大田区財政悪化の社会的要因ではない、大田区独自の理由(その1)

大田区の財政が悪化しています。確かに、全国的に、自治体財政は厳しい状況にあり、財政悪化は、大田区に限ったことではありません。

一方で、大田区の財政悪化は、23区平均に比べ、著しいものがあります。
大田区だけが大きく財政を悪化させた要因はなんでしょうか。

大田区では、財政悪化の要因を

①景気悪化に伴う税収の落ち込み
②景気悪化に伴う生活保護費の増大
③高齢化に伴う介護給付費の増加
④待機児解消のための児童福祉費の増大

と説明していますが、これだけで、説明はつくのでしょうか。

決算委員会において、大田区財政の悪化要因について、区固有の課題を明らかにしました。

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*文中に出てくる資料は、スキャナーの調子が悪いため、後日、アップして見られるようにします。

区の発行している「シティーマネジメントレポート」「財政のターニングポイント」他各資料は、大田区役所2階の資料コーナーで入手できます。

入手できないものは、奈須まで、ご連絡お願いします。

これまで、「財政のターニングポイント」と「同、NEXT STEP」「シティーマネジメントレポート」など経営管理部の報告や大田区監査委員の「大田区各会計歳入歳出決算及び各基金運用状況審査意見書」。そして、議会における財政についての答弁を聞いておりますと、大田区の財政悪化の要因は、大きく分け、次の4つに集約されるように思います。

■大田区が説明する財政悪化要因は外的要因のみ■

大田区が説明してきた財政悪化の要因は、

①リーマンショック以降の経済の落ち込みによる税収の悪化。

②その経済状況悪化に伴う生活保護費の増加。

③高齢化に伴う介護給付費の増加。

④待機児解消のための児童福祉費の増大。

ですが、今回、あらためて、決算書とそれに係る数字を点検したところ、必ずしもそれらだけでは説明しきれない部分が見えてきました。

確かに、財政悪化の要因は、景気の悪化と少子化と高齢化によるものが一定の部分を占めています。そして、それだけに限定することは、非常に分かりやすく、しかも、その責任を外的要因に押し付けているわけですから非常に楽です。しかし、大田区自身が本当の財政悪化の要因に気付かなければ、財政の健全化ははかれません。

■今の大田区財政に最も重要なポイントとは■

そこで、今日は、大田区財政の悪化について、外的要因以外の大田区固有の事情について、共通の認識を持つ場にしたいと思います。

その前に今の大田区財政の最も重要なポイントは何だと思われますか?
私は、持続可能性だと思っています。
次世代に借金を残さないと言う狭い意味だけではなく、公共サービスの低下を招かないという意味から持続可能なサービス提供という意味も含めた持続可能性が最も重要だと思っています。

■23区平均を下回り、大きく悪化した経常収支比率■

まず、最初に、私は、経常収支比率に注目してみました。

財政が悪化していると一口に言いますが、つまりは、この経常収支比率が高くなっているということを意味するわけです。

お配りした資料の1ページにも書き、今さらでもありませんが「経常収支比率」とは、使いみちが決まってない財源、(たとえば、「特別区税」「財政調整交付金(いわゆる財調ですね)」「地方消費税交付金」「使用料」「地方譲与税」「地方特例交付金」などがこれにあたりますが)これらに占める毎年かかる経費、(たとえば、「人件費」「生活保護や保育園などの扶助費」「委託などの物件費」「公債費」「補助費」「維持補修費」)などがどれくらいの割合を占めるかを表している数字です。

「シティ・マネジメントレポート」では、この「経常収支比率」を、家計に例えると、家賃や光熱水費など、毎月の必要経費が、月給など、ほぼ決まった収入の中にどの程度占めているかをみることに相当します。と説明し、70%〜80%が適正水準と言われているとしています。

平成21年度決算では81.7%。23区平均82.1%を下回っていたこの経常収支比率が、今年度平成22年は88.4%。23区平均の85.7%を大きく超える結果となりました。

私は、平成15年から毎年23区各区の経常収支比率の順位をつけ、経年変化をみてみました。その結果、大田区は、だいたい真ん中くらいを推移してきたことがわかりました。
ところが、昨年から今年にかけて大きくこの経常収支比率が悪化していたのです。昨年は良い方から9番目だったのが、今年は、大きく下げ、中野区と同順位で下から4番目になってしまっています。

お手元の資料2番をご覧いただくと昨年度まで、大田区の経常収支比率が、23区平均をわずかに下回るかたちで推移してきたことがおわかりいただけると思います。

なぜ、大田区だけが、財政状況を大きく悪化させてしまったのか、今年だけの理由なのか、今後も続いていくのかを知るためにも、その要因を解明する必要があると考えました。