羽田空港飛行ルート変更の更なる心配
羽田空港飛行ルート変更で、3月29日から都心低空飛行が始まろうとしています。
国は、飛行ルート変更前に、取り外したい制約がありました。
・住宅密集地上空飛行
・石油コンビナート上空飛行
すでに外されている制約
・24時間化
・国際化
と、今回外された制約により、何が変わり、何が起きようとしているのか、考えてみました。
羽田空港飛行ルート変更について初めて大田区議会羽田空港対策特別委員会に、報告されたのは、2014年6月でした。
大田区は、
・空港の運用や飛行ルートの中で、大田区民にとって非常に大きな安全面、また環境面でも影響があると懸念している。
・学識経験者によりこれまでタブー視されていた都心上空を飛ぶとか、そういったことも含めた技術的な面での検討だと聞いているので、きちんと自治体としての意見を国に対しても話していきたい
と発言しています。
この間、国は、住民の連帯や問題意識の共有が生まれにくい欠点はあるものの、オープンハウス型説明会という新しく生み出した説明会を繰り返し、先日6回目の説明会が終わったところです。
ルートや降下角度など効果の疑わしいもの含め、騒音、落下物などの対策を公表し、B滑走路南西離陸の便数が24便から20便に減り、A滑走路北向き離陸左旋回(ハミングバード)が廃止になるなど、大田区の要望に基づくいくつかの修正も行われています。
確かに大田区は、騒音や落下物について国に意見は言ってきましたが、だから反対、ではなく、増便と新飛行ルートには賛成の立場だったと思います。
今年に入ってから、実機飛行という名の前倒し飛行が行われ、騒音の大きさや、あまりの機影の大きさに衝撃を受け新飛行ルートに反対する人も増えてきています。
実機飛行の騒音は、羽田小学校で国の測定で85㏈、五十間鼻では住民の測定ですが94㏈など非常に高い値でした。羽田6、3、5丁目の住居専用地域の騒音環境基準値は、夕方、夜間に重み付けをした1日の平均騒音レベルとはいえ、57㏈ですから、80㏈を超えたのは非常に心配です。
大田区は、空港立地自治体として、区民の安全と住環境を守るため、航空行政に取り組んできました。私も国土交通省が大田区の知見を評価している発言をこの間、何度も耳にしています。
そして、その大田区と国でかわされたのが、2020年1月17日付、国交省からの、国空首都第1 0 7 号「機能強化後の東京国際空港の運用について(回答)」です。
区民の安全や環境を担保するのは、この回答なのだと思います。
そこで、うかがいます。
国からの1月17日付け文書で区民の快適な住環境は守れますか。守れないとすると、不安要因は、どの部分ですか。大田区との協議以外の部分も含めおこたえください。
私は、国が示した新飛行ルートに当初から反対してきましたし、今も反対です。
しかし、大田区は、大田区の住宅地上空を飛ばないと答弁し、だから大丈夫かのような姿勢をとってきました。
ところが、国土交通大臣は、昨年8月8日の記者会見で、さらなるルート拡大について聞かれ、白紙だと答えていますから、取り交わした文書で何が担保されてるのかは非常に重要です。
仮に、将来状況が変わって、ルート、時間帯、便数などの変更が必要になったとしても、安易な変更をさせないよう、この文書でくさびを打っておくべきなのです。
お手元の資料1をご覧ください。これは、新飛行ルートを提案するに至る検討段階、2013年11月の首都圏空港機能強化検討小委員会第一回の資料です。
ここには、「陸域への騒音影響軽減のため、基本的にできるだけ会場方向に飛行ルートを設定する必要があること、また、防災のため石油コンビナート地区上空を回避する必要があることから、滑走路の使用方向には大きな制約があること」が書かれています。
次のページをご覧ください。
四角で囲ったところに、同じく制約要因として、沖合展開の歴史的経緯が書かれています。「沖合展開事業前より、陸域での騒音総量を抑制する観点から、東京湾を最大限活用し、出来る限り、陸域を回避する飛行ルートが設定されていた」「再拡張事業においても、東京湾を最大限活用したうえで、可能な限り陸域への騒音影響を軽減する飛行ルートを設定している。」
① そもそもの歴史的経緯があり、
② この住宅密集地
③ 石油コンビナート地区
④ 加えて、A滑走路北向き離陸左旋回ハミングバード
などが、増便における制約要因になっていたのです。
