答弁付【議会 質問】消費税10%への増税に伴い大田区が「区民のため」「財政のため」に今なすべきこと

大田区議会第三回定例会で質問と答弁を掲載します。

◆答弁:青字◆

 

消費税10%増税法案が可決しました。

私は現状での消費税増税には反対ですが、今日は、消費税増税に伴い求められている大田区の役割について質問します。

日本の消費税は欧米に比べ、税率は低いのですが、5%の割に国税に占める割合が他国に比べ圧倒的に高いことが財務省の資料(資料1)から分かります。政府は、財源の不足を消費税に求めた理由を「広く薄く負担し公平で景気による変動が少ない安定的財源だから」と説明していますが、そのこと自体が、経済活動でいう固定費に課税されていることを意味しています。 

課税率5%の消費税が税収の3割を占めているのは、他国と比べ食品や医薬品など課税対象が広いからだと言われているのです。消費税が2倍になれば、家計の固定費の一つであるエンゲル係数の高い世帯ほど消費税の影響が大きくなります。一般に、エンゲル係数が、高いほど生活水準が低いと言われていますから、日本の消費税増税の家計への影響は決して少なく無いと言えます。

区政をめぐる課題は、高齢化、少子化による労働人口の減少、人口減少に伴う経済規模の縮小と税収減、さらに世界規模の金融・経済のグローバル化等に呼応した雇用確保です。これらの社会状況とそれに伴う区民生活の変化に対して、大田区の施策は対応できているでしょうか。消費税が10%になった時にも安定的な住民サービスを提供するとともに区民生活を守ることができるでしょうか。


平成23年度決算額でみる大田区の地方消費税交付額は約80億円で、消費税が10%に増税されると約176億になると試算(資料4)
できますが、これは、いったい何に使われるのでしょうか。

たとえば、公共施設の老朽化による整備需要が増すなか、大田区の施設整備計画は今後10年間、施設の在り方を見直しせずに大田区の公共建築物549施設、延べ床面積約124万㎡、区道総延長約791㎞ほか(資料2)をただ漫然と整備するものでしかありません。

このことは、大田区の学校施設が57ありながら、年に2校ペースでなんとか築75年以内に改築できると示されていた施設整備計画について財政難を理由に1校に変更してしまったことや、平成23年度の区道改良実績9,842㎡のペース(資料3)で今後改良を進めれば区道総延長約791㎞を全て改良するのに幅4mで換算しても320年以上かかる計算になることなどからもわかります。

しかも、今回の補正予算で道路改修費を計上していますが、決算が確定し余裕ができれば計上するということが大田区の施設整備の無計画性を示しています。すでに公共施設は財政からみれば維持できない過剰な規模になっていると言わざるをえず、今後、抜本的な施設の在り方を考えなければ、施設の維持も財政の維持も不可能です。

だからと言って、消費税増税分は、今のままの施設更新需要を理由に帳尻を合わせるように、施設整備や土木工事に拡大投入されて良いでしょうか。

一方、財政需要は建設・土木分野だけにとどまりません。大田区は、この間、財政悪化の要因を高齢化と生活保護世帯の増加としていますが、大田区としてこれらの財政悪化要因に対してどのような対策を講じてきたでしょうか。
大田区の生活保護対策は、「不正受給」と「自立支援」が中心ですが、そもそも「生活保護にならない」ことが重要で、税金で生活を支えられる立場と税金を支払っていただく立場とでは180度異なります。人権的配慮からは当然のこと、財政的視点からみても生活保護対策は区民全体の利益です。

生活保護にならないためにまず重要なのは、「住まい」と「就労」の確保です。特に、地価の高い都市部23区の場合、住居費が支払えなくなることが生活保護になるきっかけであることも少なくありません。

【住宅政策】

 

しかし、住宅マスタープランに記されているように平成20 年時点で、区内の約3万6 千戸が賃貸住宅への転用が可能な空き家住宅で、こうした背景を反映する形で、国や都の住宅政策は、既に公営住宅の新規建設を行わない量から質への転換を行っています。一方、現状における大田区の住宅困窮者の課題は、低収入で住むことのできる住居、高齢者や障がい者に対応したバリアフリー住戸の確保であり、そのための保証人の問題でしょう。

大田区の住宅政策と言えば、平成21年度末時点で区営住宅1,313戸とシルバービア388戸など(資料5)に限られていますが、30倍を超える応募状況尾などから1400人前後の区民が区営住宅入居を希望していると推測できます。

