大田区政のコンプライアンス

決算特別委員会よりその④

コンプライアンスは「法令順守」とか「ルールに従って公正・公平に業務を遂行すること」などと説明されています。最近では、それを一歩進め、利害関係者との信頼関係を構築する、相手の期待に沿うといった意味合いまで含めて説明する専門家もいます。
 
 カビや農薬などに汚染された事故米を食用として転用していた問題や、鶏肉・ウナギ・牛肉など、次々に発覚する食品の産地偽装・賞味期限の改ざん・偽装派遣・介護保険不正請求など、企業の不祥事は後を絶ちません。
 法令を守ること、そして、それを一歩進めた消費者からの信頼の構築が、企業の存続に大きな影響を与える時代になっています。
 
 2004年に、公益通報者保護法が成立したことがきっかけとなり、関係者からの通報により企業内の不祥事が明らかになる事例が増えています。

 「新会社法」や「J-SOX法=金融商品取引法」など、コンプライアンスを確立させるための法整備も進んできています。

 こうした一連の法律の流れの根底には、手続きを適正化し、かつ透明化するという流れがあります。

 企業のコンプライアンスが重要視され、未然防止のための取り組みが進む一方で、国や自治体など「公」の分野におけるコンプライアンスの取り組みはどうなっているのでしょうか。

 自治体運営においても、法令や条例・規則に従った行為が求められることは言うまでも無く、「コンプライアンス」という視点で自治体運営を検証する必要があります。

 新潟大学 南眞二教授は、自治体学第21号「自治体のコンプライアンス」と題された論文の中で、

 国・自治体でも、食料費・使用料・旅費などで違法或いは不適切な会計処理が行われ、裏金作りが行われたが、本来、これらの解明に一定の役割を果たすべき議会はほとんど機能せず、民間オンブズマン組織による追求・解明に頼らざるを得なかった。公共事業について、談合がかなり頻繁に行われ官製談合防止法に該当する事件が発生している・・・
と「公」の分野においても、法令が遵守されていない自治体が存在することを指摘しています。

 足立区では、平成17年、区民保養所の業務委託契約の業者選定にかかわり、元区議会議員と事業者があっせん収賄及び贈賄などの容疑で逮捕される事件をきっかけにこの事件を組織全体の問題と捉えて、制度、職員の意識・行動・監視体制・入札・契約・指定管理者の選定などに関し検討し、「コンプライアンス推進委員会」を立ち上げ、再発防止として「コンプライアンス推進計画」を策定しています。
 
 足立区は、この計画の中で、事件発生に至る問題点として、次の4つをあげています。
1.事業者の選定基準や手続きの決定に裁量の余地が大きく透明性に欠けた
2.担当職員が、外部からの強力な圧力により、守秘すべき情報を提供するなど、法 令遵守意識に欠ける行為を行った。また、このような行為に気づき是正するとい った組織としての法令遵守機能が働かなかった。
3.区民、議員などからの要望、提案、意見(などに対し)は、区民サービスを向上 させるために有益なものが多い。しかし、例外的には、不正行為につながる恐れ もありうる。職員が負担を抱え込むことなく、職場や上司と情報を共有し、組織 的に対応する仕組みがなかった。
4.契約事務の手続きや基準に関する規定やその運用状況の客観的な監視の仕組みが 十分でなかった。

 こうした問題意識を持つことなく、区政を執行してきた足立区は、最悪の結果を招いてしいましたが、大田区はどうでしょうか。

 大田体育館隣接の土地と建物購入する議案、そして、大田西行政センター土地を売却する議案を取り上げ、公有財産の売却や税金を使い不動産を購入する際に、自治体に求められるコンプライアンスについて、決算特別委員会において検証しました。

 大田区は、区民が主役の区政実現とのために「地域力」を全面にかかげた基本構想を策定しました。
 基本構想の区政体制にも示されている通り、これからの大田区は、更に、区政の透明性を高め、区民に対する説明責任を徹底していきます。その仕組みを具体的に作ることこそが、コンプライアンスを確立することに他なりません。

 安心だから、安全だから、大丈夫だからという言葉のもとで、偽装や不祥事が発覚し多くの信頼が裏切られてきました。
 
 決算特別委員会でとりあげた大田区政でおきているほんの数例の問題に対する区の説明に、どれだけの区民が納得したでしょうか。

 地方分権とは、首長・議会に権限が拡大するということです。
 分権時代には、リスクを最小限にとどめる様々な工夫が必要になるのです。

足立区では、
・職員の倫理規定を明確にする。
・議員や業者など外部からの要望を記録し公開する
・公益通報制度により自浄作用を働かせると共に通報者の保護をはかる。
・「公益監査員」と「コンプライアンス推進室」などの第三者機関を設置する
・条件付一般競争入札の導入による入札・契約制度を改革する
・「結果情報のみの公開」から「過程情報も含めた公表」など区政透明化を図る
などに取り組んでいます。

 こうして、土地の売買を一例にコンプライアンスの視点で検証しても、様々な、不透明、不明瞭な区政運営の実態がみえてきます。
 法令・条例・規則に従い区政を執行すること。そして、執行にあたり適正であることを示すための基準を設けること。また、それが区民に見えるよう記録し、原則全て公開の視点で透明化に努めることが大田区政に求められます。

 
なかのひと