それでは、現在の税金の使い途への市民の関与はどうなっているのでしょうか。
今年の1月21日に 『税金の使い道への市民の関与と寄付/市民参加の視点から
〜(仮称)大和市寄付条例〜』 ・ 『1月24日に寄付による投票条例』 というタイトルで記事を書かせていただいて以来、このふたつのページは、コンスタントにアクセスがあり、市民の皆さんの関心の高いテーマの一つであることがわかります。
私がとりあげた 「寄付による投票条例」 ・ 「市川市の1%条例」 は、市民が税金の使い途に関与できるようにするための試みです。
それでは、現在の税金の使い途への市民の関与はどうなっているのでしょうか。
自治体の予算は、首長が提案します。議会は、その、自治体の首長が提出した予算案を唯一否決・可決できる機関であり、税金の使い途に関与できるのは議会であると言えます。
また、議会を構成しているのは、市民から選挙によって選出された議員ですから、市民は、選挙と言う選択により、間接的に税金の使い途への関与をしているというのがこれまでの解釈でしょう。
それでは、何故、現在こうして、市民が税金の使い途への関与の方法に関心がもたれているのでしょうか。
そこには、いくつかの背景があると考えます。
◆地方分権の時代において、多様化した市民のニーズに応えた自治体運営を行なっていくための市民意見を反映させる
◆本来、市民の声を反映させ税金の使い途を決定するはずの議会が本来の機能を十分に果たしていない
◆行政への市民参画(参加)の拡大
「市川市の1%条例」には問題があるという考え方があります。
本来の税金の決定の仕組み(=首長が提案し、議会が決定する)を揺るがすものであるというのがその考え方です。
それでは、選挙で選ばれた首長が提出する予算は、いつのときも市民の意向を十分に反映させているのでしょうか。
現在の議会は、首長が提出した予算についての修正が可能になっているでしょうか。
議会は制度上は、予算の修正を行なうことができますが、現実には、与党と野党に分かれて、首長の提案に対して、否決しない与党が過半数を占める議会がほとんどですから、予算に限らず、首長の提案した議案は、否決されること無くそのまま執行されていきます。
こうした現状では、市民の意向を十分に反映させた意思決定機関として議会が機能していないと考える市民が多くいるのも無理もありません。
法政大学名誉教授の本間義人氏は、その著書「地域再生の条件」岩波新書の中で、次のような事例を紹介しています。
志木市は、2005年3月「(1%条例)志木市未来を切り拓く新たな市民自治基金条例案」を提案しています。
志木市の個人住民税は2004年度予算で約40億円。その1%の約4000万円について市が毎年、環境・子育て・教育・文化事業などの行政の各分野における政策メニューを示して、成人市民1000人を抽出して世論調査を行い、どの分野にその予算を使うか市民に答えてもらいます。その回答数に比例した額が政策分野別にプールされて使われることになるしくみです。
市民1000人のうち300人が環境対策を重点的に答えたとすると4000万円のうちの30%=1200万円がう分野にプールされ、それがし予算の環境対策費に上乗せされて使われることになります。
【「地域再生の条件」本間義人氏 岩波新書より】
著書の中で、本間氏は、「議会がこの条例案を否決したのは、税金の使途を議会を飛び越えて市民が直接決めるということへの危機感ではないか」と言っています。
議会が、仮にそのように主張するのであれば、その次に本間氏も「では議会の役割はどうあるべきなのか」と言っているように、議会が、その決定過程・審議過程においていかに市民参画(参加)・市民の意見を反映させる仕組みを作り上げるのかを真剣に考えなければならないときなのでは無いでしょうか。