大田区民の課税所得額は減る一方、安価な住宅ニーズはますます高まっています。区営住宅対象と言われる年間所得400万円以下の区民は約3万人という住宅課の試算がありますが、消費税増税になれば、これらの家庭の経済的負担が増し区営住宅の区民ニーズはさらに大きくならないでしょうか。

新たに供給される住宅の平均住戸面積が年々小規模化していますが、国が平成15年に最低住戸面積を引き上げたところ上向きに転じました(住宅マスタープランより)。このことは、市場原理だけにまかせても良質な住戸を提供することはできないが、政策により誘導できることを示しています。大田区に数多くの空き家がある状況を踏まえれば、借り上げ住宅制度に変えることで、民間ストックの質の向上も誘導することができるのです。

区営住宅の維持管理費の1/2が国や東京都から補助されますが、築後20年間に限られそれ以降は100%大田区負担です。今や、全体の4割に当たる築20年を過ぎた区営住宅の維持管理は、100%大田区が負担しています。

大田区の区営住宅1313戸を評価すれば、「平成18年から平成23年に、42億かけて建設維持し、住宅戸数を83戸増やしながら入居者数は177人も減らした」ということになります。(資料5)大田区全体でも、世帯数は増えながら一世帯当たりの人数は減っているため圧倒的に数の足りない区営住宅を漫然と維持することは、一部の困窮者だけに限定した政策に他ならず区営住宅事業が破たんしていることは明らかです。区営住宅で行える住宅支援には限界があり、指摘した大田区の公共施設整備の状況から考えても、民間ストックの空き家状況をみても、莫大な費用負担をして建て替えるより、借り上げや家賃補助とする方が有効です。

そこでうかがいます。現在の国の住宅政策が民間の住宅ストックへの転換になっているのなら、事業の目的も補助金投入先も民間の賃貸住宅の質の向上へと転換していくべきで、そのためには、一定基準を備えた優良住宅を借りた低所得者・障がい者・高齢者に対して家賃補助を行うなどの政策転換が必要です。

大田区議会としても意見書を発していくべきと考えますが、大田区としても国に対し、現場から問題を説明し理解を求める時期に来ていると考えますがいかがですか。

 

●まちづくり推進部長

 民間賃貸住宅にお住まいの低所得者等に対する家賃補助についてのご質問ですが、国は、戦後の住宅政策が一定の成果をあげ、全国的に住宅ストックが充足してきたことや、本格的な少子・高齢化と人口減少などの状況をうけて、平成18年に住生活基本法と住生活基本計画を定め、平成23年に改正しています。

このなかで、今後、住生活全般の質の向上を図るとともに、低額所得者、高齢者などの居住の安全が確保されるよう、公営住宅等を適切に供給するとともに、民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため情報提供等を行うとしています。

そのうえ更に、低額所得者・障害者・高齢者に対して家賃補助を行うとなると、対象者がかなりの数にのぼるため、公営住宅制度と併せて実施するのはいかがかと考えます。区といたしましては、まずは公営住宅制度を維持しながら、今後も社会的弱者に対する住宅政策を推進してまいります。

 

【障がい者雇用】

住まいがあっても仕事がなければ生活を維持することはできません。そこで次に障がい者の雇用について質問します。

国・及び地方公共団体の法定雇用率は、民間1.8%に対して2.1%と若干高めですが、23区区長会では、平成56年にこの2.1%をさらに上回る3%という目標を設定しています。(資料6)来年度から法定雇用率が、民間、国及び地方公共団体とも0.2%引き上げられる機会に、区長会、大田区として0.2%引き上げ3.2%という目標を掲げてもおかしくありません。

このように民間を上回る法定雇用率を掲げて障がい者雇用をリードすべき存在の国・地方公共団体ですが、その中身をみれば、必ずしも民間の手本と呼べる存在になってきていなかったことを指摘しなければなりません。

過去10年間の大田区の障がい者雇用の問題を指摘すれば以下の点になるでしょう。

平成14年に165人だった法定雇用数が、平成24年には128人(資料7)と大幅に減っている。

② 障がい者雇用数は37人と大幅に減っているが、決算規模でみれば、一般会計で平成14年度決算1,786億円から23年には2332億円を計上しており税金で担う公的分野、範囲は拡大している。

