崩れてきた大田区の職住接近「人口増」「昼間人口微増」「就業者減」

 
 大田区は、昼間人口と夜間人口がほぼ同数。職住接近は大田区のひとつの特徴でした。
 しかし、ここに来て、その大田区の特徴が変わってきています。
 
 昼間に大田区で働く人が減ってきています。区内に住んで区内で働く人も、区外から大田区に働きに来ている人も減っているのです。(松本恭治高崎健康福祉大学教授集計の総務省社会人口体系データベースより)

 今日は、大田区の人口増の背景にある就業者減について考えてみます。

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 人口で大田区を語るとき、問題になるのは、総人口。最近では子どもの数が少し取り上げられるようになりましたが、いずれも、微増と表現され、人口減少への危機感が大田区ではまだまだ無いように感じます。

 しかし、これを、細かくみてみると様々な課題が見えてきます。

 人口と従業者数等(松本先生資料より) 

■人口 〈4.6%増〉 ■
 1995年 636千人
 2005年 666千人

■昼間人口〈1.5%増〉 ■
 1995年 648千人
 2005年 657千人

■区内就業者〈△9.0%〉 ■
 1995年 391千人
 2005年 350千人
  
■区外からの就業者〈△10.3%〉 ■
 1995年 197千人
 2005年 174千人
 
 昼間人口 昭和58年に9千を超えていた工場数が、平成17年に約4千8百ですから、区内就業者数が減るのは当然といえば当然ですが、データでみると 区内に住んで区内で働く人は41千人、また区外から来て働く人も23千人減っています。

 平成20年に策定された大田区基本構想には「昭和58年に9千を超えていた工場数も平成17年には約4千8 百へと減少し・・大規模工場が集合住宅や商業施設へと変わり、まちの姿にも大きな変化が・・」と記載されています。
 
 これらの変化を区は、産業ネットワーク、技術や技能の継承、大規模工場から集合住宅への変化としてとらえてはいますが、それが、大田区の経済やまちづくりに与える影響として検証されてきていないように感じます。

 都内の他区市と比較してみますと、都心部で昼間人口が減っていることがわかります。
 大田区も周辺区と同様、昼間人口はわずかに増えているものの、就業者数は1割程度(=41千人)減少しています。
 

 このデータをまとめられた松本先生は、「夜間人口が増えたので相対的に昼間人口が減ったのではなく」「長期不況で倒産、リストラ、新規採用減、退職者の増加、安い家賃の地域に企業が転出」したことが昼間人口を減らしていると分析しています。
 「デフレの正体」の藻谷浩介さん的に分析すれば、労働力人口が減ったということになるのでしょうか。
 
 お弁当をたのんだら、仕事帰りに一杯飲みにいったら、蒲田でちょっと買い物したら、缶ジュースを1本買ったら、タバコを一箱買えば・・・。様々な消費を思い浮かべると、経済活動に与える影響も少なくないことが想像できます。

 首都圏をみると、超高層マンションがたくさん建設されている都市は人口増がみられますが、一方で空家率も高くなっています。 (松本先生資料:空家率) 量的に充足している住宅の数がさらに増えれば、選別が起こり競争力の無い住宅が空家になっていくのです。

 量から質へ変わったと言われて久しい住宅ですが、劇的な人口増加は望めず、人口減少と言われる時代に入り、まちづくりは更に多くの課題を抱えていると言っていいでしょう。
 
 



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