贈与でもらう給付金が、ベーシックインカムになる恐れ?
今回の大田区議会臨時会での補正予算は、「閣議決定」で決まった「バラマキ」的な給付が多かったと思いますが、大田区議会では、私以外全員の賛成で可決しています。
子育て世代への時短家電5万円クーポンは、家事の負担軽減につながる「食器洗い洗浄機」や「衣類乾燥除湿機」、「ロボット掃除機」など、対象の児童1人につき5万円相当の製品の給付を受けることができる事業です。
もらってうれしいかもしれませんが、果たして今、国債を発行してまで行うべき事業だったでしょうか。
子育て世帯への支援なら、高い高等教育の学費を安くするために、公立学校に税投入するとか、塾に行かなくても進学できる教育環境を保証するなど、そもそもの教育の在り方を変えるべきだと思います。
特に、気になるのが、非課税世帯などへの5万円の「贈与」です。
贈与というのは、どういう意味かというと、行政処分では無いということです。
行政からの一方的な施しのようなもので、給付を受ける私たちは、不服申し立てができません。
しかし、それでも、良い面があったのが、給付金は課税の対象にも差し押さえの対象にもならなかったことだったと思いますが、今回の給付から、差し押さえの対象になるかどうか、国は、検討中と答えるようになっています。差し押さえの対象にしようとしている、ということです。
現金給付は、児童手当受給世帯や生活保護世帯を含めた、住民税非課税世帯への給付ですが、実は、竹中平蔵氏などが提唱しているベーシックインカムは、児童手当と生活保護を廃止し、7万円給付というモデルを示しています。
行政処分ではなく、「贈与」で現金を配る事業が、想定しているベーシックインカム給付世帯と重なっていることが気になっています。
今の生活保護は、一人7万円以上の給付を行っています。
生活保護を廃止して、一人7万円の一律給付にしても、とても暮らしていけない水準です。
民泊やシェアハウスなど、狭い居住空間を「合法」としてきた一方で、
贈与の現金給付を繰り返し行っていると、
いつの間に、今の権利を失い、べーシックインカムになってしまうのではないかと心配です。
こうした現金給付を続けることの心配のもう一つは、現金給付があるなら、年収を少し下げてもよい、と賃金水準が下がるのではないか、という心配です。
ベーシックインカムは、本来事業者が負担すべき給与水準が低い問題を、広く税で負担する構図なので、私は問題だと思っています。
労務単価が上がっても、現場の従事者には(一部しか)支払われないという問題を聞いたことがあります。
こうした給付があると、それを見越して、賃金が下がることがあるということです。
理屈に合わない「バラマキ」ではなく、そもそもの労働分配を正常に戻し、高額所得者には、きちんと相応の税負担をしていただき、セイフティーネットとしての社会保障を正常に機能させるべきだと思います。
____________________
以下、補正予算の討論です。
フェアな民主主義奈須りえです。第32号議案補正予算について反対の立場から討論いたします。
地方分権で社会保障の責任主体が大田区など基礎自治体に整理され、国から地方へ3兆円の税源移譲が行われましたが、今回の補正予算のように国の施策として大田区など地方自治体に交付される事業が増えています。
質疑に対し、大田区は、国・地方で役割分担ができており適正であると答弁していますが、税源が地方に移譲されながら、国がどう財源を確保しているかといえば、法人住民税の一部国税化、地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税など不合理な税制改正により、大田区など都市部の財源を地方に分配し不足する財源に充当させ、国税化しています。財源確保の在り方も問題です。
しかも、住民税の一律10%の定率化をはじめ消費税など中間所得層以下に負担が大きくなった一方で、株式譲渡益への課税は税率の引き下げなど優遇策があるため、税金を集めることで行われるべき格差の是正が十分行われなくなっています。
そうやって広く中間所得層以下から集めた税金が、今回の補正予算のような、
家事支援用品の購入支援や子ども食堂推進事業として再分配されても、必ずしも低所得者層のための施策ではありませんから、効果的に低所得者層に再分配され、格差が是正されるわけではありません。
しかも、所得960万円以下の児童手当受給世帯、やひとり親家庭などへの現金給付も、中間所得層以下からより大きく集めた税金が子育て世帯や非課税世帯に配分されるので同様に格差の是正になりません。
「富裕層減税とトリクルダウン」という国立国会図書館の調査では、格差是正の観点から株式譲渡益を含んだ金融所得への課税を強化すべきか否かは今後の論点となるという指摘もあります。
しかも社会保障が、税ではなく保険で似合われるようになっているので、社会保障のための増税といっても、医療介護年金に投入できる財源は限定的です。
増税しても私たちが社会保障で安心できないのは、増税分が社会保障に使われない構造的なしくみがあるからです。
しかも、「贈与」という形で現金給付が繰り返されていますが、不足する給与を税で補填しているということです。税で足りない給与を補填すれば、給与が上がらない、下がるのではないかといった懸念もあります。
お金をもらう側にとって現金給付は、喜ばしいことかもしれませんが、財源は、中間所得層以下に負担が重くなっている私たちの税金と国債です。大田区は、1000億円の基金で長期国債などの債権を買って運用すると言っており、国の財源のはずが、国の財源を区民の税金で買い支えているというおかしな構図になっています。
しかも、民でできることは民でとはじまった福祉分野への営利企業の参入ですが、直営と比較すれば、経費はほぼ同じにもかかわらず、現場従事者の低所得の問題が改善されません。
今回の処遇改善費用が現場の従事者の賃金に給付されることを評価する声もありますが、そもそも、大田区の答弁の通り直営であれば、公務員給与として賃金は確保されます。低賃金に公が介入しなければ、処遇を守ることができない状況は、公定価格の問題というより、営利事業者が一般管理費など利益を確保している民営化の構造的な問題で、処遇改善費用を補助しても、営利企業に福祉を担わせたことによる構造的な問題の解決にはならないと思います。
私は、民営化には懐疑的ではありますが、新しい資本主義の賃金引き上げ策は、小規模事業者が淘汰され、大規模事業者に有利に働いて、保育などの分野が寡占状態になる恐れが払しょくできません。結果、大規模事業者の力をより大きくし、将来、公定価格を政治がハンドルできなくなる恐れがあり反対です