大田区住宅リフォーム助成という政策に考える個人資産形成の問題と経済政策

今回の補正予算に、住宅リフォーム助成の助成件数の増として1500万円が計上されました。

住宅リフォーム助成で私たちが注意しなければならないのは、『個人資産の形成につながる』問題との関係です。

しかも、リフォーム助成は、ほぼ持ち家の方、それも一戸建てにお住いの方しかお使いいただくことができません。

調べたところ、307件のリフォーム助成実績中、賃貸物件にお住いの区民は5件。2%にもなりません。(うちバリアフリー改修3件、環境2件)
国会の答弁
『地方自治体におきまして住宅改修、様々な観点から、特に高齢者福祉等の観点から、それぞれ地域の実情を踏まえまして、独自の判断で住宅改修に対する補助を行われているものが多々あるということは承知しております。ただし、住宅というのが典型的な個人資産でございまして、したがいまして公費で補助を行うということは極めて慎重に検討すべき課題でございます。』
がこれをよく表していると思います。
確かに、二度の大きな震災を通じ「個人資産の形成に対し慎重だった」リフォームなどへの助成に対しハードルが下がった感がありますが、当時の片山総務大臣の言葉を借りれば
「個人の資産形成に公的資金を投入すべきではないというのは、これは財政運営上のもう基本的なルールだとこう言われるものだから、それはそうかもしれないけれども、、、、災害復旧で現場に必要とされる最優先のことを法律の範囲内でやった」
ということは確認しておくべきことではないかと思います。
リフォーム助成には個人資産の形成の部分など慎重にならなければならいということです。
大田区のリフォーム助成は平成22年11月に陳情が提出されたときに審議されていますが、その際の大田区の答弁でも
「一般的な改修を目的とする住宅リフォームの助成は、特定の個人の資産形成につながる」 「不況による影響については、建設業だけでなくさまざまな事業分野でもあるのかと思いますが、本件、すそ野産業も影響があるとはいえ、一定の範囲の業者が効果を受けることになり、疑問があると考えています。」
と答えています。
このとき委員会審議の結果は継続でしたが、私は採択を主張しています。  その時の私の委員会討論です。

「大田区のように自治体の規模が大きな大都市では、陳情者のいう経済波及効果が、もともとの需要であったのか、新たな需要喚起できたのかという検証が困難だと思うのです。(昨日も申し上げたのですけれども、)リフォームのみということではなく、大田区のまちづくりにおける課題である、耐震改修事業であったりバリアフリー化であったりあるいは省エネ、エコ住宅への改修というものと組み合わせ、そこに区内業者を使った場合についての助成という、運用において工夫をする必要があると思います。そういう形での事業展開ができればいいと思いますので、採択を主張させていただきたいと思います。」
と発言しています。

現在のリフォーム助成は、今回、事業を行っている都市整備委員会での審議からもわかるように、政策目的とリフォームがセットになっているという考え方だから行われているものです。
ここで重要なのは、大田区政の課題には、優先順位があり、バリアフリーや環境配慮などの政策目的とセットだとしても、他の政策との整合性を取る必要があるということです。
また、もう一点は、経済効果からの視点です。私は、区内の建設業などに関わる皆様の経済効果を期待するのであれば、個人資産ではなく、大田区民の財産である公共施設の維持管理をもっとていねいにやっていただくことで経済効果を期待できるのではないか と思っています。

実際、大田区の公共施設の維持管理が適正に行われているかと言えば、まったくそうなっていません。
本庁舎10階の女子トイレの雨漏りは指摘してもいまだに放置されていますし、区民センターの音楽ホールは、壁のクロスははがれてボロボロですし、控室の畳も長いこと取り替えていない様子でした。ホールの床のカーペットはめくれてつまづきそうですし、外壁はひび割れていて、塗装で間に合うのか、壁材まで補強すべきかわかりませんが、何らかの管理が必要です。

これは、区民ホールに限ったことではありません。維持管理費を切り詰めてどうしようもなくなったら全面建て替えより、適正な維持管理により、長く、気持ちよく使う。これは大田区の方針だったのではないでしょうか。であれば、こまめに維持管理することが、使う区民にも、そこで仕事をしていただく区民にもいいことなのではないでしょうか。