頻繁に行われる入札契約金額変更にみる大田区の契約における課題について

第107号議案「大田区仲六郷小学校プール改築その他工事請負契約の変更について」に反対の立場から討論します。

第107号議案「大田区仲六郷小学校プール改築その他工事請負契約の変更について」は、プール改築の杭打設工事の際に、地中障害物が発見されたため、杭の位置を変更する必要から、工期が2か月延長になり、費用が3億2,760万から、3億4,850万円に約2千万円増額されたというものです。

大田区の建設工事における地中埋設物の発見による契約金額の引き上げは、この契約に限ったことではなく、頻繁にみられます。

まず、私たち議会が考えなければならないのは、過去の事例を教訓として設計が行われてきたのかということです。

特に、今回の契約金額変更は、専決処分として許される5%を上回る変更金額です。

大田区は、杭をすべて抜くのではなく、必要な部分だけを抜くことで対応している。

今回、地中20mの地点で、既設の杭が大田区が想定の範囲内とする45㎝よりも曲がって打たれていたため、今回打設した杭とぶつかった。

瑕疵は既設の杭を打った業者にあるが、すでにその事業者は存在しないとのことでした。

20m地下まで杭を打つのに際し、どの程度までを許容範囲とし、どの程度までを事業者の瑕疵とするかの技術的判断は、少なくとも生活者ネットワークには不可能です。

しかし、今回の契約変更で、大田区は、既設建物建設事業者の打った杭に問題があると発言していますが、既設建物建設事業者に瑕疵があると大田区が断定した理由は説明されていません。
議案説明の時点で生活者ネットに対して、杭が曲がっていたと説明し、当初の杭を打った事業者が倒産したとまで報告をしていましたが、その後、大田区が地下埋設物が何であるか不明であるという説明に変わったことには驚きます。
説明する都度、その理由が変わってしまうはなぜでしょうか。
当初、生活者ネットにいただきました、詳細な説明に沿って討論を続けます。

地下、20mの杭が45㎝曲がっていて、今回工事の杭にぶつかったのは、既設の杭を打った事業者に100%の瑕疵があったのでしょうか。

今回杭の打設に全く問題はなかったのでしょうか。

また、くい打ちは、角度で何度までは許容範囲なのでしょうか。また、その許容範囲に対し、どのていどの余裕をもって設計しているのでしょうか。大田区は、想定できる杭をはじめとした地下埋設物についてどのように扱うよう、基準を定めているでしょうか。

少なくとも、今回の杭の打設に係る契約変更について、担当者はすべて口頭で説明し、打設に係りどこまでを許容範囲とし、どこからが瑕疵になるか書面では示されませんでした。

大田区におけるシステム・建設・土木など特殊な技能を要する見積もりの多くは、大田区内に設計できる職員がいるはずもなく、発注先に見積もりを取らせるケースが少なくないと聞きます。

業者任せの見積もりが、様々な瑕疵に対する責任の所在をあいまいにし、専決処分があとを絶たないということは無いでしょうか。

大田区の「大田区議会に付すべき契約、財産または公の施設に関する条例」において、「必要があると認めたときは、区長はこれを専決処分することができる。」としています。生活者ネットワークは、これまでも繰り返し、議場において安易な専決処分に対し警告を発しています。議会が区長に専決処分を認めているのは、5%以内の変更なら何でもよいというのではなく、議会と区長との信頼関係が前提にあり、その区長が認める5%以内の契約変更ならというのが、その主旨です。

しかし、業者任せの責任所在のあいまいな見積もりが続くなら、「大田区議会に付すべき契約、財産または公の施設に関する条例」第四条1項の前提は大きくゆらぎます。

大田区と事業者、リスクをどちらが負担するか、あらかじめ契約書に定めておくことが必要ではなかったでしょうか。専決処分で、5%までの契約変更が可能であることが、契約条件を曖昧にしてはいないでしょうか。

結果として、大田区も議会も専決処分やこうした契約変更に対し、慣れてしまい、チェックが甘くなってはいないでしょうか。

一般の契約や発注であれば、瑕疵に対する責任所在を明確にするために、契約に工夫を凝らし念には念をいれます。

大田区の公共工事において、区民に損害を与えないための努力はどれほど行われているでしょうか。

今回の、契約金額変更は、大田区の契約の在り方に問題があると言わざるを得ず、今後の見積もり、発注の在り方も含めて改善を求める意味で、反対とします。