「外国からの子どもの教育支援を考えるフォーラム2008」

 大田区で外国人の子どもへの日本語教育など教育支援を行っている区民を中心としたメンバーが立ち上げた「外国からの子どもの教育支援を考える会」が主催した「外国からの子どもの教育支援を考えるフォーラム2008」に参加しました。

 第一部の、文部科学省初等中等局国際教育課課長補佐の山下恭徳さんの基調講演では、  「初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会」 から、今年6月に出されたばかりの報告書外国人児童生徒教育の充実方策についての説明していただきました。
 また、第二部では、
◆パネラーに、
中野区で日本語指導を行っている中野区国際交流協会の中山真理子さん
同じく墨田区「FSC/外国人生徒学習の会」の藤田京子さん
タイ・バンコク生まれで中学2年の時に大田区に来た野村まゆさん
◆ファシリーテーターに「外国からのこどの教育支援を考える会」代表の河合良治さん
「人権としての日本語学習支援や地域サポートの仕組みづくりを考える」と題したパネルディスカッションを行いました。

 その背景には、文部科学省が19年5月1日付けで把握している日本語指導が必要な外国人児童・生徒が25,411人いること(公立の小学校・中学校・高校・特別支援学校など)。そして、その人数は、調査開始以来最も多く、対前年比で13.4%の増加であるといったことが挙げられます。
 また、日本国籍を有する日本語指導が必要な児童生徒も4,383人いるなど、公立学校に在籍する子どもたちの状況が多様化していることも指摘されています。

 そして、日本語指導が必要な外国人児童生徒が在籍する公立学校が5,877校と増加していて、日本語指導が必要な外国人生徒は、一部の地域の特別な問題でなくなりつつあることがわかります。

 そうした状況のなか、日本語指導が必要な外国人児童生徒のうち日本語指導を受けているのは21,206人と調査以来最も多い数となっている一方、その割合は前回調査より2.1%減少しています。
 日本語指導が必要でありながら、日本語指導を受けることができずにいる児童生徒が増えています。
 
 これらの外国人児童・生徒の母国は、最も多いのはポルトガル語(10,206人18.2%増加)、次いで中国語(5,051人13%増加)、スペイン語(3,484人)フィリピノ語(2,896人)、韓国・朝鮮語、ベトナム語、英語です。

 大田区の外国人児童生徒の数は、文部科学省調査と同じ平成19年5月1日の時点で、小学校286人(児童数の割合1.0%)、中学校142人(1.4%)。
 そのうち、日本語指導が必要な児童・生徒数は、小学校75人、中学校35人です。

 国籍は、小学校では、フィリピン29%、中国28%、韓国18%、その他ベトナム、ブラジル、アメリカなど。中学校では、中国32%、韓国24%、フィリピン22%、その他、ベトナム、ブラジル、アメリカ等となっています。

 日本全体では、「出入国管理及び難民認定法」の改正の影響などにより増えたと見られるブラジル日系人などが、大田区では少ない一方で、フィリピン、中国、韓国国籍のこどもたちが多いという特徴があります。
 2010年に予定されている羽田空港の国際化により、アジアの子どもたちが更に増えることも予想されます。

 こうして増えている外国人のこどもの多くについて、外国人指導の現場に携わる方たちは、日本に長期滞在、あるいは、永住する子どもたちであると話されています。

 国では、平成18年12月25日に外国人労働者問題関係省庁連絡会議において「「生活者としての外国人」に関する総合的対応策」が取りまとめられ、「日本で働き、生活する外国人の生活環境などについて日本として一定の責任を負うべきものであり、社会の一員として日本人として同様の公共サービスを享受し生活できるような環境を整備しなければならない」という視点から「外国人の子どもの教育」が位置づけられています。

 私自身、短期間(4年7ヶ月)で帰国することが前提ではありましたが、外国に滞在し、外国語の中で子どもを育ているという経験をしました。
 こどもをインターナショナルスクールに通わせたため、現地では、家庭で日本語の環境の中、英語を習得し英語で学習することの難しさと、帰国した後、家庭での日常会話だけだった日本語で、日本の学習に追いつくことの難しさ、そして、身につけた英語を維持することの難しさなどを体験しました。

 外国にいれば、その国の言葉を習得できることには、勿論なりません。

 外国で育った子どもは、母語に加え、新たに日本語を取得しなければなりません。
 家庭で日本語を使う機会がなければ、日本で生まれたり生活していたりしてiいても、日本語の習得は困難でしょう。

 しかし、これらの日本語指導にかかる経費は、都から日本語学級を設置への補助という制度もありますが、ほとんどの場合、市区町村で負担しているのが現状で、日本語指導の方法や内容・時間数なども自治体により様々です。

 大田区でも、日本語指導が必要な児童生徒の増加に対応し、また、指導方法や内容を統一するために20年度から、一人当たりの指導時間数をこれまでの40時間から60時間にするなど、日本語指導に力をいれるようになってきました。

 小学校4年生以下は指導員を派遣し、5年生以上中学生は、蒲田小学校に設置した日本語指導教室において、集中的な初期指導を一日2時間、週二回、おおむね4ヶ月を目安に行っています。

 今年度、時間数を増やした大田区ですが、他区と比較すると必ずしも多いとはいえない状況がみえてきます。

 例えば、墨田区では、すみだ国際学習センター(国際学習支援教室)を設置し、
A.来日直後の生徒に午前中週5日(2〜3ヶ月120h以上)日本語指導。
B.A終了者または、同レベルに達した生徒は週4日以内(2〜3ヶ月100h以上)
C.B修了者または他の理由で指導を希望し、教育委員会が認めた場合の指導
その他、相談、連携し、通級生徒はセンターで自由に学習できるようになっています。

 外国人への教育支援は、「外国人児童生徒教育の充実方策」(報告)でも指摘されている通り、日本語指導だけではなく、
1.就学支援
2.適応指導・日本語指導
3.放課後などの居場所作りなど地域での支援
など、多岐にわたります。

 大田区では、現在、外国人の子どもへの教育支援は、日本語指導に留まっていますが、就学の実態を把握すると共に、家庭も含めた生活全般への支援が求められます。

 フォーラムを主催し、現在も外国人の家庭やこどもへの活動を行っている多くの市民活動グループなどとの連携も含めた支援体制を早急に作っていかなければなりません。


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