石油コンビナート上空の制限は、川崎市が了承しとりはずしてしまいました。
ハミングバードが増便における制約要因というのはちょっとマニアックなのですが、「A滑走路北向き離陸は3便まで」と解釈すると、住宅密集地を飛べない「制約」とも読めます。
住宅密集地の着陸に関するという制約も、「A滑走路北側からの着陸は、公用機プレス機ゼネアビ機小型民航機に限定し、7時から19時台までの年間平均一日あたり15回以下」という文言をはずし、なくなってしまいました。
今回の南風運用時のAC滑走路北側からの着陸ルートを設定したことではずされてしまいました。
新ルートのA滑走路の着陸便は、機種こそ違いますが15時から19時までの3時間で一時間当たり14便ですから、京浜島上空の飛行や、大森東、南、糀谷などへの影響も考えれば、たとえ一日42便だとしても、回数制限すべきだと思います。
しかも、新しい文書は新飛行ルートでは設定されていないAC滑走路北向き離陸やB滑走路北東着陸を意味する「神奈川都心北上ルートは設定しない。」をはずしています。
離陸便のため機体も重く、大田区上空である京浜島を飛ぶことになるだけでなく、東糀谷、大森南、大森東などへの騒音影響も大きいにも関わらず、「神奈川都心北上ルートは設定しない。」というAC滑走路北向き離陸の制限を外してしまったのは、大問題だと思います。
また、B滑走路南西離陸は、20便ですが、便数制限が記載されていません。
B滑走路南西離陸は、大田区の真上の空を飛ばないものの、羽田のまちや川崎市殿町への影響は非常に大きく、飛ばすべきではありませんでした。当初の24便から20便へ減らした経緯を考えても、上限を国との文書に盛り込むべきではないでしょうか。
そこで、うかがいます。
② 大田区と協議の対象である「神奈川都心・北上ルートは設定しない。」をはずし、「B滑走路南西離陸便の上限20便を設定しなかった」のはなぜですか。書き込んで、区民の生活環境や健康を守るべきではないですか。
資料2をご覧ください。
これは、成田空港の現在の騒音コンター図です。
緑の線が第一種区域と言われるLden62、防音工事が必要な区域です。
この区域の中には、居住を制限している区域を含め約6700世帯あるそうです。(約5500戸を対象に防音工事をしているそうです。)
青の線がLden73㏈、第二種区域で居住を制限しています。
緑の線は、滑走路の方向に約10キロ~12キロと長く伸びていて、音の影響が離着陸の方向に大きいことがわかります。垂直方向にも1キロから2キロ広がっているのがわかると思います。空港周辺に緩衝帯があり、住宅が大田区や都心ほど密集していない、しかも、24時間空港ではなく、11時から6時までの深夜早朝は飛んでいない成田空港で、5500件の方たちが防音工事をしなければならないほど深刻な騒音被害区域に住んでいるというのがこの図です。
一方、滑走路から羽田のまちまで一番短いところで約600mの羽田空港は、今も、増便後も、国は、Lden62のコンター図は住宅にかからないと言っています。
しかし、だから安心ということにはならないと思います。
国も、B滑走路南西離陸の便数が増えれば、62㏈コンターのラインが羽田に入ることを否定していませんでした。
成田は総離発着数26万回に対し約21万回が国際線。羽田は、今は約8万回ですが、機能強化で増える約4万回は、すべて国際線なので、増便で国際線は12万回になりますし、国内線からシフトしてさらに国際線が増える可能性もあります。
騒音の専門家で審議会の委員も務める北海道大学の松井利仁教授は、WHOは睡眠障害心疾患などについて、Ldenではなく、夜間の平均値で評価している。WHOのガイドラインには、「Ldenはうるささの評価指標であって住民の睡眠を保護しない」と書かれている。と講演しています。
このWHOのガイドラインなどに基づいて出された飛行差し止め判決の夜間騒音の発生件数は年間で約400回。この判決は最高裁でくつがえされていますが、24時間空港になった羽田空港の深夜早朝便が、いま少なめにみても一日53回、年間約2万回になりさらに2万回増える余地があることを私たちは、考える時期に来ていると思います。
3.5度の降下角度を横田の空域のせいだとする論調が始まりましたが、前回の横田の空域削減で、航空会社にはコスト削減効果がありましたが、大田区は騒音にさらされたことを忘れてはなりません。