しかも、国・行政分野における法定雇用率は、民間の1.8%に比べ2.1%と高かったものの、職員数の85%に対して2.1%を守ればよいという除外規定を作ってきました。奇しくも2.1%の0.85がけは民間法定雇用率と同じ1.8%に他ならず、公的分野における上乗せ法定雇用率は、除外項目によって自ら形骸化させてきたと言ってもよい運用をしてきています。さすがにこうした運用は適切ではなく、平成19年の労働政策審議会の意見書等により、廃止を目指すことが明らかになり、除外率は引き下げられてきています。不適切な除外項目がなければ、平成14年の職員6,220人に対する自主目標3%の雇用数は187人だったわけで、これが現在、2/3の128人でよしとされているのは、民営化や民間委託による職員の削減によるものです。

それでは公務員が担っていないのだから、法定雇用者数を減らしていいという理屈が公共分野において成り立つでしょうか。公共の担い手が拡大するとともに、雇用形態も変わってきているなか、どこまでを公的責任の範囲として障がい者雇用を行っていくかということについて、考え直さなければならない時期にきています。

これまで私は、大田区に対して、行政のCSR、あるいは、政策入札、総合評価方式などという形で、社会的責任を果たすよう提案してきました。大阪府では「行政の福祉化」を目指し庁内での雇用について検討するとともに、事業者選定において、障がい者雇用を評価項目に入れる「総合評価方式」を採用しています。そこでうかがいます。

① 大田区の障がい者雇用については、公務員の数だけを対象とするのでは無く、委託先なども含め平成14年の187人程度は確保すること。あるいは、大田区の財政規模に連動し、障がい者雇用に努めること。

② 公的分野を担う民間事業者に対し、障がい者雇用を守っている事業者を評価するしくみを作ること。

③ 特に金額の大きな事業者選定にあたっては、障がい者雇用など主要な政策目的を事業者に義務として課すこと。

④ これらの障がいには身体だけでなく、知的・精神も含めること。

といったことを導入すべきと考えますがいかがでしょうか。

 

●管理担当部長

 私からは、まず職員の障害者雇用率に関するお尋ねにお答えをいたします。ご案内のように、障害者の雇用につきましては、法律によりまして最低限の雇用率が定められております。平成24年度の大田区役所の障害者雇用率は2.61%で、法に定める障害者雇用率の2.1%を0.5ポイントほど上回っております。私共といたしましても、今後とも、公的機関として区が率先して障害者の雇用を推進すべきであること、あるいは、法改正に伴い、来年度から国、地方公共団体の障害者法定雇用率が引き上げられること、さらには、区長会の目標設定等を踏まえまして、障害者の採用及び雇用の継続につきまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。

●管理担当部長

次に、公的分野を担う民間事業者に対する、障害者雇用等の評価するしくみ等についてお答えを申し上げます。

現在、工事請負契約におきまして、総合評価落札方式による入札を試行的に実施しておりますが、この中で価格以外の評価項目の1つに、事業者における障害者雇用の実績を加点対象としているところでございます。

また、自治法施行令に規定する、一定の政策目的を達成するための随意契約といたしまして、主に役務の提供に関する契約をいたしまして、シルバー人材センターに対して今年度年度契約で37件、約7億330万円、障害者支援施設等につきましては、身体だけではなく知的・精神を含む16団体と28件、約1億1千万円の契約実績となっているところでございます。

このような実態を踏まえたうえ、公共調達における障害者雇用等の評価のしくみにつきましは、今後の研究手段の一つとさせていただきたい、という風に考えているところでございます。私からは以上でございます。


【ひとり親家庭への支援】

 

さて、仕事につけたとしても、それを継続するために支援が必要な場合があります。一人親家庭への支援について就労の視点から質問します。

今年の4月の待機児は397人で、父子家庭は申請者3人全員が入園できた一方、母子家庭の申請者178人中入園できたのは145人で33人が入園できませんでした。これは、ひとり親家庭の加算ポイントが3点で、正規職員であれば満点の22点にさらに3点が加算されるため入園しやすいことも大きな要因になっているようです。

一方、女性の貧困が問題になっていますが、その背景には規制緩和による、雇用形態の多様化による非正規職員の増加があり、いまや男性の19.6%に対し女性の54.7%が非正規雇用です。母子家庭で入園できなかった33人が非正規雇用である可能性は否定できません。

先日相談を受けた女性は、一人で1歳半のお子さんを育てていらっしゃいますが、ご両親は他界し頼れる身内もありません。試用期間内に子どもの病気で休むことが多かったため「自己都合」という名目で「解雇」されました。少しでも安い家賃をと転居し転園申請していた時期が、解雇求職中だったため、評価ポイントが下がり結局新しい仕事が見付かったものの、転園出来ず以前住んでいた近くの保育園に片道35分かけて自転車で通い通勤することになっています。

