(仮)東糀谷工場アパートの事業主体が東電子会社から外資系投資会社になった問題について

中小企業産業支援という大義名分があれば、どのようなスキームで、いくら費用をかけても良いのでしょうか。

(仮)東糀谷工場アパートは、その目的からいえば、決して悪くない事業ですが、それでは、何をしても許されるのでしょうか。

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 今回の補正予算には、「ものづくり工場基盤施設整備助成」として(仮)東糀谷六丁目工場アパートに対し建築費・家賃補助分平成32年度までの今後9年間3億6千万円の債務負担行為の補正が計上されています。

 これは、東電不動産㈱に平成32年度までの10年間5億円を補助する予定だったものが、対象事業者がメープルツリーインベストメンツジャパン㈱に変わるとともに補助額が10年で5億円から4億5千万円に変更されたための補正で、初年度である今年度にもその差額が減額補正されています。

 当初、大田区は、工場集積のため、区が用地を確保し、区内企業の事業拡張・区外企業の誘致のために使うという計画をたてていました。その計画に基づき、工業専用地である大森南の米山紙業跡地2,600㎡を再開発してものづくりの担い手となる企業に事業要借地権を30年設定するという事業にとりかかっていました。

ところが、その土壌から大量のアスベストが出たため、莫大な費用を投じ、アスベスト除去に取り掛かったにもかかわらず、途中で、当初見込みよりアスベストの除去量が多いことが判明し、費用がかさむからという理由で、2/3を終了した時点でアスベスト除去工事を廃止し、出張所を建設した1/3を除く残りの部分が現在は、交通公園になっています。

 計画が順調に進んでいれば、平成22年5月に入居企業が決定していて、2,600㎡に2から3の企業が誘致されていたはずです。土地購入費用として8億5千万円、土壌処理にかかった費用は2/3で2億4千万円。莫大なアスベスト除去費用を投じながら、結果として交通公園になり、工業地域にものづくり企業を誘致できなかったという最悪の結果に終わっています。

その後の議会での流れからも、今回のこの(仮)東糀谷工場アパートの計画が、大森南のいわば、計画失敗の代替事業と位置づけられる性格であることがわかります。

 今回の工場アパートは、建設コストや一括借り上げ費用などで、仮に全てのユニットが満室になったとしても毎年7347万円の区の持ち出しがあり、20年で持ち出し費用は14億7,000万円にも上ります。それに、工場アパート管理に関わる人件費なども加わりるうえ、仮に、入居者が不足し賃料が」入らなければそれだけ区の持ち出しは増えます。

 大森南の土地の残りの1/3の部分に1億2千万円かけてのアスベストを除去してしまえば、工業誘致に活用できるわけですから、改めて、大森南の土地に、なぜ、更にアスベスト除去費用1億2千万円を投じ、企業誘致のために使わなかったのか疑問が残ります。

 大森南にアスベストが見つかった時、除去するのであれば、すべてとり、工業用地として活用すべきであり、そうでなければ、コンクリートでふたをすべきと発言しましたが、結果として、区の財政負担の大きな産業支援施策になっていることを思えば、区は、あの時の指摘に従うべきでした。

 しかし、たとえ、財政負担が大きくても、産業支援、政策目的を達成するためには、行わなければならないこともあります。

 それでは、今回の(仮)東糀谷工場アパート事業はどうでしょうか。
 当初は、東電不動産が4,000㎡の用地取得し、工場アパートを建設する計画でした。
大田区は、当時、「区として産業集積がほころびをきたしている状況で、ものづくりを応援してまいりたい」と発言しています。