「大田区政に関する世論調査」において、大田区の施策の中で特に力を入れてほしいと区民があげた課題の第一番目は「高齢者対策」、二番目は「防災対策」でした。
阪神淡路大震災以来区民の関心の高かった「防災対策」ですが、平成14年には、いったん、5番目にまで落ち込んでいます。
ここ数年関心が高くなっているのは、「南関東直下でマグニチュード(M)6・7〜7・2の地震が起こる確率は30年以内で70%、10年以内では30%」と政府の自身調査委員会が発表したこと。耐震偽装の第一号が、大田区にあるグランドステージ池上だったことなどがが影響しているのかもしれません。
耐震偽装の問題は、二つの課題を私たちに示してくれました。
ひとつは、「建物の安全を保証すると思われていた建築確認の制度が、建物の安全を守る制度として不備であったこと」。
そしてもうひとつは、建物の耐震強度不足は偽装物件だけでなく、1981年以前の旧耐震基準の建物においても同様でそれらの建物の安全をいかに確保していくかという問題です。
耐震基準が現在の基準に満たない、建物は、大田区内だけでも約7万棟。
大田区において、これらの建物の耐震強度を新耐震基準にまで引き上げようと、昨年の4月より、耐震診断と耐震補強改修についての補助金の制度がスタートしていますが、30年程度或いはそれ以上の築年数の建物のために費用を投じて新耐震基準をクリアすることは困難で、診断を受けても助成にはつながりません。
しかし、旧耐震基準の区内7万棟の建て替えは、年に1〜1.5%。建て替えを待っていたのでは、防災に強いまちづくりは何十年もかかってしまいます。
この耐震改修補助については、昨年一件の利用も無いにもかかわらず、今年度、ほぼ同額の予算が計上されていますが、区民の利用を促す工夫を講じなければ、防災対策にはなりません。
例えば、
①区民の生命を守ることに主眼をおき、建物内にいる人の脱出経路を確保するための制度として位置づけ、建物の一部改修についても助成をする。
②現行どおり緊急車両の進入・避難道路の確保に主眼を置くのであれば、現在の制度は残しつつ、優先順位を明確にし、大田区において重要避難路の指定をしその沿道の耐震補強を進めるなど、計画的に整備を行なっていくことが重要です。
たとえば、東京都では、都地域防災計画(素案)の中で第一京浜など緊急輸送道路沿いの建物を100%耐震化するとしています。大田区内の避難所や病院からこの東京都の緊急道路までの耐震化を優先的・計画的に行なうことにより、緊急車両の進入や避難所への物資の輸送などを円滑にすることができるのではないでしょうか。
一時のマンションブームのような大規模マンションの建設は落ち着いたものの、区内は、あちこちでバブル期を髣髴とさせるような建設ラッシュの状況です。
大田区でも、都市計画マスタープランでは、地域特性を持ったまちづくりをうたっていながら、実際には、全く無策で、地域のまちなみは、都市計画マスタープラントはかけ離れた形に進行しつつあります。
大田区では、地区計画(地域住民がその地域におけるまちづくりのルール:策定するためにはその地域の70〜80%の地権者の合意が必要)をかければ良いと一口に言いますが、行政がお墨付きを与えている『再開発事業』においてでさえ住民の間での合意形成が困難な状況のなかで、地域の70から80%の合意を取り付けなければならない地区計画の策定がどれほど困難であるかは想像にかたくありません。
①住民参加で地域のマスタープランを作りそこに、必要であれば条例によって拘束力を持たせ地域特性を守る
②地域住民が目指すまちなみに地域を誘導していくための施策を講じる
といったことが重要であり、住民主導のまちづくりのコーディネーターでありアドバイザー役になる、それが分権時代の地方自治体の役割なのではないでしょうか。