水道民営化 大阪市がひっそりパブコメ中。 その1◆民営化の前に考えたい、今、なぜ公的分野が民営化?

大阪市が水道事業を民営化するためのパブリックコメントを募集している。

郵政民営化の時は、是非を問う解散選挙まで行っているし、国鉄(JR)民営化の時だって、もう少し社会的な議論になったと思うのだが、ひっそりと行われている(ように感じる)。

昨年、すでに、麻生副総理は、「日本の水は全て民営化」と言っているから、東京だって他人事では無い。
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【大阪市が水道民営化のパブリックコメント募集中】
 ~平成26年5月30日まで~

ライフラインに関る水道事業の、しかも民営化、水道施設これまでの投資額で40兆円が、実にひっそりと行われている。

大阪市は、現在、水道事業を民営化についてのパブリックコメントを募集中だ。 平成26年4月14日~5月30日まで

http://www.city.osaka.lg.jp/templates/jorei_boshu/suido/0000261261.html

【日本の水道を全て民営化したい政府】

水はライフライン。

しかも、水道民営化は、維新の会の橋下市長だから出てきたことではない。

麻生太郎副総理は、昨年4月に、CSIS( 米戦略国際問題研究所 )において、日本の水道を全て民営化すると発言している。

http://youtu.be/Qo9mq9PVae0

「例えばいま、世界中ほとんどの国ではプライベートの会社が水道を運営しているが、日本では自治省以外ではこの水道を扱うことはできません。しかし水道の料金を回収する99.99%というようなシステムを持っている国は日本の水道会社以外にありませんけれども、この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものをすべて、民営化します

政府の方針、自民党の政策でもあるのだ。
大阪市で提案されたら、維新は賛成するが、自民はどうするだろうか。連立している公明はどうするだろうか。

東京都だとどうなるのだろう。
東京都は、民営化に備え、多摩市部の水道を着々と東京都の水道事業に統合してきている。都議会は静観しているから、賛成するんじゃないだろうか。

与党とか野党の問題でなく、なぜ、今水道民営化という問題がでてきているのかも含めて考える必要がある。

結論から言うと、私は、ライフラインである水道の民営化(民間委託では無い)には反対だ。

【根本的に違う民営化と民間委託】

民営化というのは、「役所がやっていることを民間でやる」のだが、こまかく言うと、いろいろな形がある。

行政改革が「構造改革」という名前に変わり、手を変え品を変え、様々な形で、私企業が公分野を担うようになってきている。

「仕事しない公務員では非効率だから」、私企業で、という話だが、民にまかせれば、全て解決かと言えばそれほど簡単な話では無い。

民で任せれば問題無くすべてうまくいくなら、民営化(民間委託も含めた)はすんなり進んだはずだ。
しかし、課題が有るから、業務委託 ⇒ 指定管理者制度 ⇒ 指定管理者制度利用料金制⇒PFI(BOT→BTO方式など)⇒コンセッション方式など様々な試行錯誤、というか、官の分野を民が如何にコントロールできるかの攻防が続けられてきているわけだ。

ここの、民営化と民間委託の違いがしっかりおさえられないと、今後の公共分野の民間開放の議論の論点がずれてくる。

ただ、議員どころか、役所の中でも、ちゃんと分かっていない職員が出てきたなあと感じるくらいだから、そういうことをきちんとおさえずに、民営化や民間委託が進められてきたということだと思う。

★民間委託
事業主体は行政(国とか都道府県・区市町村など)で、その事業を内容、期間、金額などを定め企業などに行わせること。(公共施設のエレベータ管理はエレベータ会社、掃除は清掃会社が行っているなど)

★民営化
行政(国とか都道府県・区市町村など)が事業主体であることをやめ、企業が事業主体となって、サービス提供すること。
食品の衛生基準や建物の耐震強度、場合によっては価格の上限などの基準が定められるが、基準の範囲内で、民が自由にサービスの質や量を決めることが出来、結果、価格に反映されることになる。
行政の関与は、基本的に法令になり、事業者は、経済活動の中でサービスを提供することになる。(郵政民営化、国鉄民営化など)

【既に進んでいる民間委託では不十分で民営化したい理由】

公共分野における民間委託は、かなり進んできている。
厳密には委託と言わず「指定」という行政処分だが、指定管理者制度による施設管理も多く採用されてきている。

ところが、今回の、大阪市の水道事業のように、多くの自治体は、あらかじめ、内容、期間、金額などを定めた「委託」ではなく、「民営化」を進めようとしているし、多くの民間企業が民営化を望んでいるのはなぜだろう。

自治体にしてみると自らの手を離れるので「楽」というメリットがある。
一方の事業者にしてみると、行政の手を離れるので「自由」になるというのが何よりのメリットだろう。

これは、
徹底した効率化がはかれるといった表現も可能だが、議会の関与が無くなり、経営の自由度が広がり、他企業と連携したり、区域外への展開が可能になるなど、ビジネスチャンスが広がるということだろう。
(大阪市の水道民営化について(検討素案)を参考)

これを、毎年、あるいは、数年間の期限と価格=売上げの決められた民間委託では、議会からとやかく言われる可能性もあるし、自由にビジネス展開(商売)することが出来ないから、民営化したいという「翻訳」はできないか。

【公的分野の民営化と民間の経済活動の違い】

一方で、公的分野の民営化を簡単に進められないのは、私たちのくらしに密着しているものばかりだからだ。
暮らしに密着した、ある意味、生きる死ぬに関る分野だから、「公」が担ってきたわけだ。
この分野のサービスを買って生きているともいえる。

医療、教育、保育、障害、高齢、道路、上下水道・・・・。
市場の原理だけでは成り立たないため、公金が莫大に投入されている分野でもある。

売り手にすれば、担えば、確実に、売上を確保できる分野と言っても良い。

だから、これらの分野を、民=「企業の経済活動」にフリーハンドでゆだねてしまう(民営化)と、毎日のくらしに大きく影響を及ぼす。

「仕事しない公務員では非効率だから」、私企業で、という話だが、民にまかせれば、全て解決かと言えばそれほど簡単な話では無い。というのはそういうことだ。

次は、いよいよ、大阪市の水道民営化の中身について検証する