平成29年度大田区の決算に対する奈須りえの意見

予算は賛否を問われるのに対し、決算が認定という言葉を使っているのをご存知でしょうか。首長は、監査の意見を付けて決算を議会に送付すれば、その時点で決算は成立したことになります。

使ってしまったものについて、議会がいい悪い言ったところで、予算で認めたのだから、という理屈かもしれません。

そのため、一般に決算は予算ほどには注目されません。
しかし、予算をたてても、補正予算で大幅にその額が変わるように、税金がどのように使われているのかの実態を把握すべきは、予算ではなく決算です。

ここ何年かは、決算の認定に際して財政的分析を根拠に、問題を指摘してきましたが、平成29年度は、税の役割から見た大田区の決算の問題点を指摘しました。

_____________

フェアな民主主義 奈須りえです。
ただいま上程されました

第70号議案 平成29年度大田区一般会計歳入歳出決算

第71号議案平成29年度大田区国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算

第72号議案平成29年度大田区後期高齢者医療特別会計歳入歳出決算

第73号議案 平成29年度大田区介護保険特別会計歳入歳出決算

のすべての議案の認定に反対の立場から討論いたします。

大田区政や税金の使い方をみていると、行政とはいったい何をするところだったのかと、問い直したくなります。

地方分権で社会保障の責任主体が基礎自治体に整理されたことを、大田区は理解しているのでしょうか。

特に松原区政になってから、財政規律が乱れてきたと感じますが、3期目に入り、さらに目に余るようになっているのも長期政権のゆえでしょうか。

私は、松原区長ご自身に限って3期限りでやめます条例はパフォーマンスに過ぎず、無用であると考え、反対しましたが、ご自身が権力は腐敗するということを一番よくお分かりになっているのかも知れません。

 

 

そもそも、大田区という日本の経済の中心の東京都の中でも都心部に位置する自治体が、財政を理由に社会保障サービスを積み残す自体、ありえないことで、これを許し、放置してはならないと思います。

東京、中でも23区は日本の経これを漆済の中心で、経済のけん引役ともいわれています。

人口減少が大きな社会問題になっています。人口減少は、財政的な問題に加え、サービス提供者を確保できないことが特に問題だと指摘されています。しかし、東京、中でも23区は、地方で人口が減っているのに対し、いまだに微増を続けています。

いま、私たちが抱える課題から見れば、東京は、経済の中心で、人口も増えており、一番良い状況のはずですが、大田区は、常に認可保育園が足りず、特別養護老人ホームも足りなくて、区民は子育てにも介護にも不安と不満を抱えています。

大田区は、非正規の図書館司書を配置していますが、なぜ正規の教員を雇えないのか委員会で質問したら、財政を理由にされました。

大田区は、教育に必要な教員さえ、非正規雇用でなければ配置できないほど、財政的に逼迫しているというのです。

私は、議員になってから、どうして、日本の経済の中心東京の大田区が、こうした、保育園や特養など社会保障サービスや教育における課題の積み残しがあるのか不思議でした。

経済の中心から生み出される富に課税され税収も日本で一番豊かなはずだからです。

東京の23区より良い自治体があるなら、日本と東京の経済政策と統治機構は失敗しているということです。

日本の自治体の中の東京23区で社会保障が足りないということは、経済が良くても、税収に反映されないか、税収は確保できても社会保障に使う額が少ないということです。

実際、国は23区を富裕団体(お金持ち自治体)と位置付けていて、法人住民税の一部国税化により、法人住民税を国に吸い上げられています。

ふるさと納税も、消費税清算基準の見直しも、大田区など都市部は財源が余っているから、地方に配分を大きくしようという考えから来ています。都区財政調整制度の問題は別の機会に譲りますが、

国も指摘するように、東京23区に税収が集まっているのは確かだと思います。

しかし、私たちは、もういちど、特別区が出した、声明の主張を確認する必要があるのではないでしょうか。

今年2月16日に、特別区が法人住民税の国税化や消費税清算基準の見直し、ふるさと納税などに対し、国による不合理な地方税の偏在是正が繰り返し行われているとして、特別区緊急共同声明を発表しています。ここで、23区は決して法人住民税国税化やふるさと納税、消費税清算基準を受け入れられるほど、財源に余裕があるわけではない、なぜなら、「首都直下型地震への備え」「超高齢化への対応」「子育て支援策」「社会インフラ老朽化対策」など、大都市特有の膨大な行政需要を抱えている、から、と言っているのです。

特別区緊急共同声明のこの指摘は非常に重要なことを私たちにあらためて、教えてくれています。

 大都市だからと言って、税収が集まったら、それを好きに使えるのではなく、「大都市特有の膨大な行政需要を抱える」と言っている、からです。

都市化するということは、人が集中することであり、それに伴った、ゴミや環境破壊や防災対策が必要になりますし、そこに集まる人たちは地縁や血縁が希薄になりますから、社会保障サービスがなければ生活の糧を得られないということで、たとえ、税収が集中したとしても、都市化によって生まれた膨大な行政需要のために必要経費として使わなければならないのです。

