指定管理者制度導入の問題点②

大田区の場合

 また、これまでの施設の指定管理者の選定を終えて感じることは、何を基準にどのように選定したのか手順、方法が各部局ごとにバラバラで恣意的であるということです。

 指定の終わった指定管理者の募集要領や決定理由をみてみますと、例えば公募実施をするかしないかの判断基準が曖昧です。
 施設の性格上、利用者や地域と職員との関係や専門性などから公募をしないことが望まれる施設もありますが、公募実施の判断基準と何年後には導入する経過的期間も定める基準が必要です。
 また選定委員会を設置するかしないか。応募資格とそれを証明する書類。事業以外の選定基準などが、施設ごとに統一されておらず、なぜそうした方法がとられているのかも不明瞭です。

 札幌市では、指定管理者制度導入にあたり、指定に関する事務処理要綱を策定し、募集から申し込み、選定委員会の設置基準や委員構成、選定基準など総則的な規定を定めています。
 また、個別の施設にはそれぞれの設置目的がありますので、その特徴を活かすため、区民のニーズにあった今後の活用方針や目標・基準を個別具体的にたてたうえで、それらを選定の基準に加えています。こうした施設の活用の目標や基準の設定は、事業運営の事後評価につながるものです。こうした方針や目標・基準をより達成しうる事業者を選定し評価することが、指定管理者導入の目的であり効果ではないでしょうか。
 千葉市では、選定理由や応募団体名、選定されなかった事業者は匿名ではありますが審査結果や事業者からの質問とそれに対する行政からの回答などもホームページ上で公表しています。
 
 指定管理者の指定に当たっては、施設活用の目標や基準を持った上で、客観的な選定基準と透明性の確保が必要であると考えますが、今後どのように取り組むのか質問しました。

 これに対し、「質問の主旨は一般的な基準を定めるべきと言うことだと思う」主旨を理解していながら、各施設の性格の違いがあるので一律な基準は無理と質問をそらした答弁になってしまったのは大変残念です。
 
 
 最近では、行政の皆さんも様々な場面でSRという言葉を使ってくださるようになり、ました。様々な事業が次々と民に解放されています。民間委託や本日の指定管理者制度のみならず、官が民と競争する市場化テストといった制度も国のレベルでは導入されつつあります。
 一部の許認可や政策的な判断を除いては何でも民が担うことができるのだという考え方もあります。
それでは、これまで行政が担ってきたことをそのまま民へ渡すのがいいのでしょうか。
 官と民の違いは、守秘義務を除いては、賃金だけなのでしょうか。
 私は、そのようには考えません。
 官が提供するサービスが無条件に最高であるとは思いませんが、官が担えば高コストだから低コストで高いサービスを提供できる民へという単純な問題でもありません。
 やはり公共サービスの基盤には、財務基盤や職員体制などの安定性があります。また、公正な労働基準や環境方針、障害者雇用、男女平等参画なども守られてきました。
 経済性からのみ計られる運営の効率性ではなく、今後、大田区の公に係っていく民は、企業であれ、NPOであれ、こうした基準を率先して守っていくことが大切であると考えます。
 これまで、大田区が作り上げてきた大田区のCSR=社会的責任を、たとえその分野を民が担ったとしても、今後も引き続き大田区としてまもっていくことが重要です。
 
 選定の基準のなかにこうした視点を盛り込むことが重要であるがどうかという質問に対して、守秘義務法令順守のみに視点を置いてきたわけでなく経済性公平性などを保ちながら適切な委託・指定を行っているとしながら、選定基準ということばが答弁には盛り込まれませんでした。