自治体が電力売買事業に参入すべきか③

一部事務組合が売電、運営人材受託の「新会社」設立

 「新会社」は、清掃工場からでた電力を買い卸し小売する事業を行います。

 2000年3月に電力会社以外から電気を買える「電力小売り」の自由化が始まり、対象が当初の大規模な工場、デパートなどから中規模、小規模と順次拡大し、いよいよ来年4月からは一般家庭もその対象となります。

 電力の自由化により多くの企業が電力事業に参入しています。自由化に伴い、余った電力をやり取りする「電力取引所」がスタートし電力の効率的な活用整備が進むと共に余った電気が有効活用され電力料金の引き下げ効果も期待されています。

 一方で、新エネルギー法が改正され、電気事業者に対して毎年その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギーなどから発電される電気の利用が義務付けられています。
 この新エネルギーには、清掃工場での廃棄物の焼却に伴う発電が含まれます。発電量のうち、プラスチックが混入していればその割合は新エネルギーからのぞかれますが。これにより、清掃工場からでる電力は「電気の価値」以外に「新エネルギー価値(権利)」が発生します。新エネルギーを発電する者は「電気」と「権利」を別の電気事業者に売ることも可能になります。

 「新会社」が行う業務内容には、新エネルギーの売買を想定させる『資産を活用する事業』という一文が盛り込まれていながら、事業モデルにそのことが一切盛り込まれていないことも疑問です。
 
 現在、ごみの焼却によりできる電力は競争入札により最も高値をつけた事業者に売却されています。
 「新会社」の事業モデルでは、「新会社」が清掃工場から現在の価格より高く買い、23区の小中学校に現在の調達価格より安く売ることが経済効果として示されています。
 この経済効果は、供給先を23区小中学校とし、清掃工場の電力を「新会社」に複数年一括売却すること、そして東京ガスの子会社である各発電会社から清掃工場の発電量ではまかなえない不足時の電力の購入を前提として算出している価格です。
 しかし現在の行っている競争入札でも、複数年契約をすれば売却価格を上げることは可能です。また、この事業モデルでは小中学校の電力を新会社が供給し不足分を東京ガスの子会社である各発電所からまかなうことが示されています。

 資料から逆算した小中学校の必要電力は2億8000万kW。それに対し、清掃工場での発電量は5000万kW弱ですから、結果として見えてくるのは東京ガス子会社の発電所が23区の小中学校に電力を供給する販売ルートを確保できるということです。
 電力の自由化とは、消費者が供給者を自由に選択できることであり、基礎的自治体である23区各区が、一方的に新会社と契約指定されるのは自治権の侵害ではないでしょうか。

 そうした提案を提案者のひとりである大田区長が容認していたことは問題です。