 

実際、社会保障のバイブルとも言われている2012年の厚生労働白書が指摘しているように、「社会保障制度は産業資本主義社会が形成・発展する中で、工業化に伴う人々の労働者化によって、地縁や血縁がそれまで果たしてきた人々の生活を保障するという機能が限定的になったことによって必要になってきた」もので、産業資本主義の進展による都市化と社会保障ニーズの増大は表裏一体です。

厚生労働白書が

地縁・血縁が担ってきた機能を行政が代替することによって、人々が経済活動に注力することができるようになったという意味で、社会保障というのは産業資本主義の社会、国民・国家の発展を支えてきた

といった説明がされているとおりです。

大田区という、日本で最も産業資本主義が進んでいて、地縁血縁が希薄な街は、子育てや介護や障がいなど社会保障があってはじめて、私たちは、やとわれて働くことができるわけです。

経済が盛んな地域ほど、その経済を支える労働力となる人たちの社会保障のために集めた税金を使わなければならないということです。

ところが、国も大田区も、地縁血縁が希薄なまちを地域包括ケアなどと言って、地縁血縁で支えようとしています。

そもそも、無理がありますし、実際に機能するはずがありません。

仮に、地縁血縁で社会保障を担うことが可能ならなぜ、2000年に介護の社会化とまで言われ、介護保険がスタートしたのでしょうか。

大田区は、個人商店や町工場などの個人事業主や中小企業者もこの間激減してきています。社会の構造が大きく変わったということです。

加えて言えば、やとわれて働く人たちの働き方も、正規から非正規や派遣、請負へと大きく変わってきていて、実質賃金も下がっています。

低賃金労働、不安定雇用、自己責任労働が広がっているからこそ、安くて安全で衛生的な住まいが必要ですし、子どもの保育環境を整えなければなりませんし、働き子そだてしながら介護できる環境を行政が整備しなければなりません。

ところが、大田区は、こうした大田区という都市部に住み暮らす区民の状況を十分に理解していないのか、社会保障課題解決を最優先にしていません。

優先度の低い事業にばかり税金を投入し、区民の財産を一部の事業者に優遇して使わせ、社会保障課題を放置します。

そのため、行政に優遇され利益を得ることができた人とそうでない区民との格差は広がるばかりです。

「平成29年度主要施策の成果」を見ると大田区自ら特に主要な事業と位置付けて実施状況を紹介している施策に、問題のある事業が並びます。

まず問題なのは、羽田空港跡地開発でしょう。土地区画整理事業の基盤整備に着工したほか、羽田空港跡地第一ゾーンの整備と運営事業予定者を選定し、基本協定を締結したと大田区は評価していますが、区画整理事業本来の民間資金は1円も投入されず、区民が莫大な税負担をして、跡地整備を支えています。

羽田の沖合移転で区民が莫大な税負担をしたのは、安全と環境のためでしたが、空港の沖合移転事業が終わったと思ったら、都心低空飛行を始めようとしています。それどころか、沖合移転でできた跡地の整備費に、大田区民が165億円も余計に負担しなければならないだけでなく、165億円払って跡地を区民の財産にしたにも関わらず、大田区は、区民のために使わず、羽田みらい開発に9割引きという安い地代で貸し出します。国有地並みに貸し出した時との地代の差は1620億円で、区民は1620億円も損します。

そもそも、この土地に複数の個人の地権者がいることを大田区は知っているのに、これまでも、また、区画整理事業の都市計画審議会でも、そのことにはまったく触れていません。

一地権者で、URが施工する区画整理事業と言いますが、複数の個人の地権者との権利関係が明らかにならないまま、この区画整理事業は適法に執行できるのでしょうか。

老朽化した小中学校の更新は、複合化が前提のようになっていますが、複合化といえば、聞こえはいいですが、要は、学校敷地面積の一部に別の用途の建物を建設することです。

学校の敷地面積が小さくなりますから、生徒の教育環境が悪化するだけでなく、周辺住民の住環境にも影響を及ぼします。

それで、結局、建設コストが複合化分かさむことになります。

無駄な税金納入は、跡地だけではありません。

主要施策の評価にのっているコミュニティサイクルもまた、公共財産を営利目的のために優遇的に貸し出す可能性のある事業です。

コミュティサイクル事業自体を否定するつもりはありませんが、その手法には数々の問題があります。

一番の問題は、このビジネスが、駅前の駐輪場の確保なしには成立しえないビジネスモデルだということです。

駅前の一等地にある、大田区の駐輪場をいったいいくらで貸し出すのでしょうか。

ところが、そうした事業スキームも明らかにせず、大田区の公園や公共施設の駐輪場にコミュニティサイクルの駐輪場を設置しています。

実証実験と言いながら、ドコモシェアが行うことが前提なのか、実験が終わって、やらなかったら、補助金で買った自転車はどうなるのか、公の施設に設置した駐輪場は、誰が撤去費用を負担するのかも明らかになっていません。

