まちづくり条例改正で、大田区の葬祭場や遺体安置所等設置は規制できるか

噂の東京マガジンでとありあげたので、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、大田区大森南に遺体安置所ができて問題になっています。

その少し前からは、大森の商店街の一角に葬祭場ができるというのが問題になっています。

まちづくりについては、他にも様々な課題がありますが、区議会で意見書を出したことも影響したのか、テレビで取り上げたからなのか、異例の速さで「条例改正」すると報告があり、昨日(12月19日)改正点についての説明会がありました。

「まちづくり条例」改正により、大田区の住環境は守れるのでしょうか。何が変わるのでしょうか。

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【1】対象となる施設

・葬祭場
  業として葬儀(骨葬も含む)を行う施設
・遺体保管所
  葬儀を行う施設を持たず、業として遺体を保管する施設
・エンバーミング施設
  葬儀を行う施設を持たず、業として薬剤を使った遺体の保存、修復などの作業を行う施設

大田区は、

【2】条例改正の趣旨を以下のように記しています。

今回の改正は、葬祭場等の用途に供する建築物を設置する際の周辺の環境への配慮や、管理運営上の事項について追加改正するものです。

ところが、
追加項目を見ると以下のようになっています。

第4章 葬祭場等設置に関する調整

葬祭場等の施設を設置する事業者に協力を求め、事業者、近隣住民等の相互理解を深めることで、近隣住民との紛争を未然に防止し、良好な住環境、生活環境の形成を目指すものです。

周辺環境の配慮という言葉はあるものの、この条例改正が近隣住民との紛争防止にあることが、わかります。

【3】改正事項の疑問、不安点

今回の改正には、下記のような問題があります。

これらの問題から、今回のこの条例改正が、条例改正の趣旨である周辺環境への配慮が形式化し、区民の望む環境配慮になっておらず、結果として、単なる紛争予防条例としてしか機能させないのではないかという疑問、不安につながっています。

(次のように解釈できるのでは?)
①説明範囲が明確ではない
②近隣住民への説明を個別にするのか説明会を開催するかの選択を事業者にゆだねる条項になっているため、たとえ住民が説明会開催を求めても説明会を開催しなくてもよい内容になっている。説明会開催が義務付けられなければ、行って不在であれば、ポストに説明の書面を入れても説明したことになってしまう。
③環境整備について義務付けているのは
 ・100㎡あたり1台の駐車場整備(300㎡未満は3台)
 ・敷地内に運送用自動車のスペース確保
 ・敷地境界線から建物まで1mあける。ただし、外壁の構造や開口部の状況で(見えないよう配慮されていると)区長が認めれば例外規定がある。
 ・病院、有床診療所、老人入所施設などの敷地100m以内に設置する場合には、施設の理解を得るように努めなければならない。が努力規定なので努めて理解を得られなくても設置可能。
 ・その他、建物外観の景観配慮。
上記で、逆にいえば、これらさえ守られれば、認めることになる。
④区は、事業者と区長との協定書の交換と記載しているが、義務ではない(交換しなければならないではない)。また、その際、協定書の内容(協定の項目)が重要だが、仮に協定が義務付けられるとしても、その内容は、③の項目のみで、建築物としての配慮のみ。住民が最も注目する近隣住環境への配慮と合意による協定書締結でなくても問題ない内容になっている。
⑤この条例の適用は、第三者に継承されるため、いったん事業ができるようになれば、見直しができない。
⑥そもそも、区と事前協議をしたのち、区民への説明に入るという順序に見える。
 事前協議内容が、仮に③の内容だけであるとするなら、環境についての協議は無いまま区が認めたかたちになる。区民説明会開催と協定書締結の時間軸の定めが見えにくいが、説明資料からは、区長との協定書締結ののちに、住民説明会開催もあり得るように見える。
 区と協議が済んだのちに区民に説明という手順は、いわば、許可済みのものについての(当日説明会での区民の言葉をお借りすれば)「ガス抜き」の説明でしか無いように読み取れる。

区は、法規制がないことを理由に、条例改正に限界があると説明していましたが、事前の住民との合意形成を重視し、地域の住環境を守ろうとしている他自治体事例もあり、区の説明は言い訳にしか聞こえません。

確かに、建ててはいけないと言うことはできません。
しかし、まちづくり条例の役割は、地域のまち並みや環境に照らし合わせ、都市計画マスタ−プランに基づいたまちへと誘導することで、先進自治体の多くがそうした姿勢での条例設置をしています。

大田区が、まちづくり条例改正にどのような姿勢でのぞんでいるのかが問われます。