「解雇」されたことも、非常勤に変わったこともご本人の選択ではなく、正規の仕事に就こうにも募集は極めて少ない状況です。解雇されたなら、とりあえずバイトを探すとか、認証保育園に預けると点数が上がりますなどというアドバイスをする職員がいるようですが、認可保育園に入園できなかったひとり親家庭で認証保育所の保育料月7万円程度を支払うことが困難な方たちはどのような道を選び生計を維持すべきでしょうか。ひとり親家庭の就労を確保することは、生活保護世帯にしないことと決して無関係ではありません。

そこで、うかがいます。

大田区の入園は、そもそも圧倒的に数が足りないとともに居住地域により、入園のしやすさに3倍以上の差があること自体が大きな問題です。昨年提案させていただいたように、育休明けの保育を確保するために保育の予約制度を導入し、育児休業制度に合わせて定員を0歳から1歳へとシフトするとともに、どうしても0歳から就労しなければならないが認可園に入所できなかった方たちの認証保育所との保育料差額補助制度を創設すれば、速やかに待機児問題を改善させることが可能で、緊急対策として取り組むべきです。

それができないのであれば、ひとり親家庭や両親ともに失業するなど経済的困窮が認められる方の入園については、国基準はじゅん守した上で、年度の途中でも定員を増やせる運用を行い、政策的に受け入れるべきです。

一方で、今回、改めて選考基準を点検したところ、雇用形態の変化や経済状況の悪化に必ずしも対応できていない部分が見られます。求職のポイントが低く、失業や経済困窮の中仕事を探す方たちのニーズには対応できていません。また、月12日以上16日以下1日4時間以上の就労で5ポイント、内職なら7ポイント(資料9・10)、ですが、これではひとり親家庭で就労内定しても入園できません。

そこでうかがいます。就労支援の必要性は明白ですが、大田区の選考基準は雇用形態の変化や経済状況の悪化など社会変化にともなう区民の現状を反映できていません。今すぐすみやかに変更すべきと考えますがいかがですか。

 

 

 

●こども家庭部長

私からは、ひとり親家庭支援に関しますご質問にお答えいたします。

まず、厚生労働省が認める弾力的な運用により、ひとり親家庭などの児童が保育園に入園できるようにすべきではないかとのご質問でございます。この弾力的な運用の内容は、認可保育所における児童1人当たりの面積基準が3.3㎡である0歳児、1歳児につきまして、年度の途中に定員を超えて入所させる場合の面積を、1人当たり2.5㎡とするものでございます。これは、あくまで緊急対応ということでございまして、認可保育所増設までの間の、一時的なつなぎに利用できるなど活用は限定的でございます。

また、平成24年4.月から平成27年3月までの時限措置であることに加え、こどもの安全など施設の状況を十分配慮する必要もございまして、この制度の活用は困難であると考えてございます。区といたしましては、「大田区保育サービス基盤拡充のための3か年プラン」に基づきまして保育定員を着実に増やしてまいりたいと考えてございます。

 

●こども家庭部長

次に、認可保育所の入所選考基準について、雇用形態の変化や経済状況の悪化など社会変化に伴う区民の現状を反映すべきとのご質問についてでございます。認可保育所の入所選考にあたりましては、家庭で保育できない状況を選考基準に従って指数化し、指数の高い順に入所を決定しています。議員ご指摘のひとり親家庭の場合には、申請者本人の就労等の状況による指数に配偶者不在による11点を加算した上で、さらに調整指数として3点の加算を行っておりまして、ひとり親家庭の状況を踏まえ、選考指数の加算を行っているところでございます。このほか、保護者が難病や障害をお持ちの場合にも、指数を加算してございまして、困難な状況を入所選考に反映できますよう努めているところでございます。いずれにいたしましても、入所選考指数のあり方につきましては、総合的な見地から研究すべき課題と認識してございます。私からは以上でございます。

私たち区民は地価が高い、人が多いことを理屈に住民サービスが提供できないと説明されてきました。しかし、日本を代表する優良企業が本社を構え、人が多く、地価が高い日本で最も豊かな法人住民税・特別区民税・固定資産税などの税源を持つ自治体です。その日本で最も豊かな地域において、しかも不交付団体であるにもかかわらずなぜ、こうした基本的公共サービスが安定的に提供できず待機児を出すことになるのでしょうか。ここに日本の政治の根本的問題があることを提起させていただき質問を終わります。