大田区財政悪化の社会的要因ではない、大田区独自の理由(その2)

■大田区の説明する悪化要因の一つ「生活保護率」の割合は、23区並み■

大田区の生活保護率は、23区でみると高い方からかぞえて11番目。ちょうど真ん中くらい。23区平均保護率が21.4‰なのですが、大田区は21.5‰。平成19年が17.3‰で23区中高い方からかぞえて13番目。ほぼ真ん中くらいを推移していてほんのわずかに保護率が悪化していることがお分かりいただけると思います。

【質問】
そこで、うかがいます。
これでよろしいですか?「はい」か「いいえ」でお答えください。

【答弁】
はい

■大田区の説明する悪化要因の一つ「高齢化率」も23区並み■

それでは、高齢化率はどうでしょう。

高齢化率は23区中高い方から10番だったのが11番に。
ここでは、わずかに順位を下げましたが、やはり高齢化率もほぼ真ん中くらいを推移していることがわかります。

そこでうかがいます。これでよろしいでしょうか。「はい」か「いいえ」でおこたえください。

■他区に比べ大きく悪化した経常収支比率の要因は生活保護でも高齢化でもない=説明されていない■

この二つのデータから言えることは、「生活保護世帯の増加」と「高齢化」は、経常収支比率の悪化にはつながってはいるけれど、今年大田区が23区平均を大幅に上回り、特に経常収支比率を悪化させた要因の説明にはなっていないということです。
そうすると、経常収支比率が昨年から今年にかけて大きく下がった理由が他にもあることになるわけです。

高齢化と生活保護世帯の増加が大田区経常収支比率財政悪化の要因と言っていますが、大田区が他区に比べ特に生活保護世帯が増えたわけでも、高齢化が進んだわけでもないのです。

■繰り出し金の増加による影響は、22億円ではなく、国民健康保険分(17億円)を除いた5億円程度■

大田区は、経常収支比率の悪化として繰り出し金の増加にも言及しています。確かに繰り出し金は増えていますが、経常収支比率に与える影響として考えれば、生活保護費の大田区負担分は約1/4。国民健康保険の繰り出し金は財政調整金で補てんされますので、実質影響額は、例えば平成22年度では5億円程度です。資料4(NEXT STEPp7)でみれば22億円昨年から繰り出し金は増えていますが、そのうち17億円は国民健康保険の繰り出し金ですから実質影響額は5億円ということになります。
これまでの教科書的な説明ではない、悪化要因に向きあわなければ財政改善ははかれないのです。

■外部化しながら、他区に比べ下げ幅の小さい人件費率■

そこで、私は、人件費に注目してみました。
大田区の人件費率の推移をみたところ、23区各区とも人件費率を下げてきています。ところが、他区の下げ幅にくらべて、大田区の下がり方が、少ないのです。
平成22年度の外部包括監査では、同規模自治体間比較において人件費率の二極化が起きていると言う表現をしています。そして、大田区は人件費率が20%を超える二極化の悪い方の自治体例としてあげられています。

私は、人件費率も23区で順位をつけてみました。平成15年から昨年度までは真ん中くらいで推移していましたが、今年は悪い方から5番目にランクを大きく下げています。

【質問】
そこで、うかがいます。
人件費率の推移が他区に比べて悪いのですが、どのようにどのようにとらえていますか?
またその改善策について具体的におこたえください。

【答弁】
下がり方が少ない

例えば、NEXT STEPp10に、
「それぞれの特別区の特性や抱える行政課題、これらに対する行政の運営方法などが異なるため、単純に結論を導き出すことはできないが、23区の標準的な傾向からすると、区の人件費の額が、標準財政規模に対して多いことがわかる」
と記載されています。

今回の決算委員会においても防災課の人数が他区に比べ少ないということが指摘されていましたが、その分、人員配置が他区に比べて厚くなっている部署もあるでしょう。

しかし、大勢の職員を配置して良い仕事をするのは当たり前のことで、それには限度があり、区民は許さないでしょう。ましてや持続可能な財政を圧迫してまで人件費をかけて区政を執行して欲しいと区民は誰も望んでいません。
たとえば、こんな課題もあります。

■定数化されていない、退職後の再任用職員約300人10億円■

大田区ではこれまで再三指摘させていただいておりますように、定年退職後の再任用職員を定数に含めていません。

別紙3にありますように、平成22年度現在、294人の再任用職員が働いておられます。そこには、9億8096万円。約10億円の人件費が投入されています。
職員数4437人に対し294人は決して少なくない人数です。
平成18年に113人だった再任用職員は、平成22年度には3倍近い294人にまで増えています。

この間、大田区では、平成18年に再任用職員の勤務時間数を週32時間から週24時間にかえたり、平成21年から31時間勤務を可能にしたりしていますが、こうした時間数の変化は、一体何を根拠に行われてきたのでしょうか。大田区の仕事量が増えたことによる時間数の増減ならわかりますが、それでも、再任用職員を定数化していないのです。

東京都では既に定数化しているこの再任用職員ですが、大田区が何故定数化しないのか、現場の仕事量と職員数をどのように管理しているのか非常に不可解です。

しかし、公務員制度改革により平成25年度以降、段階的に定年延長または定年後の継続雇用の方策がとられる可能性が高くなっていて、このまま放置できない状況です。

【質問】
現状の、こうした曖昧な再任用職員の処遇が大田区の人件費率を高止まりさせてはいないでしょうか。25年からの切り替え時に速やかに制度導入していくためにも、来年度から再任用職員を定数化し、その上で、適正な職員配置を区民に示すべきと考えますがいかがですか?

【答弁】
定数化できない

定数化していない職員が大田区で働き、給与を受けていることは、仕事量も曖昧にするため問題です。