大田区が調査の結果出した「大田区におけるアスベスト健康調査報告書」について、アスベストの吸入により発症する中皮腫等の相談窓口として発足した民間の非営利団体「中皮腫じん肺アスベストセンター」が次のようなコメントを公表しました。〈コメントは概要です。詳細は、中皮腫じん肺アスベストセンター/担当:永倉さん03(5627)6007)〉
1.周知方法について
報告書に周知方法が無いが、労災病院の胸膜プラーク所見者の全てが今回の検診の受診者に含まれていないことからみて、既に検診済みの胸膜プラーク所見者に対して配慮した周知方法をしていたかどうか疑問。
周知方法に配慮が足りなかったために結果的に東京労災病院で検診済みの胸膜プラーク所見者が今回の大田区の検診や問診に受信しなかったのではないこということがうたがわれる。
2.大田区は本当に他地域に比べてリスクが高いとはいえないのか?
「大田区でばく露歴を確認できない607人のうち、胸膜プラーク所見ありは9人で1.5%。また今回の調査では中皮腫が確認されなかったことなどを考慮すると、他の地域に比べアスベスト関連疾患リスクが高いとはいえない」と結論付けている。
しかし、大田区の場合、住民の不安感から結果的に検診に殺到するような状況を作り出してしまったことが他の健康リスク調査を実施した地域とは決定的に違う。
その結果、報告書4ページでも認めているように「母集団が他の地域に比べて多く」なってしまったのであって、このような事情を考慮せず、単純にたの地域と比較して「アスベスト関連疾患リスクが高いとはいえない」と結論付けるのは早計だと考えられる。
今回の調査で、もし、東京労災病院で中皮腫(1人)、胸膜プラーク(5人)、石胸水(2人)と診断された8人が調査に応じていれば、胸膜プラークなどの有所見ありは17人となり、大田区ではばく露歴を確認できない607人を母集団とした比率は3%と二倍に上がる。
これは、昨年新たに環境リスク調査をした鶴見区の場合の7.7%と比べるとまだ低いが、上記の大田区特有の検診殺到状況を考慮すれば
それほど違い名内容に考えられる。
3.プロット図から特定石綿工場周辺の住民のアスベスト被害であることは明らか
h法酷暑の図1、図2を見る限り、工場周辺500m以内に胸膜プラーク所見者9人が居住していることは明らかであり、方向所4ページで「一般環境を経由した石綿ばく露の可能性は否定できない」としているように、プロット図から、原因企業が特定できることは勿論のこと、その工場周辺の環境ばく露による住民のアスベスト被害であることは明らかであると言わなければならない。
4.提言書の問題
提言書での「定期的な受信の機会が設けられることが望ましい」のは当然だが、継続的な対象地域の住民の石綿検診を実施しないことは大いに不満が残ると言わなければならない。
「健康調査において、・・・区単独で行うには限界がある」とするなら、今後の健康調査を環境省受託の健康リスク調査として実施できるよう環境省に働きかけていくことが必要なことはいうまでもない。
それが大田区民の健康不安に継続的に応えていく最も適切な道筋。それをしないいかなる理由もないはず。このような方向性に積極性を示さない大田区の態度は不可解と言う他ない。
5.健康リスク調査や中皮腫の死亡調査でアスベストの健康影響調査の継続を!
横浜市は健康リスク調査を実施し、胸膜プラークを診断された12名が一般環境経由による石綿ばく露の可能性があることを認め、さらにエーアンドエーマテリアル社旧横浜工場と言う企業名を特定して12名のうち10名がその工場から約300m杯以内に10年以上の居住歴があったことを公表している。
大田区は、
1.プロット図で明らかであるにもかかわらず、原因企業を特定していないこと
2.東京労災病院の患者8名が含まれていないこと
などでなお、問題を残していると考えられる。
また労災病院の患者の8人のうち1人は中皮腫で死亡した患者であり、中皮腫や肺がんの深刻な被害が工場周辺に広がっていると考えられる。したがって、中皮腫の死亡調査の実施も検討していく必要がある。