①災害廃棄物広域処理の課題〜被災地のがれき処理は何故進まないのか〜第一回定例会質問より

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第一回定例会が始まりました。

今回は、災害廃棄物の広域処理の課題について質問しました。
広域処理が進まない理由をNIMBYとして済ませようとする動きがあります。しかし、考えてみれば、環境問題、もっと広い意味でとらえれば政治課題は、NIMBYから始まると言っても過言ではありません。

ある時は、それが「わがまま」とされ、また、ある時は政治がそれを解決します。国立のマンション紛争に始まった住民の景観について問題意識は「景観法」制定に至っています。それまで無かった景観という価値が認められているのです。

個人的な課題が「広く共有できた時」それが、政治課題になって政策につながります。NIMBYを無視するなら、民主主義は成り立ちません。

災害廃棄物の広域処理をNIMBYがNIMBYになるのか、それとも、政治課題になりうるのかは、”私たち”が決めることです。

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大田・生活者ネットワーク奈須りえです。

最近目につくのが災害廃棄物広域処理についての報道です。

たとえば、2月21日の共同通信(資料①)は、「環境省は2月21日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県沿岸部(福島の警戒区域を除く)のがれきの処理状況を公表した。計2252万8000トンのがれきのうち、埋め立てや再利用などの最終処分を終えた量は、20日時点で計117万6000トンと全体の5%にとどまった。同省は岩手、宮城両県の木材がれき400万トンを被災地外で広域処理を行うことを想定している。しかし、現在は東京都や山形県が受け入れているだけ。2014年3月末までに全てのがれきを最終処分する政府目標の達成は厳しい状況という」
と報道しています。

この報道をきくと、現在、被災地の災害廃棄物の処理が5%しか進まない理由が、広域処理受入れが進まないためと誤解されかねません。

しかし、よく読めば、災害廃棄物の総量は約2,300万トンで、そのうち広域処理分は約400万トンと言っていますから、広域処理の割合がおよそ十数%で、仮に広域処理分がすべて処理されたとしても9割近いがれきの山は残り、被災地の災害廃棄物の処理が進まない理由が広域処理受入れ以外のところにあることがわかります。

しかも、この記事では、災害廃棄物総量に、国が原則県内処理としてきた福島県分まで含めているのが気になります。福島県の災害廃棄物も広域処理の対象になったのでしょうか。
こうした報道のしかたにより、災害廃棄物広域処理が進まない理由が、受け入れに反対する住民だけのせいにされることはないでしょうか。

岩手県に聞いたところ、現地で災害廃棄物の処理が進まないのは、復興計画がたたないからとこたえています。

まさか、復興の進まない理由を国民に転嫁するために情報提供しているはずはないと思いますが、こうした報道がなされることで、被災地の災害廃棄物の処理が進まない本当の理由ががれき受け入れ反対運動にすり替えられてしまうことを心配します。

①そこでうかがいます。
災害廃棄物処理が進まない理由が、災害廃棄物の約2割を占める広域処理受入れが進まないことで無いのはご存じだと思いますが、それでは、なぜ進まないのでしょうか?

一方で、今回の災害廃棄物の広域処理は、国が決めたしくみに、結果として、地方が従う形になっています。

東京23区は、23区内で排出される一般廃棄物の共同処理を行うために東京二十三区清掃一部事務組合を設立しています。

今回、災害廃棄物の受け入れにあたっては、東京都、東京都環境整備公社、宮城県や岩手県、それに、女川町、宮古市、東京二十三区清掃一部事務組合などでそれぞれ協定書を締結しています。しかし、協定書は単なる形式にすぎず、それをもって法的拘束力が発生するわけではありません。

23区民のみならず、多くの市民が災害廃棄物の広域処理について不安と疑問を持ち解消されない理由には、広域処理の決め方がトップダウン、中央集権的、反民主主義的手続きである部分も大きく影響していると考えます。広域処理ありきで、民意なく進められてきているのです。

このことについて指摘すると、東京都は、都議会全会派から賛同をいただいたといいます。

②23区における災害廃棄物の受け入れは、清掃事業を所管しない東京都の石原都知事が受け入れると言ったことにより始まっています。しかし、清掃事務は基礎的自治体固有の事務であり、いくら都知事が受け入れると言っても受け入れを決定する権限は持ち得ません。東京都議会は東京二十三区清掃一部事務組合の決定機関では無いのです。

また東京二十三区清掃一部事務組合は23区から排出される一般廃棄物を焼却する清掃工場を管理運営するために設立された組織です。「一般廃棄物処理基本計画」に載っていない、しかも、今回のようなこれまでは産業廃棄物に分類されてきたごみである災害廃棄物を焼却するという重要案件については、管理者一人で決められることではなく、評議委員会などにかけ審議したうえで一組議会に報告、議決すべではないでしょうか。

緊急を要するならともかく、震災後これだけの時間がたっているのですから当然こうした手続きがとられてしかるべきです。

一組運営が民主的でないことは、23共同運営でありながら、説明会が清掃工場のある区でしか行われず、出席させない、意見を言わせないという形で他区の住民を排除していることが証明しています。

一組は、住民のいない公共団体と言われますが、23区が共同して設立しているのですから、23区民の意思が尊重されるべきです。

災害廃棄物広域処理を公共のために必要な事業であることは理解しているが、自分の居住地域内で行なわれることは反対という住民の姿勢を揶揄していわれる概念=NIMBY(not in my backyard)とする動きがあると聞いています。

23区民の意見が反映されず進められてきた災害廃棄物広域処理をNIMBYとするには、反対する区民の主張について、きちんと正当性をもった根拠を示すべきですが、これまで行われてきた説明会は一方的に説明するだけで区民の意見を聞き方針を変える場ではありません。

たとえば、災害廃棄物受け入れにおける安全性の問題です。