耐震強度は満たしているのに、棚から物が落ちないため24億円かけて区役所補修
蒲田の区役所を24億円かけて「物が落ちないために改修工事」する契約議案の議決を求められました。
耐震強度は満たしているのに、他にもっと耐震強度の低い施設があるのに、24億円も税金を投入するのは、優先順位が違うと考え、議員49人中、ただ一人でしたが、異を唱えました。
以下、その理由です。
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第34号議案大田区役所本庁舎耐震性向上改修工事請負契約について反対の立場から討論いたします。
この議案は、区役所本庁舎の耐震性向上させるため、24億円を上限に受託事業者募集を行いプロポーザルによって選定された事業者と調査の結果出された耐震補強工事、非構造部材耐震化工事、建築設備耐震化工事など一式を24億3388万円で随意契約するための議案です。
大田区は、耐震強度が足りないのではなく、11階を中心により大きく揺れ、天井や物が落下するので、その揺れを和らげ、物が落ちてこないようにするための工事を行うとしています。
現在の区役所は平成8年に大田区が買い取りました。移転が平成10年。新耐震基準になってからの建物です。
区役所購入の際の、平成7年12月11日の議事録には「万一、阪神の大地震のような震災の場合、区民の生命、財産を守るべき行政が、庁舎が破壊されたために救援本部も設置できず、その使命を果たし得ないなどといった事態になったら、それこそ一体誰がその責任をとるのだということであります。この点で、KBKビル、(今の区役所のことですが、)ここは耐震性において現行法を完全にクリアしているだけでなく、その最上階に大きなスイミングプールを設置できる設計で、その重度に耐えるように、この建物の基礎は建築基準法が求める強度の2倍の強度で建築されているとのことであり、一旦緩急の際は、対策本部として、全ての区民の救援のために、現庁舎よりはるかにすぐれていると考えます。」という発言もあり、現区役所は単に耐震強度においてすぐれているだけでなく、2倍強いから中央から移転すべきと主張して移転が決まったことがわかります。
区役所移転の一つのメリットが、この本庁舎の耐震強度だったわけです。莫大な金をかけて旧区役所の耐震性を高める金があるなら、それを他の区民施設に回すべきだという発言も見られました。
こうした議論を経て区役所移転の合意をとりながら、なぜ本庁舎より耐震性の低い区民施設に優先して本庁舎の耐震性向上工事なのでしょうか。区役所移転の議会の議論は区民との約束であり、安易に覆すべきではありません。11階の揺れを防ぐと言いますが、区役所は11階建てで、高層建築でもありません。この税金投入をよしとすれば、同程度の耐震強度の建物への税投入のお墨つきになりかねず、税投入の優先順位が大幅に崩れ、財政規律が乱れます。
しかも、大田区が耐震安全性目標設定として掲げた構造体Ⅰ、非構造体部材A、建築設備甲という評価のもとになる「国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準」は、区役所移転の前の平成6年に告示されています。この基準が本庁の耐震強度であれば、なぜ区役所移転当時の議論の中で情報提供され、補強工事を行わなかったのでしょうか。20年前の資料をもって今回の耐震工事をよしとしながら、あたかも東日本大震災で必要になったとでもいうような大田区の情報提供のあり方は問題です。
大田区は老朽化した公共施設の更新という大きな課題を抱えています。
私たちはどのくらいの安全性、利便性、快適性を一体どの程度の負担で担うまちをつくろうとしているのでしょうか。OTAシティマネジメントレポートの推計では、経済成長ケースでも、平成37年に区債発行残高が988億円。財政基金は445億円にまで落ち込むとしています。本庁舎のものが落ちない揺れ方にするために24億円使う余裕があるでしょうか。
しかも本庁舎のような大規模な建物にかかわるこうした大規模な工事をプロポーザルで発注すれば、ただでさえ請負業者は限られているうえ、建てた業者に有利になるなど、競争性が働かない契約になるだけでなく、区内産業育成の視点からも問題があり反対といたします。