◆その1◆都区制度下の23区(大田区)からみた都構想について〜今、なぜ、都構想法案なのか〜

「都構想法案」が与野党合同(民主、自民、公明、みんな、国民新)で国会に提出されるようです。

地方議会の例で言えば、上程される議案は、事前の与党への根回しから可決前提。
国では、地方議会に比べれば継続審議はめずらしくありませんので、議論のゆくえによって可決されるかどうかは流動的なのでしょうけれど、与野党合同で提出ということですから、成立の可能性は高いと言えます。

しかも、橋下徹大阪市長の掲げる「大阪都」構想は、市長の「改革」イメージと重なり、「都構想」が「改革」のための制度整備だという認識の方がほとんどではないでしょうか。

しかし、法案をみれば、都構想に基づく都区制度を成立させるために「住民投票」というハードルが課せられることからも、市町村合併以上に「重大な変化を住民に与える」ことがわかります。
ところが、イメージは先行しているものの「改革の具体的中身や効果」は伝えられてきていません。

仮に法案が成立したとしても、「住民投票」というハードルが課せられることから、すぐに都区があちこちに誕生することにはならないと思いますが、その中でも、大阪は早期成立を目指して動き始めるでしょう。

都構想とは、一体何を意味するのでしょうか。そして、その結果、私たちの暮らしをどのように「変える」のでしょうか。

現在、私が、都区制度に持っている問題意識から都区制度や都構想について考えてみました。

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一般に、市が手を上げるオリンピックに東京都が名乗りを上げることに疑問を持たれた方がいるでしょうか。冬季オリンピックは「札幌」であって、「北海道」ではありませんでした。

ロンドンも、北京、アテネ、シドニー、アトランタ、バルセロナ・・・後ろにはcityと付きますね。

ところが、東京は、市町村の権限を持っているのは、23区で、大田区は英語名では「ota city」ですから、大田区や目黒区が手を上げるのが筋なんじゃないだろうか?


これは、東京都がかねては東京市で、23区は、東京都の内部団体だったことの名残りなのでしょう。

東京市は、戦前の昭和18年には廃止されていますし、その後、平成10年の地方自治法改正によって、23区は基礎的自治体としての位置づけを明確にしています。
それでも、東京都は、23区を一体とみた東京市を統括しているという感覚から抜け出せずにいる。そのことは、オリンピックにおける東京都の姿勢からもわかります。

それでは、23区が基礎的自治体に位置付けられていながらも、東京都が23区を一体とみなし、東京市が未だに存在しているかのような動きをするのはなぜでしょうか。



◆都構想の本質は税金配分システム◆

23区には「都区財政調整制度(都区制度)」という制度があり、これが、いわゆる「都構想」の基本になっています。

都と市で図書館や病院など同じことをしている(いわゆる二重行政)から無駄なので、都構想と言われたりもしますが、二重行政は、どちらかがやめればよいだけの話で、そこに都構想の本質はありません。

23区の場合、法人住民税と固定資産税、特別土地保有税をいったん東京都が徴収し、55%が23区分として配分され、45%を上下水道、消防など大都市事務として東京都が使うしくみです。

この「都区制度」は、23区固有の財源を東京都が徴収し配分するという意味で、23区の自治権を侵害するとともに、23区固有の財源を東京都が徴収し使うため23区への権限を強めるという意味で、問題のあるシステムだと考えています。

ところが、このシステムが有効なのは、財源の豊かな不交付団だからで、なぜ、「都構想」かと不思議に思っていました。

先日の勉強会で、大阪のように、不交付団体が都を構成する区の自治体の場合には、東京都のように、徴収した財源で基準財政需要額を満たすことができず、東京都で言う45%といった財源がないことが考えられるが、その場合、交付金も含め「都」が徴収し分配するのではないかということでした。

分権と言われてきましたが、今、政治の現場では、「広域化」による意思決定に市民を介在させない集権化が広がってきています。後期高齢者医療制度、清掃事業の広域連合、一部事務組合、がれき広域処理もそうですね。

そして、そのひとつが「都構想」だと私は捉えています。

23区住民が支払った税金は、23区の住民に使い道の決定権があり、だからこそ、23区で議員を選出し議会を構成して予算を議決しています。同様に、首長も選挙で選んでいんるわけです。
それが、都区制度を採用していることにより、自治体財源でいえば、1/3〜1/4も東京都に徴収され、55%は戻ってくるものの、45%は東京都が使ってしまって、23区民が直接関与するしくみになっていないのです。

果たして、45%は23区の大都市事務として効果的に、また、適正に使われているのでしょうか。

都と区の協議における、45%問題の最大の論点は、事務に係る明細のないことです。
45%は各事務の積み上げでは無く、「あいまいに根拠なく」「政治的に」決められている値なのです。

調整3税総額で1兆6,027億円。そのうち7,149億円がこの「大都市事務」として東京都に吸い上げれれています。

私たちは、税金の使い道がおかしいと感じていますが、そこにどのように関与すれば、変えられるのか行き詰まり感があるのではないでしょうか。

それが、さらに手の届かないところに行ってしまうのが現在の「都区制度」でそれを解決する仕組み無く「都構想」が導入されるなら、大きな問題であることに私たちは気付かなければなりません。

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