大田区議会における陳情の意味とは

〜「放射能大田区独自測定」の陳情を否決した大田区議会の判断から〜

都市・環境委員会で採択になった「放射能の大田区独自測定」に関わる4本の陳情ですが、大田区議会本会議において「不採択」となりました。

2646名の署名とともに提出された陳情を「不採択」として、区民の要望を否定した大田区議会の判断はどこにあったのでしょうか。

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議会に対して、希望、要望を述べるための手段として、「陳情」「請願」が認められています。

一般的には「陳情・請願」を同じように取り扱っていますが、その内容は異なります。

「請願」は、日本国憲法第16条に規定される「請願権」 に基づき、国では「請願法」 自治体では「地方自治法(第7節124条、125条)」 や例えば大田区では「大田区議会会議則」 に定められています。

大田区と全く同じとはいえませんが、t例えば伊東市がHPに掲載している「請願」や「陳情」の用語説明 を参考にしていただくよいと思いますが、議会や執行機関に法的拘束力が生じるのが「請願」です。

それに対して、憲法や法律に規定が無く、法的拘束力を持たないのが「陳情」です。そうは言っても、住民からの要望であり、採択されて放置されることにはならないでしょう。

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今回の陳情採決にあたり、否決した自民党と公明党は、「責任ある与党」として行政ができないことを無責任に採択するとはいえないという討論をしていました。

行政が実現不可能かどうかで陳情内容を議会は審議すべきでしょうか。

 行政がしない、できないと言ったことでも、議員自らが必要であり、行うべきことを行政にさせることこそが、議会の役割であり、議会が気づかなければそれを住民が議会に指摘し、要望して実現させることが陳情や請願の意義ではないでしょうか。

 また、この陳情は、果たして「実現不可能」なことでしょうか。

 繰り返しになりますが、大田区は、大田区地域防災計画の中に、放射能災害応急対策を定め、広域的放射能災害に対して、国まかせでは無い、大田区としての調査や情報公開を行うことを定めています。

例えば、陳情書には、以下のような要望がありますが、

① 放射性物質の種類及び量について区民生活に関わる大田区内の学校・幼稚園・保育園・道路・公園などで定期的に地表1m程度の地点で測定し公表すること。また、その土壌についても調査を行い公表すること。

→空間線量について、大田区は6月17日19時=陳情採決前日に測定箇所拡大を公表しています。

 土壌については、隣の品川区では既に取り組んでおり、不可能とはいえないでしょう。

② 水道水、および、大田区内の保育園・学校給食における使用食材について、大田区独自に放射性物質の種類及び量を調査し、公開すること。

→水や食材の放射性物質については、測定ではなく、調査を求めています。子どもへの影響の程度を知るための目安となるこれらの情報収集さえ大田区はできないのでしょうか。

③ 福島原子力発電所からの風について、風向きや風速などの気象情報を調査し、大田区への影響を公表すること。

→これこそが、今後の原発の推移を見守っている私たち区民にとって一番重要な情報です。水素爆発の時、国が公表しなければならなかったのは、風向きであり、国民が逃げる方向でした。風下に向かい、汚染雲の下へ下へと逃げた方がいらしたとしたら、心が痛みます。

  今後も万が一を、100%払拭できない現状において、大田区の放射能災害応急対策にも記されている、風向きや風速を大田区の地図に落とし込んだ情報は非常に重要です。

④ 放射能の影響についての範囲および程度について国の持つ情報を積極的に集め大田区民に公表すること。

→当たり前のことです。国や東京都の情報をそのまま、住民に提供するのではなく、大田区として使える情報にすることも重要です。また、スピーディーのように国が公開してこなかった情報を積極的に求める姿勢も必要です。

⑤ その他、区民が必要とする情報について区民からの要望があった時には、大田区として誠実に検討し区民の健康への影響を出来る限り減らすこと。

→当然。

2. 上記調査に伴い、基準値を上回ることが判明した場合には、区民の健康への影響の無いよう、適切な措置を講じること  

  →当然。

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 今回の陳情への判断から、大田区議会の大半の議員の判断基準が、行政=区長がどう思うかであり、議会としての意思がないことが明らかです。

 地方議会はいらない、議員は削減してよいという区民(住民)の気持ちも、こうした判断をする議会であれば、やむをえないという気持ちになります。

 しかし、区民のみなさん、思い起こしてください。

 今回の陳情審査において、かたくななまでに、独自調査は不要であるといい、原発事故後の、これほどに低線量の放射線が問題になっている現状において、「非常時ではない」と言い続けたのが、そして、それを言わせ続けたのが誰なのか、どこなのかということを。

 また、区民の声を、公の場での議論に持ち込むことができたのは、間違いなく、区議会の持つ「陳情」という制度であるということを。