保育環境の確保と優先順位〜国基準緩和は優先されるべきか〜

今、大田区に求められる待機児対策【3】

子どもを持ちながら就労を継続させたいという願いにこたえなければ、少子化はさらにすすみ、労働力率も一層下がっていくでしょう。
 一旦仕事をやめ正規雇用で再就職することがどれほど困難かは、私たちも良く知るところです。

 そこで出てくるのが保育園の設置基準の緩和です。
 国基準が都市部の保育園設置を阻害しているから、緩和して高まる保育需要にこたえるために国基準を緩和し保育園設置を進めようといういうのです。

 しかし、東京では、既に、認可基準を緩和した認証基準での保育園設置が進んでいます。さらにその基準も下げるということです。

 また、高まる保育ニーズに保育園がすべて答えていけば、子どもの総数は減少が予測されているため近い将来幼稚園が定員割れを起こす可能性があります。
 
 今、働きたいという要望にこたえるために、何をすべきでしょうか。

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  2つめは、保育環境の確保と優先順位の問題です。

 都市部の待機児対策と地方主権を盾に保育園の面積基準が緩和の方向で進もうとしています。こども一人当たりの面積や保育士の数、勤務形態、資格の有無などが認可保育園の基準になっていますが、これらの存在が、保育園の新設を阻み、待機児が解消されないというのが、主な論点のように思います。

 今回の大田区の待機児対策も、「認可保育園」「認証保育所」「グループ保育室」「保育ママ」・・・と、こどもひとりあたりの設置基準も税金投入額も異なる4つの形態で待機児対策を行うとしていますが、345人の定員増のうち2/3の230人は国基準以下で定員増を行っています。
 しかも、認可保育園に入れるのか入れないのかは、緊急度や働き方、収入などよりもその地域の待機児の数に左右されるという非常に不公平な実態があります。

 保育園の定員増が望めないから保育園の国基準を撤廃すると言い、大田区でも国基準以下の保育施設による定員増が進んでいますが、果たしてその通りなのでしょうか。

国基準よりさらに良好な保育環境で保育している都市部の実態
 待機児問題が都市部特有の問題であることは周知の通りですが、時事通信社が昨年12月に行ったアンケートにより、その、待機児問題の深刻な23区中21区、政令市18市中7市が国基準より広い面積を実際には最低基準としていることが判明しています。

保育のダブルスタンダード、トリプルスタンダード・・・
 国基準を守っていたのでは保育園を設置できないから、国基準を緩和しさらに環境水準の低い保育園を設置しようというのが今の日本のながれですが、実際には、都市部のかなりの公立保育園で国基準より良好な環境での保育が行われているのです。
 しかも東京都では、国基準より低い認証保育所の基準を緩和し、さらに子どもたちを詰め込もうとしていますがもってのほかです。

 ここに、大田区の認可保育園の年齢ごと面積一覧があります。
 大田区は、昨年の第三回定例会において湯本区議の質問に対して、国基準を採用していると答弁していますが、区の年齢別部屋面積の資料をもとに単純に基準面積で割ってみると0歳1歳で500人弱2歳から5歳で1000人以上の定員を増やせることがわかります。

 また、保育園ごと、さらに年齢別部屋ごとに細かくみてみると国基準ちょうどで定員を算出している部屋もあれば、過去の都加算面積5㎡で算出しても定員を増やせる部屋もあり、必ずしもこの定員設定が保育水準を守るための一定の基準で設定されているのでないことがわかります。

大田区の基準は?
 区立認可保育園がこうした実態にある一方で、大田区は、国基準よりさらに低い基準の「認証保育所」や「グループ保育室」を設置しようとしているのですから、区が、こどもの保育環境を整えるために余裕ある定員設定をしてきたわけでもないのでしょう。

 保育需要が少ない地域はともかく、保育需要が高く待機児の多いたとえば調布地域の保育園でさえ、国基準での定員設定のみならず、都加算の5㎡で算定しても余裕のある状況は、どう考えても納得がいきません。全ての定員を国基準で目いっぱい増やすことはありませんが、こどもの保育環境を守りながら、少なくとも、保育需要が高い地域の定員は緊急に見直すべきではないでしょうか。

さらに高まるべき保育設置基準
 私は、国基準が子どもの環境に十分であるとは考えていません。日本の基準は欧米に比べればまだまだ不十分であり、子どもの育つ環境は、さらに充実させていかなければならないと考えています。

 しかし、だからといって、高まる就労需要を放置するわけにはいきません。仮に、保育園が確保できずに仕事を辞めてしまえば、正規雇用の再就職が非常に困難なことはだれもが知るところです。

 今後の就労需要がどの程度の速度でどこまで高まるのかが不透明な現状においては、既存の保育施設を有効活用することが最も効果的効率的であると考えます。

 昨年の第三回定例会においてこども家庭部長は、0歳児の定員を国基準で見直した場合266人の定員増になり、定員枠拡大について大勢の待機児がいるという現実をとらえ十分検討すると答弁しましたが、はたして検討したのでしょうか。

そこで質問します。

 大田区が国基準を採用したのは、いつからですか?なぜ、その間定員見直しをせず放置したのですか?
 いま、現行職員数と国基準で保育定員を見直したら、何人の定員増が可能になりますか?また保育士を増員することで増やせる定員は何人ですか?

緊急対策として一時的に大田区の認可保育園の定員の国基準での見直しを
 今回の待機児の緊急対策として、一時的に最優先で認可保育園の定員を見直し、この4月待機児ゼロにすべきです。できないのであれば、認可保育園より基準が低いにもかかわらず区民負担の大きな認証保育所や認可外保育園として位置づけられるグループ保育室設置を優先し。区民の財産である認可保育園を有効活用しない理由をお答えください。

 現在の保育需要のままであれば、5年後以降には、認可保育園にも余裕がでてきます。また、就労需要が高まっても、幼稚園などの預かり保育が進めば、必ずしも保育園希望者だけが増えることにはなりません。その際に、大田区のあるべき保育環境という視点から保育基準を見直してはどうでしょうか。それこそが、今、区民が望むことであり、区が行うべきことでもあると考えます。

 
なかのひと