この土地は、大田区が出張所と産業支援施設を建設する予定です。建設に当たり、区は、4億円をかけて土壌入れ替えを行う予定です。
これは、アスベスト工場跡地のアスベストによる土壌汚染を行政が初めて処理するケースです。
大田区は、取得した土地からアスベストが見つかったので安全に処理し、活用するとしていますが、アスベストという飛散すれば命に関わる工業製品が土中に投棄されている事実に対する対処としてはあまりにもお粗末です。
しかも、ここは、過去に、アスベスト製造工場が操業していた土地であり 、周辺には環境被害者がでていることも判明しています。
今回の土壌汚染とその処理にはどのような課題があるのか、「中皮腫・じん肺アスベストセンター」永倉冬史さん「神奈川労災職業病センター」西田隆さんからお話しをうかがいました。
【土壌が汚染された経緯】
平成19年11月、東京労災病院が大森南地域にアスベストによる環境被害者がでたことを公表したのを受け、大田区は、平成20年1月から3月に健康調査を行い、報告書を作成しています。
報告書は、原因を特定していませんが、大田区は、公表直後より、㈱ミヤデラ1社のみに聞き取り調査を行ってきました。
ミヤデラへの聞き取り調査からは、当時、かなりの規模でアスベストを取扱い生産していたことや、発がん性の高い茶石綿も一部取り扱っていたこと。集塵機などの防塵対策が取られていない時期のあったこと、窓をあけて操業することもあったことなどがわかります。
また、プールを作り、原料(=アスベスト)を回収するため、製品や廃棄物をそこに入れていたことなどもわかっています。
大田区は、こうした詳細な聞き取り調査を行いながら、因果関係は特定できなかったとする一方で、他の原因究明のためのヒアリングや調査は一切行っていません。
一方で、大田区は、「事業の運営を不当に害する可能性が認められるため」として、ヒアリング内容の一部を公表していません。事業とは、大田区なのか、ミヤデラなのか疑問の残るところですが、少なくとも、現在は取り扱っていない「アスベスト」に係る操業内容において、区民の健康より優先して非開示とすべき内容があるのでしょうか。
【被害者と原因との関係から】
大田区では、被害者とその原因とが明らかになっていませんが、たとえば、横浜市のA&Aマテリアルは、遺族に対して2700万円が救済金として支払と共に、胸膜プラ—クの所見のある住民に対して、年2回の検診のつど3万円を支払うことで合意しています。
大田区では、今年7月よりアスベストフォローアップ検診をスタートさせましたが、自己負担¥1000を支払い検診を受けなければなりません。
原因を特定することは、今後の被害者救済において非常に重要なポイントとなります。