専決処分と聞くと、阿久根市の元竹原市長を思い出される方も多いと思いますが、阿久根市だけの問題ではなく、大田区でも専決処分は行われています。
議案は議決が原則ですが、市民の代表である議会から見れば、議決しなくても決められる専決処分は、議決の形骸化にほかならず、議会制民主主義の根幹を揺るがせるものです。
第四回定例会にも5本の専決処分の報告がありました。
それでは、大田区の専決処分のどこに問題があるのか報告します。
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私は、これまでも、大田区の専決処分の問題について、指摘させていただいてきています。
■専決処分とは■
「専決処分」とは、本来、議会の議決・決定を経なければならない事柄について、地方公共団体が地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定に基づいて、議会の議決・決定の前に自ら処理することをいいます。
地方自治法による専決処分には2種類(179条と180条)あります。
そのうちの179条の専決処分は、議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長においてこれを専決処分にすることができると認められているものです。
大田区議会は、この地方自治法180条に基づき「大田区議会の議決に付すべき契約、財産又は公の施設に関する条例」を制定しその第4条において「区長の専決処分」の項を設けています。
この条例より、予定価格1億5,000万円以上の工事又は製造の請負契約を締結した場合には、区長が必要と認めた場合には5%以内の契約金額の増額、または減額を認めています。
この180条に基づく専決処分は条例において、すでに議会の承認を得ているという解釈であるため、議会への報告はしなければなりませんが、議会において承認を得る必要がありません。
■条例で定めたのであれば、何でも区長の「専決」で増額できるのか■
今回の第四回定例会において5件の「専決処分」の報告があります。そのうちの4件が180条の専決処分です。
地方政治は、選挙で選ばれた行政のトップである首長(=大田区の場合は区長)とやはり同じく選挙で選ばれた議員で構成する議会(大田区議会議員:大田区は50人)の二つの異なる選挙で選ばれた二元代表が行う仕組みになっています。
議会には、執行機関である行政をチェックする役割が求められています。
「専決処分」は、区政執行に支障をきたさないために定められている処分ですが、地方自治法に定められている179条、180条の専決処分ともに乱用すれば、議会のチェック機能は働かず決定されてしまいます。
180条の専決処分は、条例で5%まで増額が認められているので、どのような理由でも増額してよいのでしょうか。
■雨が降って石灰をまいたので300万円増額■
たとえば、今回、報告されている専決処分の報告第29号は地盤強度を確保する必要が生じたことによる約520万円増額の専決処分です。
しかし、その内容を聞いて驚きました。
そのうちの300万円は、雨が降ったので地盤が緩み工事車両が入りにくくなって深さ1m部分まで石灰をまいたための増額だというのです。
地盤にかかわる調査報告書も無く、現場に行って現状を見ただけで300万円の増額。雨が降ってゆるんだ地盤への対処は通常の工事費に含まれてはいないのでしょうか。これまでも雨が降った際の対応は想定外で専決処分で行ってきていたのでしょうか。
■3.11の震災で、天井が落ちたのを見て大田体育館の天井設計を変えて570万円■
報告第27号の専決処分、耐震強度確保のための天井補強工事約570万円もそうです。
3.11の震災に伴い、天井が落下した事例をもって契約変更していますが、震災後に耐震強度の変更はありません。契約変更しなければならないほどに耐震強度に問題のある設計であれば、設計ミスと呼べるのでは無いでしょうか。
そして、設計ミスであれば、大田区が支払うべきもので無いのではないでしょうか。
■安易な専決処分は議会との信頼関係を揺るがす安易な専決処分■
そこで、専決処分が議会に報告されたところで、専決処分に対する姿勢について質疑しました。
5%以内の増額なら何をしてもよいのでしょうか?基準は何ですか?
たとえば、報告28と報告30の萩中集会所設計変更に伴う仕様や建具の変更は、レストラン受託者や地域住民からの要望にこたえたためと聞いています。本来議決までに済ませなければならないことであり、議決後に気が変わったことを専決処分で行えると考えることに問題はないでしょうか。
専決処分は、議会に報告されると自動的に承認するもので、議会はこれを否決したり、承認しなかったりということができません。
先ほど紹介したとおり、条例でこれを定めているからです。
一旦議会に契約議案を示し、議決を経たにもかかわらず、変更するには、それなりの理由が必要であり安易な変更は許されないと考えますが、議決の重みについてどのようにお考えでしょうか。
専決処分は、議会と大田区との信頼関係の上に成り立つものです。特に地方自治法180条に基づく専決処分は、信頼の下、5%の増減額を認めているわけですが、今後、こうした安易な契約変更が行われるのであれば、条例変更も必要になってこざるを得ないと考えます。
大田区は、今後もこうした安易な専決処分を繰り返すのでしょうか。
あるいは、防止策について議会に示せるものはあるのでしょうか。
しかし、雨が降った地盤対策についての答弁が、杭が出てきたという別の理由についての抗弁になったり、3.11の耐震強度の問題も、「地震があった」を繰り返すばかりでした。
■川崎市の天井崩落は賠償請求の方向へ■
たとえば、大田区が、天井設計変更の理由にしている川崎市のミューザの天井崩落は衝撃的でしたが、
天井が崩落するような設計は、設計ミスであり問題すべきであり、専決処分で対応することではありません。
こうした、理由にならない答弁を繰り返したのち、副区長自ら、条例で、5%認めているのだから、議会は5%までは、黙っていろと言わんばかりの「条例で5%までは認められている」という発言に大きな落胆を覚えました。
大田区における予定価格1億5,000万円以上の工事又は製造の請負契約は、5%増額前提の議決だともとれる発言です。
当初契約の議決の形骸化にほかなりません。