地区計画を使いこなすには〜市民から見た問題点と可能性〜

第2回もめタネ研公開研究会

あなたの住まいを選ぶ基準は何ですか。
 交通の便・広さ・日当たり・自然(緑)・買い物や医療機関などの利便性・教育・・・・。
 基準には、誰と住むか、そして、今、人生の中でどんなステージにいるのかも大きく関わってきます。

 ところが、期待した住環境があるとき突然変わってしまう。そんなことが起きてしまうことがあります。
 長らく放置されてきた空き地、駐車場、学校や工場・社宅などの跡地に中高層マンションが建て替わる。法が許す限界まで効率を追求する事業者と、法を満たすだけでは納得しない住民の間での「もめごと(建築紛争)」が、深刻化しています。

 建築家や都市計画コンサルタント・市民が集まり開催した公開研究会に参加しました。

 「もめタネ研」は「建築紛争」の体験をきっかけに、紛争の原因を明らかにしまちづくりのタネにしていこうとする研究会です。
 
 ◆もめタネ研究会の紹介(活動報告書より)
 行政内部には「建築紛争」の対応部署があるが、紛争は単にもめごととして処理され、ほとんどの場合、その原因を根本的に取り除くための方策の検討や計画づくりへのフィードバックが行なわれていない。
 一方、建築竣工後は、紛争の当事者住民は疲れ果てて、新たな思いで紛争の起こらないまちづくりに取り組む余力がないことが多く見受けられる。
 

 こうした現状から、建築紛争の当事者の報告を受け情報交換をしたり、提言書・意見書を提出しているグループです。

 今回の研究会では、きめ細かくまちの有り方を決めることのできる「地区計画制度」について学習すると共に、「地区計画」を策定した事例についての紹介が行なわれました。

【地区計画とは】
・首長が決定
・住民等は、策定の申出または提案可能
・地区計画に定めたことを建築制限条例に定めると、建築確認などにおけるチェック対象となる
・大きな建物の建築を制限をする強化型と「再開発等促進区」を定める規制緩和型の地区計画がある

【なぜ地区計画か】
・土地所有者の意見の反映が一般の都市計画の場合よりきめ細かく定められている
・特に申出制度(要件は条例ゆだねられているが大田区には条例上の規定が無い)は手続などの自由度が高い
*以下、建築協定との比較
・建築協定は民間同士の協定。住民自身が守るべきものなのに対し、地区計画は首長が守るべきもの
・建築協定では建築確認などはチェックされないが、地区計画であれば、建築制限条例(容積率・高さ・建ぺい率・緑化率・形態、色彩その他の意匠他)化によりチェックされる
・建築協定が有限なのに対し。、地区計画は無期限

◆報告事例
①吉祥寺東町文教地区
  ・法政一中高移転跡地
  ・申出制度を活用
  ・素案は住民の中の建築家・弁護士が策定
  ・武蔵野市に地区計画策定に関する助成金あり
  ・謄本代なども市が負担
  
②世田谷区世田谷
  ・都市計画提案制度(都内初の提案制度(所有者に限らず提案できる。要件は法で定められている。提案をふまえた決定をしない場合、提案者に理由を通知)利用)
  ・0.9haと狭い地域
  ・提案は(事業者以外の)地権者全員
  ・近隣商業の含まれる地域であったが、高さ制限10mを確保

③小田原市城山地区
  ・小田原城址に天守閣を超える高さの建物。用地は市が買収し終結したが
   再発防止策として計画策定
  ・提案制度活用
  ・約50世帯に主婦三人が反対・賛成かかわりなくきめ細かく対応。
  ・地権者確認のためなどの謄本費用は一部地権者で負担。他は、提案者負担。
  
④巣鴨地蔵通り
  ・申出制度活用
  ・建築確認は提出されたが既存不適格により建て替えが不利になることから
   高さ制限を確保
  ・高ければ資産価値がつくのではなく良好な住環境をうったえた。
   良いまちでありたい。(ゴーストタウン化、日陰)
  
 大田区議会は、陳情でマンション紛争を取り扱いません。
 地域の開発により住環境への大きな変化を余儀なくされる区民に対し、議会・行政・市民がなすべきことを考えなくてはなりません。