【国家戦略特区で向けられたドリルの先 働く高齢者】 国家戦略特区:養父(やぶ)市の規制緩和

~人口26,000人の養父市の提案が、最低賃金を下回る高齢者労働市場の全国展開を可能に ~

【国家戦略特区に指定された兵庫県養父市の提案する規制緩和とは】

国家戦略特区に指定された地域の一つ、兵庫県養父市。

養父(やぶ)市の提案は大きく2つ。

1.高齢者を活用する際の雇用の規制緩和=週当たり労働時間数の制限を緩和し連続雇用期間の延長を可能にする。…
2.農地の賃借や所有権の移転の権限を農地委員会から市に移転。
これをEPL株式会社=やぶパートナーズ株式会社で行うことを提案。

養父市の提案内容について、プレゼンや議事録からの私見です。

【養父市が提案する、シルバー人材センターでの高齢者活用】

ポイントは公益法人のシルバー人材センターのしくみ http://www.zsjc.or.jp/about/about_02.html … にあると見ている。

シルバー人材センターは、全国ほとんどの自治体にある組織。
高齢者の人材活用を行っているが、会員の請負等契約に基づき仕事をするため、最低賃金法等等は、適用されない。

養父市は、高齢化していて、高齢者を活用したいと考えている。シルバー人材センターのしくみで市の仕事をすると、国からの補助が出るため、市で時給1200~1300円で雇い、高齢者は時給800~900円で働くといったことが可能になる。

【養父市が規制緩和したいシルバーセンターでの高齢者活用】

養父市は、シルバーセンターの仕組みで、高齢者雇用を進めたいと考えているが、法の趣旨等で、臨時的かつ短期的な就業、や軽易な業務という条件があり、継続的でより長時間の活用を可能にしたい。しかし、規制を守らなければ補助金が受けられないから、臨時的、短期的といった条件を緩和してほしいと言っている。

加えて言えば、養父市はこの高齢者の活用を現在のままの公益社団法人で行いたいと考えている。なぜなら、株式会社にしてしまうと、税制の優遇を受けられなくなるかもしれないし、助成金が来るかどうかも分からない。しかも、養父市がどうかは確認していないが、多くの自治体は、職員の天下り先になっているからそれも理由になっているかもしれない。

*更に、規制緩和派の考えを想像すると‥

「高齢者に時給800~900円は多すぎ。最低賃金で良い。しかも、シルバー人材センターは、労働法の対象でないから最低賃金を支払う必要が無いのではないか。公益社団法人だからと税法の特典と国の助成がつくのか」

シルバー人材センターは、官の天下り先でけしからんし、高齢者の活用が十分おこなえていない。だから、ノウハウのある、人材派遣会社系が、民間でやった方がもっとうまく機能するとか言って、最低賃金法に抵触しない高齢者の安価な労働提供が、全国的に進むのではないか。

さらに、養父市の提案や、それを受けた国家戦略特区ワーキンググループの対応から、
最低賃金に抵触せず、最低賃金以下で高齢者の労働力を確保できる仕組みが出来るように見えます。この仕組みで高齢者を労働力として使えば、使う側はm】社会保険も負担しなくてすむかも知れない。

公益法人が行っている現在のシルバー人材センターの規制をいくつか変えることで、最終的に株式会社がこの仕組みを担うようになるかも知れない。

【国家戦略特区が全国展開を可能に】

人口約26,000人。中山間部の超高齢化、過疎化している地域の高齢者活用をシルバー人材センターのしくみで解決しようという提案により、労働法がされないため最低賃金を下回る高齢者の労働市場が、全国に出来上がる可能性が出てきたことになる。

なぜなら、国家戦略特区は、規制緩和をある区域で「試験的」に行い、経済的視点で評価し成功すると全国展開することになっているからだ。

経済の仕組みから言えば、人件費は安ければ安いほど、株主配当や内部留保が増えることになるから「評価」される。

【向けられたドリルの先は働く高齢者】

平成24年度の数字で、シルバー人材センターに登録する会員数は、全国に約74万人。契約金額2982億円。(シルバー人材センターHPより)

高齢化は進んでいるが、平成21年前後から減り始めていて、現状に置いて、シルバー人材センターは必ずしも機能していない。

しかも、会員の「労働?」に対する対価が最低賃金を下回ることや、シルバー人材センターを介して仕事が提供されるしくみに多額の税金が投入されることについて、問題視する意見もある。

労働人口減少に伴う高齢者の活用は、大きな課題だが、最低賃金適用外での高齢者労働市場を作ることにはならないだろうか。

養父市の提案は、課題のあるしくみを補助金も使いながら存続させ、最低賃金の隠れ蓑となることにはならないだろうか。

向けられたドリルの先は、働く高齢者ということだ。

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参考

養父市の雇用による新産業創出事業
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/7-yabu.pdf

養父市のヒアリング議事録http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/07_250906_yabu.pdf