大田区財政悪化の社会的要因ではない、大田区独自の理由(その3)

■増える管理職ポスト■

一方で、大田区は、そうは言っても職員数を減らしてきています。
平成12年度に6061人だった職員数は、平成22年度には4437人と約3/4にまで減ってきているのです。

ところが、職員数が減っているにもかかわらず増えているのが管理職ポストです。
職員は3/4に減りましたが、管理職は平成12年の122人に比べ、いったん減ったものの結局、平成21年に126人と平成12年に比べても増えています。
職員数を減らしながら、管理職を増やしてきているのが、現在の大田区です。

今年の職員定数条例改正議案議決の際に指摘させていただいたように、アウトソーシングが進められている時代において、これまで同様、単に、漫然と職員定数だけを人件費管理の指標にしていることが問題ではないでしょうか。

こうした、職員規模を考慮しない管理職数の管理も人件費増の要因になってはいないでしょうか。

大田区政を支える人的資源は、正規の公務員にとどまらず、今言及した再任用、非常勤、そして外部化した企業や団体で働く職員など多岐にわたっているからです。

そこで、次はこの外部化された事業の管理がどうなっているか一緒に考えていきたいと思います。

■外部化効果を把握していない大田区。議会からは見えにくい外部化効果。■

大田区では、外部化することでコストダウンを図ってきましたが、外部化によるコストダウンの効果がえにくくなっているのが課題であると申し上げたいと思います。

今回、指定管理者制度導入のための条例改正議案上程の際に、外部化した効果の検証について資料提供を求めましたが、出していないという答弁でした。この答弁が現在の大田区の外部化を端的に表しています。

■外部化効果の指標である(人件費+委託費)が必ずしも減っていない理由■

大田区でも行っているおおよその外部化効果を検証するための数値をシティーマネジメントレポートからひろってみました。

それが、資料7番の人件費と物件費の中の委託費の合計の推移です。
外部化すれば、長期的には、人件費の減少というかたちで効果が現れてきます。
しかし、委託費用が増えますので、実際に、外部化した際の効果は、人件費と物件費の合計がどのように推移しているかをみるとおおよその傾向がわかります。

数値の表し方が一律でなかったので、平成22年度決算までの指標を作れませんでしたが、
平成15年に人件費物件費合計が692億円だったのが、平成21年には658億円と6.3%減額を達成していることがわかります。

ところで、今回、財政分析をするにあたり一番苦労したのが、数値のとり方がまちまちだったことです。
財政を見えなくしているのは、こうした数値の扱い方を大田区内で統一していないところにもその要因があるように感じました。

話は戻って、人件費と委託費の合計ですが、気になるのが、平成19年から増減を繰り返し一定していないことです。

私はこの人件費と委託費が増減している要因をの中に、指定管理者制度の利用料金制を採用とシステム経費もあるのではないかと考えています。

■指定管理者制度採用により、一般会計予算=委託費から削除されてしまう「利用料金」(平成21年度で40億円!)■

この間、大田区では、アロマ駐車場、産業プラザ、区立特別養護老人ホーム6か所、高齢者在宅サービスセンター10か所において利用料金制を採用してきました。この利用料が委託費から差し引かれています。

特養と在宅サービスセンターが利用料金になった平成21年度の影響額を区は、40億円といっていますから非常に大きな影響であることがわかります。


■基幹系システム入れ替えにより、毎年数十億■

また、資料8に記しています通り、委託費には基幹系システムのソフト代、ハード代、運営費などの費用が含まれます。平成20年から採用している基幹系システムの更新により、毎年、数十億円が計上されてきています。
今後、またハードのリースが終了しても再リース費用に加え、毎年16億8000万円のシステム運営費は、継続的にかかってきます。

法改正のたびに変更に莫大な経費をかけるわけですから、一体いくらをこのシステムに投入していくのでしょうか。

これまで、外部化といえば、経費削減につながると信じられてきました。
しかし、外部化すれば経費削減につながるかと言えば、このシステム開発運営費のように、システム化することで莫大な経費がかかるものが出てきているのです。
こうしたシステムは費用が高額なこともあり、導入している自治体とそうでない自治体があるそうです。

システム導入の際に、いくらまでなら導入するといった上限額や目安を定めているのでしょうか。

また、大田区では、外部化した効果を検証していませんが、更に利用料金制導入により、外部化の経費削減効果がみえにくくなっています。

外部化、利用料金制、システム導入も含めた総合的な外部化の経費管理と効果の検証が必要な時期にきていると考えますがいかがですか?