適正な入札のための透明性・競争性の確保

「入札契約適正化法」大田区の場合

 全国の自治体で官製談合や入札に係る汚職事件が相次いで明らかになり、首長が逮捕される自治体もあるなど、適正な入札のあり方が問われています。
 
 国土交通省と総務省が実施した調査では、全国市区町村の36%が、入札契約適正化法で義務付けられている「契約業者名」「入札金額」などの公表や、「談合が疑われる事実の公正取引委員会への通報」などを行っていないことが判明しています。

 大田区もこの入札契約適正化法の公表義務を守っていないことがわかりました。

 入札や契約に関る政治家や行政との癒着・汚職は後を絶ちません。昨年は、全国の自治体で官製談合や入札に係る汚職事件が明らかになり、福島県・宮崎県など逮捕された知事まででています。

 しかし、2001年には、入札契約適正化法が施行され、国の機関と特殊法人、全自治体に対し公共工事の発注業務の公正を確保するため、「契約業者名」「入札金額」などの公表や、「談合が疑われる事実の公正取引委員会への通報」などを義務づけることが定められています。
 違反への罰則はありませんが、国交省と総務省は、毎年、各自治体を調査し、違反がある場合には都道府県を通じて同法の周知徹底を呼びかけています。

 この法律のとおり「契約業者名」や「入札金額」「談合が疑われる事実の公正取引委員会への通報」などが行われていれば、昨年来の事件も未然に防げたかもしれません。

 しかし、2006年4月に国土交通省と総務省が実施した調査によれば、全国市区町村の36%が、この入札契約適正化法で定められた義務に違反していて、その中には大田区も入っています。

 違反が最も多かったのは「随意契約の相手先の選定理由の公表」で、23%にあたる427市区町村で取り組まれておらず、自治体の裁量で入札参加業者を指名する「指名競争入札」については、官製談合の温床になりやすいと指摘されているにも関わらず、9%の市区町村が指名基準を未公表にしています。

 例えば、大田区第四回の定例会では、「ふるさとの浜辺公園整備工事」において砂浜および釣り磯造成等の請負工事が随意契約によって本工事を行った共同企業体に決定しています。
 随意契約にした当初の説明は、現地の状況を周知しているため調査をしなくても良いので価格的に数百万円有利であるというものでしたが、「有利なのであれば競争入札をしてもその事業体が落札するのであるから随意契約にした理由にならないのではないか」という質問に対して、「入札をすると3月オープンに間に合わない」と答弁を変えるなど、随意契約の大田区としての基準のあいまいな事がわかります。

 1月15日の総務財政委員会において、今後、入札契約適正化法に定められている公表義務を全て守るという答弁を得ていますが、単に公表するに留まらない積極的な対策も必要です。

 昨年の相次ぐ不正事件を受け、全国知事会は、検討チームを設置し、談合の再発防止のため「指名競争入札を廃止し、一般競争入札の適用範囲を拡大する」ことを明らかにし「不正を根絶する」という宣言文を公表しています。
 
 指名競争入札とは、入札に入る事の出来る事業者をあらかじめ決め、それ以外の事業者は入札には参加の出来ない仕組みです。
 地元企業、産業の育成がその目的になっていますが、こうした指名競争入札の仕組みが、不正を引き起こす誘因にもなっているという背景もあります。
 地元企業・産業の育成と地域振興とは一体なんなのか考える時にきているともいえます。
 適正な契約、そして、優良確実な工事・契約の履行を確保するための仕組みが早急に求められます。

 脱ダム宣言を行った田中康夫元県知事のいた長野県では指名競争入札を既に全廃し一般競争入札に切り替えました。また、3期ですっぱりと知事職を離れ、様々な分野での活躍目覚しい団塊の世代のけん引役とも言える浅野史郎元知事のいた宮城県も、予定価格一千万円以上の工事には、一般競争入札を導入しています。

 地元企業の育成等を名目に指名競争入札を続けている自治体が今尚存在する一方で、、一般競争入札を拡大した自治体は「公正な競争を促す制度が定着すれば極端な価格競争はなくなる」とコメントしています。

 一般競争入札の効果を計る尺度の1つとして、予定価格に対する落札額の割合を示す「落札率」がありますが、率が低いほど競争性は高く、95%を超えると「談合の疑いが濃厚」とされています。
 全国オンブズマン連絡会議の調査によると、長野県や宮城県の工事落札率は予定価格の75%で、全国平均の91%よりもかなり低いそうです。