アメリカにおける企業の社会責任(CSR)

ASUインターナショナル代表 斉藤槙さん講演

 日本福祉大学で行なわれた斉藤槙さんの「あめりかにおける企業の社会責任」と題された講演を聞きに名古屋まで行ってきました。
 
【斉藤槙さんのプロフィール】
米国ロスアンゼルス在住。聖心女子大卒業後、電通入社。コーポレート・コミュニケーションなどを5年間にわたり担当した後、米国・コロンビア大学国際関係大学院修士課程終了。ニューヨークを拠点に企業の社会的責任の格付けを行うシンクタンクCEPなどを経て現職。著書に「企業評価の新しいものさし−社会責任からみた格付け基準」(生産性出版)など。

【講演内容】
 企業の社会責任を指標とした投資(SRI)が、全体の約1割になったといわれているアメリカの現状は、非常に興味深いものがありました。

 市場のグローバル化、規制緩和が進み、競争が益々激化する中で、企業にとって「社会責任」や「企業倫理」に対する取り組みは、避けて通れない課題になりつつある。これらは、企業の持つブランドイメージや株価といった企業価値そのものに直結するため、経営戦力上の問題として扱われる需要なテーマとして扱われるようになっている−のが、現在のアメリカの状況。
 企業と社会の関係は、これまで、メセナなど、企業からある特定の地域住民やNPOに対して還元されていた流れから、社会責任を担うことで、様々なステークホルダー(消費者・投資家・従業員・サプライヤー・地域社会・海外工場の労働者など)に働きかけ、結果として企業投資や購買へと循環するかたちへと変化している。
 現在では、人々の関心は、商品やサービスの品質、環境への配慮といったことは当然なすべきことであり、人権にまで広がってきている。女性とって働きやすい職場、仕事と家庭の両立、社員の個の尊重、契約社員やパートなどの非定期雇用者の保護、障害者雇用、外国人の雇用・・・。
 
 CSRの取り組みが企業でなされている一方で、NPOと企業の融合(=価値主導ビジネス)といった動きもある。
 ベン&ジェリーアイスクリームは、オーガニック素材でつくられたアイスクリームを製造・販売する企業だが、NPOのイベントには無料でアイスクリームを提供する他、地球温暖化フレーバーと呼ばれるアイスクリームの売り上げの一部は温暖化防止のために寄付されている。
 
 こうした、CSR的なライフスタイル、LOHASU(Lifestyles of Health and Sustainability)が支持されつつある。
 これは、地球環境保護と人間の健康を」第一に考え、人類が共存共栄できる持続可能な社会をつくるライフスタイルのこと。現在、米国の人口の1/3がLOHASU消費者であるといわれている。

 一般に日本の企業の従業員に対する福利は高い。CSRも場所・ライフスタイルなどにより異なる。精度、品質の良さなどの日本の利点や、環境先進国である日本から海外への発信が必要である。
 社会は、政府だけではなく、企業、NPOと共に作っていくべき。
そのためには、様々な人がかかわる場が必要である。そして、そのシナリオ作りの際のヒントは、国の豊かさは、GNPではかるのではなくGNH(Gross National Hapiness)が重要であるということ。

【感想】
 CSRの導入は、これまでのアメリカの志向してきた路線が覆るのではないかと思わせる内容でした。CSRを利用し、消費者が企業を動かすことも出来ますが、逆に、企業に利用され、踊らされる結果にもなります。私たち一人一人の、見極める力が重要です。 
 
 *6月6日の勉強会(お知らせ参照)に、斉藤槙さんもいらしてくださいます。