金もかかるので、利益を上げたい業者がいい加減な工事をして、コストを省こうとする可能性がありますし、施主が解体費を節約して発注費用を抑えるので、さらにいい加減な工事になってしまうこともあります。
今回の閑静な住宅地で行われようとしているアスベスト除去工事の問題は、
①業者がアスベスト除去について求められても十分な説明をしない
②アスベストの有無や場所や除去方法が二転三転する
③アスベストの知識が十分でないと思われる担当者が説明に来る
といった、そもそものところに問題があり、安全な工事が行われることに不安を覚えています。
アスベストの法令は、住民には理解しにくいもののため、あいまいな説明を受けても、その場で問題点を指摘することも簡単ではなく、業者に押し切られてしまいがちです。
今回のケースは、誰もが名前を知っている業者で、きっと工事はちゃんと粉われるのだと思いますが、それでも、解体の際の粉じん・防音対策のためのシートの開口部が、隣の家に接する部分に向いていたりするなど、工事の効率性が優先され、安全や環境対策が二の次になっている、と感じます。
そのうえ、大田区が要綱で定めている、アスベストが含まれている下地材(塗料)のつかわれている外壁の撤去も、最初は湿潤してから集じん式カッターや真空掃除機を使用すると言っていたのが、大幅に変わっているなど、住民の心配が大きくなるばかりです。
大田区も、誠実に区民に向き合って、粘り強く、事業者に疑問点を解明するために説明を求めています。
会社の利益のためにと言って、仮にいい加減な工事をしてしまえば、巡り巡って、働いている社員や現場作業員など、誰もがアスベストや粉じんのリスクにさらされることになります。
会社の利益は、社員の利益ではなく、株主の利益です。仕事がなければ給料は払われないというのは、その通りですが、株主の利益のために働くことと、給料が確保されることは、完全に一致するわけではありません。
特に、最近は、人件費含めたコストを下げて、投資家利益を大きくするための制度変更が主流になっています。
身の回りのこうした工事の一つ一つに、行政がどこまで区民に寄り添えるのか、が、安全な工事につながると思います。
お金を払ってくれる施主の方ばかりを向いて、アスベストが目に見えないことを良いことに、その周りに住む人のことはどうでもいいと言った姿勢の業者がいるとするなら、許されないと思います。