大田区の現状から考える待機児対策その②

〜0歳1歳対策とワークライフバランス・費用負担の公平性の視点から〜

保育園別選考指数表は、入園の厳しさとともにもう一つの課題を私たちに教えてくれます。

それは、認可保育園の入園の可否は、働き方や所得といった客観的な指標によるものではなく、地域の保育ニーズに大きく左右されているということです。
ところが、認可保育園と認証保育所など認可外保育園の費用負担には大きな差があります。
この不公平について、大田区は利用者に対して納得のいく説明ができるでしょうか。
こうしたいわば行政の制度の不備について行政が責任をもって不公平感をなくすという視点から、たとえば品川区では、認可と認証保育所の費用負担の差額を助成する制度があります。
現在、大田区においても園児一人につき月額1万円、2人目以降は月額2万円を補助していますが、十分とはいえません。

そこで質問いたします。
④ 認可保育園に入れず、認証保育所に行く人に対して、認可との差額を補助して、公平な保育環境をつくることはできないでしょうか。

品川区では、認証保育所定員515人に対して、差額補助することで約1億5600万円かかっています。大田区の認証の定員1262人に補助を行うとすれば、おおよその計算で3億8600万円かかることになります。大田区ではすでに1億8700万円の補助をしていますので、差額1億9900万円で認証保育所と認可保育園の負担の公平性をはかることができます。
区立保育園の0歳児のコストは一人月1万円ですが、1歳児は約27万円のために、今回提案しているように、0歳と1歳の定員配分が変われば、その差額36万円のコスト削減につながります。

差額1億9900万円は例えば0歳児定員が553人減り、その分1歳児の定員が553人増えることで生み出すことができるのです。
必ずしも0歳児の定員わくが553人減るとは限りませんが、点数確保のために保育所に通わせることで生み出していた必要のない需要削減による税金投入の削減も期待できるので、認証保育所との差額1億9900万円の負担は、必ずしも全額増額にはなりません。
ぜひ、ご検討ください。

待機児対策について2010年の第一回定例会で生活者ネットワークがとありあげた視点に、待機児対策は少子化とセットで考えなければならないという問題がありました。

大田区では、これまで子どもの数は微増傾向にありましたが、経営管理部が基本構想策定の際に作った今後の大田区の人口予測で平成22年からの出生数の減少が指摘されていたとおり、平成22年度の出生数は前年の5617人から58人減っています。いよいよ、都心部にも少子化の実影響が出始めているといえるかもしれません。

こうした状況の中、大田区では待機児対策のために、保育園の定員を増やし続け、平成18年から23年にかけて1,337人も増やしてきました。
一方で、この間の幼稚園に通う子どもの数は、これまでは微増傾向だったものが、平成22年度から23年度にかけては、9,381名から9,212名へと169名減っています。来年度の入園申し込みが終わりましたが、一部の幼稚園では定員割れがでているという話も聞こえてきます。

保育園の需要が増えるとともに少子化の影響が少しずつ出てきているといえるかもしれません。

待機児対策を単純に保育園の定員増だけで解決しようとすると、相対的に幼稚園の利用者が減るのは明らかです。

幼児教育における歴史と実績のある幼稚園を社会的資源ととらえ活用していくこともまた、今後の大田区の子育て支援策として重要です。

そこで、今回、区立認可保育園に子どもを預けている人の就労状況を調査しました。
就労時間8時間以上の人が全体の73%、7〜8時間の人が17%、6〜7時間が5%、5〜6時間が2%、と、圧倒的に8時間以上の就労時間の保護者が多いことがわかります。
しかし、これは、地域によりばらつきがあり、保育園によっては、片方の親が7時間未満の就労が60%という保育園もあります。

7時間未満の就労であれば、すでにほとんどの幼稚園が、5時や6時までの預かり保育を実施していますので、夏休みなど、長期休み保育の実施で、幼稚園でも就労のニーズにこたえられる可能性があります。
 
そこで質問します。

幼稚園に通わせながら就労を可能にするための支援策をとれないでしょうか。

たとえば、区立保育園経験者が預かり保育に幼稚園に応援・指導に行くことにより長期の休みの際の預かり保育を可能にする。認可保育園は分園への給食提供が可能ですが、幼稚園への給食提供を可能にする。こうした支援策により、就労を希望している方が幼稚園での幼児教育を選択することもできるのではないでしょうか。

子ども子育て新システムには課題も少なくありませんが、子どもを行政のしくみで幼稚園と保育園にわける現状が利用者のニーズに必ずしもあっていないという問題があるのも事実です。子どもの育ちをより豊かなものにするために保育園・幼稚園が協力することは今後欠かせない視点です。

親子の絆の結ばれるもっとも大事な乳児期です。大田区が心ある支援をすることにより、安心して、子育てができる環境を作り出していくことを願い、質問を終わります。