◆その2◆都区制度下の23区(大田区)からみた都構想について〜今、なぜ、都構想法案なのか〜

◆その1はこちら◆

【財政調整制度】

大田区の財源のうち、特別区民税とたばこ税は大田区に直接入りますが、他の自治体であれば、直接の収入にできる、固定資産税・法人住民税・特別土地保有税・都市計画税等は、23区の場合、いったん東京都が徴税します。その中から、調整3税と呼ばれる固定資産税・法人住民税・特別土地保有税を定められた方法(23区の需要額に応じて)で配分しているのが、都区財政調整制度というしくみです。

いったん都税として徴税された、調整三税は、東京都がその45%を「大都市事務」として確保し、残りの55%が23区に配分されていきます。(厳密には、55%の5%、つまり全体の2.75%440億円は災害など特別の需要があるときに交付される特別交付金として位置付けられています)

この55%のうちの95%は、各区の基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いた差額を補てんする形で普通交付金として配分されています。

例えば、大田区の平成22年度決算でみると、歳入合計は2,208億円のうち、この財政調整に占める割合は、593億円にも上ります。また、23区合計では、8,782億円にも上ります。

本来、23区の財源でありながら、現実には、各区間に財政収入に大きなばらつきが見られる23区では、この財政調整制度によって区財政を維持できている区が少なくなく、それらの区にとって、財政調整制度は不可欠の制度として位置付けられています。

実際に、財政調整制度の大きな目的のひとつが、特別区相互間の財源の均衡化になっています

しかし、基礎的自治体であれば、当然の歳入も、いったん、東京都を通じ配分されているため、この593億円は23区にとってみれば、東京都から「いただいている」感覚になっているという見方もできます。

加えて、55%の2.75%440億円の特別交付金の配分は、災害など特別の需要で、配分の規則はありません。したがって、この5%を「東京都からどのように引き出すか」が自治体の手腕であると言った分配に関る恣意的な表現が聞かれることもあります。

都区制度が、改革の象徴、切り札のように扱われていますが、23区にとっては、国と地方の関係を、東京都と23区の間に存在させている制度でもあるのです。

【大都市事務】

もう一つの、財政調整制度の目的は、都と特別区の財政の均衡化とされています。
その、都区の財政の「均衡化」のために、23区の財源である調整三税の45%7,149億円は、現在、東京都が確保し都の財源になっています。

もともと23区の財源に「均衡化」というのは曖昧な表現ですが、実際には、都と23区の財政の均衡化は、「大都市事務」として説明されています。

なぜ、東京都が23区の財源のうち、45%7,149億円もが東京都のものだと主張できるのかといえば、東京都の23区という「大都市部」において、行政の一体性・統一性の観点から一体的に処理する必要のある事務(上下水道の設置管理、消防等)を都が処理しているというのが理屈になっているのです。
東京都が、大都市だから、23区でばらばらにやるより、東京都がまとめてやったほうが良い事務というのが「大都市事務」です。

ところが、この「大都市事務」に充てられている7,149億円をめぐっては、東京都と23区の間の主張に差が見られます。

◆大都市事務
人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から特別区の区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務(法令による留保事務等)

都区の主張の論点は、

・何を大都市事務とするのか(都・区、どちらがなすべきか)
・その事務にはいったいいくらかかるのか

の二つでしょう。

現在も東京都と23区の間では、大都市事務をめぐり、都と区どちらがその事務を担うかの議論が毎年続けられています。

参考:都区の事務配分に関する検討状況p27〜

大都市事務といった場合に、まっ先に説明されるのが「上下水道」と「消防」です。これらは、一般には”市営、町営”で行われている事業ですが、23区は、東京都水道局、東京都下水道局、東京消防庁が担っています。

例えば、一般に、上下水道会計は、企業会計と言ってその経費は、上下水道料金でまかなわれています。

地方公営企業法第2条第1項「地方公営企業として経営」第17 条の2第2項「独立採算制」

しかし、水道料金でまかなわれているのは、事業の管理運営にかかわる収支のみで、施設建設改良に係る収支は、除かれています。たとえば平成22年度の管理運営会計は245億円の純利益を出していますが、資本的収支(施設建設改良等費用)は、1,908億円の赤字です。施設建設改良費に3,554億円投入しています。

例えば、区部の平成22年度の建設改良費は3,554億円。横浜市は239億円です。
必ずしも単純比較は出来ませんが、人口が2.5倍。面積が1.4倍。ところが、建設費は15倍にもなっています。

ここで思い出すのは、昨年、多摩地域の下水汚泥から高濃度の放射能が測定されたことで、それまで行っていたセメントリサイクルができなくなり、23区の下水処理をしている城南島スラッジプラントに持ち込まれたことです。

区部の下水汚泥処理施設が、何故、二つ返事で、市部の下水汚泥処理を引き受けられたのか。そこには、過剰な設備投資があったからとはいえないでしょうか。
当時、城南島では、午前中しか施設を稼働していなかったとも聞いています。

こうした過剰といえる下水道建設改良事業を支えている背景に、23区の財政調整金の45%の存在があるとは言えないでしょうか。

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