そのうえ、コミュニティサイクル事業は、違法駐輪を厳しく取り締まり、放置自転車の引き取り費用を引き上げるなど行政の駐輪対策によって、コミュニティサイクルに乗らざるをえない状況さえ大田区は作ることができます。

極端な事例でいえば、放置自転車取り締まりを厳しくして一回3万円を徴収し、コミュニティサイクルなら、必ず止めることができるようにすれば、自分の自転車でなく、コミュニティサイクルに誘導することもできるわけです。

大田区の駐輪場などの施設を使わせて営利活動するコミュニティサイクルのようなビジネスモデルは、インフラへの投資費用を削減して運営に参入できるコンセッションと呼ばれる民営化と見ることもできます。

多くの区民が生きていく上で欠かせない、事業の多くは、民間がリスクをとって参入するには、コストがかかりすぎて利益を上げられないものばかりでした。

しかし、最近の国も大田区も、コミュニティサイクルや、跡地のように、行政財産の使用を許す、安く貸し出す、保育園のように、補助金をなどで売上を担保するなど、確実に利益を上げられる仕組みを行政が整え、営利企業を参入させています。

格差の拡大が大きな社会問題になっていますが、羽田の跡地、コミュニティサイクルなど、公共財産を安く使わせて、営利活動許せば、その事業の投資利益は大きくなります。

結果、確実に利益をあげる一部の行政に優遇された投資家と、自己責任で働く区民との間の格差が広がるのは、当然ではないでしょうか。

だからこそ、公の仕組みを使った施策に営利企業を参入させることには、慎重になるべきです。

そのくせ、区民の声を明確にあげなければならない羽田空港飛行ルート変更では、新飛行ルート案への反対の声を明確にあげません。

このままずるずる規制時事化することが区長の役割でしょうか。

米軍が、横田空域の管制を日本に渡すことを拒否しており、新ルート案が暗礁にのりあげている報道がありました。しかし米軍はすでに了承したと国から聞いており、拒否しているのは横田空域内での管制権を日本に引き渡すことでしょう。

新ルートスタートが羽田の管制権を米軍に引き渡すことになるのではないかと心配です。

いずれにしても安全・主権に関る重大な問題であり、区長の姿勢が問われます。

 

しかも、最近、大田区では、こうした、営利企業に行政分野に参入させるに際し、議決さえ行わず、区長と企業との協定などですませるようになっています。

大田区は、セブンアンドアイホールディングス、三菱商事、など包括協定を結びました。白紙委任のように、協力体制を組むといいますが、行政は全体の奉仕者で、企業は株主利益のための事業体です。まずは、協定してから具体的なことは追々考える、で大丈夫でしょうか。

大田区だけ、大田区長だけで決め、区民との合意形成や議会の議決のない状況は、議会制民主主義の危機的状況です。

にもかかわらず、大田区と協議となっている飛行ルート変更は、せいきんの所在をあいまいにして区民の安全安心を守ろうとしません。新飛行ルートで飛び始めて何かあったら、区長は責任を取るおつもりでしょうか。それとも区画整理事業のようにどこかで、話し合われているのでしょうか。

ワイマール憲法は、当時、最も民主的と言われた憲法です。そこから、独裁者ヒトラーは生まれます。

当時、議会の立法権は、完全に、廃止されたわけではありませんでしたが、有名無実なものとなっていたようです。

今も、当時のドイツがヒトラーの独裁政府を生む「全権委任法」という議会政治の廃止を議会自身が議決するというようなことがなぜ可能だったのだろうか、と言われています。

 

私たち大田区議会は、歴史に学び、三権分立の立法府にいるものとして、区民の声を代弁して区民に付託された立法権を堅持しなければなりません。

次第に強まる企業の大田区への影響に危機感を覚えます。今は、区長が、企業の声を聴いて区政を執行しているように見えますが、こんなことを続けていれば、力関係はいずれ逆転して、区長も大田区議会も投資家の暴走を止めることができなくなるでしょう。

金と権力を止めることができるのは、法令です。規制緩和は、金と権力を持つものをより強くし、力のない個々人の人権を侵害します。

変だ空港周辺が、法令停止できるサンドボックスになっています。平成29年3月11日、区長が東京都自動走行サンドボックス分科会に小池都知事と同席し了承しているのです。職員は知らないといってイアスから区長が独断で決めたのでしょう。ありえません。

区民の代表として、大田区が弱肉強食の無法地帯になることに警鐘をならし、反対討論といたします。