これは、アスベスト(他のほとんどの問題・課題解決についても同様のことが言えるのではないかと感じていますが)問題を根源から解決するために、また、首尾一貫した対策を取っていくために必要なことです。
イギリスのスコットランドには32の地方自治体があります。これらの自治体の議会を代表する組織がスコットランド地方自治体協議会(COSLA/Convention of Scottish Local Authorities)と呼ばれる組織で次のような目的のために機能しています。
①地方自治体がそのサービスを供給するための財源を追及すること
②雇用者として地方自治体を代表して賃金及び労働条件の交渉にあたること
③スコットランド、イギリス及び欧州連合(EU)における政府その他すべてのレベルにおいて、スコットランドの地方自治体に関係のある政策及び法規制に関与する
この協議会が、アスベスト対策についての作業部会を立ち上げ、その取り組みについてのレポートをしています。
各議会の政党バランスを反映した議員・大学教授・自治体職員が作業部会のメンバーとなり、また、他にも労働組合・公衆衛生局・環境衛生センター・アスベストに関る市民団体なども協力してこのレポートを作り上げています。
目的は次の通りです。
①財政負担を明らかにし、また、自治体が協力することにより効果的な財政投入を可能にさせる
②自治体が責任を有する施設内のアスベスト含有物質の管理に関する組織方針を整備認識する
③市民の健康と安全を守る(誰一人として吸い込むリスクを受けることが無いようにする)
レポートでは、今後のイギリスにおけるアスベスト被害者を次のように予測しています。
【今後25年間の死亡者数】
25万人
【年間死亡者数の推移】
5000人/1998年 →9000人/2018年
【被害データ】
・1945〜1950年頃に生まれた男性の150人にひとりは中皮腫で志望すると示唆〔ピート博士による研究〕
・1981〜1995年の労災死亡組合員590人中266人(45%)の死因がアスベストを吸い込んだことによる〔GMB調査より〕
・1991〜1997年の4年間で交通事故死14000人に対しアスベストによる死亡者は18000人
レポートでは、アスベストの被害が、一地域に限定されたものではなく、アスベストの影響から逃れることのできる土地はイギリスのどこにも存在していないとしています。
コスラレポートには、イギリスでは、現在もアスベストが残されている建物が440万棟にも上り、そのうち200万棟は非住宅用である記されています。
参考までに、イギリスのアスベスト使用のピークが1960年前後で、年間17万トン程度。日本では1970年から1990年頃まで20〜30万トンを使用しています。
国の広さや、都市の密集度から考えると、東京やその周辺など、一部の都市に集中している日本の場合の、都市部へでの対策は、特に自治体間の連携が重要になってくると考えます。
現在も、アスベストの問題は、様々な場面で取り上げられ、話題になってはいますが、現実にアスベストを取り扱う現場での認識は徹底していないと言わざるを得ません。
目に見えない、そして、影響がすぐに現れることのないアスベストですが、被害者の数は、過去の使用量に確実に比例して増加しています。
今後はひとりも吸い込ませないという姿勢で取り組むことが最も重要です。アスベストを吸い込んでしまう危険は私たちの日常生活の中に存在するのです。