大森南の土壌アスベスト処理1400(立方メートル)に2億4千万円をかけて大田区がしたかったこと【その②】

 二つ目は判断が遅すぎるということです。

 一方で、区は、大森東出張所建設地に加え、産業支援予定地部分まで一部、土壌置換を行っています。区は、産業支援施設設置を中止するとしていますが、産業支援施設予定部分の処理土壌672㎥の土壌処分費用1億1499万円は無駄にするのでしょうか。

 さらに言えば、出張所の掘削を始めた当初12月初旬の時点で、予想を超えるアスベスト混入土壌の処理を行わなければならないことは予測し得たはずです。本来の土地取得目的は、あくまで産業支援であり、土地を利用目的に分けて処理する判断もどうかと思いますが、遅くとも、出張所建設予定地のほとんどの処理が終了していた12月半ばには、判断できたはずです。

 その時点で、いったん工事を中断し、議会に報告するとともに土地活用を検討できたのではないでしょうか。

 判断があまりにも遅く、結果として、誰も責任をとることなく不要なアスベスト処理費用を投じることになっています。

 三番目は土地の取得目的は何だったのか。何のために土壌置換工事を行ったのかということです。

 この土地は、産業支援のために購入した工業専用地ですが、土地取得目的も果たせず、また、用途にかなった土地活用も行えません。

 議決の意味は一体なんだったのでしょうか。           

 2億4350万円もの税金を投入し、また、そのうちの金額にして1億1449万円もの大金を投じ処理した土地は今後の活用さえ決まっていないのです。

 仮に、コンクリートで封じ込めれば、今後、掘削をしない管理体制が必要になりますが、未来永劫管理し続けることは可能でしょうか。将来コンクリートのメンテナンスは安全に行えるのでしょうか。

 土壌汚染地として、未来永劫この土地活用を塩漬けにするのであれば、アスベストを確実に安全に処理して、産業支援用地として活用するという判断もあるのではないでしょうか。
 
 汚染源者を特定し、ここで大田区がしっかり処理して、汚染源者に求償するという考え方が妥当ではないでしょうか。汚染者負担の原則から言えばこの処理費用は大田区が負担すべきものではありません。区も求償すると言っており、単に費用がかかる、かからないを工事中止の判断基準にすることはできません。

 四つ目は隠ぺい体質とリスクコミュニケーションの不足です。

 今回に限った事で無いのが残念ですが、とくに、この大森南の土壌アスベストの問題につきましては、情報の非公開とリスクコミュニケーションの不足を感じました。

 私が、説明会に参加していながら、次の説明会の案内が来ない。そこで、説明会開催の際には声をかけるよう依頼するが、それでも何の連絡もない。区の施設は、地域住民に説明し地元議員だけがチェックすればよいのでしょうか。

 また、開示請求をしたところ閲覧の連絡が来たため、書類を点検しましたが、当然開示すべき書類が開示されていない。そこで、指摘すると、開示書類が増える。指摘されなければ、この程度、指摘されたら仕方ないから出すという姿勢にはあきれるばかりです。

 処理費用も気になるところです。今回の処理費用を、他の事例に比べ、高いと指摘する専門家もいます。開始直後に1カ月余の中断。正味2カ月の工事に2億4350万円。一日あたり約400万円かけた計算です。

 区は、アスベストがたくさん出てきた部分をプレハブで密閉して飛散性アスベスト扱いで処分すると説明してきましたが、出張所部分においても、アスベストは大量に見つかっており、密閉処理するか否かの判断の基準も不明瞭なまま、水で湿潤して工事は終了してしまいました。埼玉市の土壌アスベスト処理はすべて密閉して行っています。

 土壌アスベストの法整備の問題は依然として残っており、大田区の処理が行政の手本とならなければいけなかったはずでしたが、残念ながら、事前調査、採用した工法とその根拠、情報公開、リスクコミュニケーションなどいずれもお粗末で、先進事例にはなりえず、反対いたします。


なかのひと