箱モノ行政の弊害としてみる区民住宅条例の改正

特に今回の議会において顕著になったのが社会変化に伴い、機能しなくなっている事業について、事業そのものを考え直さなければならないにもかかわらず、そこを放置し、不公平や税金投入の不適正が起きているという事例です。
【区民住宅とは】
「中堅ファミリー世帯のための優良な賃貸住宅を設置し、これを適正に管理することにより、区民生活の安定と良好な地域社会の形成に資することを目的とする」

住宅です。
【区民住宅空き住戸をどう評価するか】
設置当初は、家賃の減免があった区民住宅ですが、その後、段階的に家賃が引き上げられるしくみになっているため、周辺の賃貸住宅との家賃差がなくなり、空き住戸が目立つようになっています。
家賃を引き下げればよいと思われるかもしれませんが、区が一括借り上げを行う区民住宅は、オーナーに家賃保証している家賃を引き下げにくいしくみです。
しかも、区民住宅の目的そのものが、中堅ファミリー世帯の優良な賃貸住宅と、住宅困窮者とはその目的が異なります。現状において、数多くの住宅困窮者がいて、しかも、公営住宅に入居できていないわけですから、そこを放置し、中堅ファミリー層に税金投入することが適当かという側面もあります。

【グループ保育ママに続くサロン事業活用     ~事業の良しあしで無い公有財産活用の視点から~】
一方で、公有財産の有効活用の視点から言えば、空いたままにしておくなら、何か有効活用できないかという議論が起きるのも理解できます。
そうした背景から出されたのが、この区民住宅条例の改正です。
しかし、公有財産活用は、「空いたから、何にでも使えるか」と言えばそうではありません。
過去に、グループ保育ママに活用すると言うことで、条例改正があり、そこでも、私は問題点を指摘しています。 http://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/726f223bb503b95f0f9612d07be1325d
そもそも、一定の、公共性に照らし合わせて議決(合意)した目的のために使用しているものが活用されないのであれば、
まず、検討すべきは、当初の公共目的が適当かということなのです。
そうした視点で見れば、現在の区営住宅=公営住宅制度そのものが劣化していると言えるでしょう。 この部分についても、昨年の一般質問で取り上げています。 簡単に言えば、
・公営住宅では住宅困窮者の一部しか救えない。 ・しかもその救える人は必ずしも、経済的、社会的に最も困窮している人から救済しているのではなく、抽選と曖昧な入所基準。 ・公営住宅が老朽化し建設・維持管理費はかさむが、救える人数は、世帯当たり人数が減っているため、減り、かける費用に対し救済できる人数が減ってきていて今後ますます減ることが予測される。 http://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/40a5513750368a0b7b079b7bf06788b8
根本には、箱もの建設による課題解決という古典的な手法があります。 (区民住宅は2種類あり、厳密な箱モノ(公が建設する)と家賃保証に分かれますが、民間投資の回収を税金で保障するしくみですから、広く箱モノと表現させていただきます。)
今回の区民住宅条例改正も、住宅問題は解決せず、さらに深刻な状況になっていますが、そこを放置しています。 救済すべき所得階層を誤り、家賃設定を誤り、結果空き家が出たので、サロン事業では、区がおこなうべき住宅困窮者への手はいつまでたっても差し伸べられません。

東糀谷アパート条例改正など、特にこのところ大田区独自に行う施策は、一定以上の所得者層に限られた施策で、ジニ係数をさらに引き上げる存在が地方自治体になっていることを指摘しなければなりません。